62・山へ行こう
シャランの依頼でしばらくは王都で様子を見る事になってしまった。魔族がまた来た時に対応してほしいという事だ。
正規の依頼として報酬も出すと、ギルドマスターのサジリアが保証してくれたので受けてしまった。
決して俺がここに留まりたいわけではない。
魔力を感知できる四天王ヴィーダは、斥候の死が分かるだろう。
ならばどう出てくるか。もう一度違う斥候を送るか? さらに強い魔族を?
もしくは四天王自らが出てくるか。
そうなればこちらとしても都合がいいと言えるのかもしれないが。本当はもっと情報が欲しい。
「足止めを食らった感じだが、まあいい。魔族も動くかも知れないからな」
「そうですね。あちらから来てくれたら面倒がなくていいですね」
しかしこの王都で何をしていればいいのだろう。
天使たちをファイターとして闘技場に出場させる事はもうしない。
勇者が相手でもあれだったのだ。Aランクの魔物がいくら出てきても話にならない。
「とりあえずやる事もないから、王都のギルドの依頼でも見てみよう」
ギルド本部には行ったが、そこの依頼がどんなものがあるのか、まだ見てはいない。
「それでしたら私がご案内いたしますわ。アラン様」
俺の敬称が『様』になっている……。
ギルドマスターのサジリアが自ら案内してくれるらしい。
一緒に連れだってギルドへと移動した。
◇ ◇ ◇
「さすが王都だな。Aランクの依頼もたくさんある」
闘技場で戦わせる魔物の生け捕り依頼もある。
掲示板の依頼を物色していると、サジリアが声を掛けて来た。
「お勧めはこちら辺りですわ」
サジリアの指した依頼は――
『Aランク以上指定。はぐれ竜討伐。
トルネ山に最近生息しはじめた竜が麓へ降りてきて人を襲っているという報告あり。
依頼形式・討伐。報酬・金貨五十枚』
金貨五十枚だと?
「竜が出るのか」
「そうなのですわ。本来竜など居ない地域に、最近出没するようになったようですわ」
「誰も手を付けていないのか?」
報酬が高額なので、誰も目を付けないとは思えないが。
「いいえ、何組か討伐に向かっておりますわ。ですがすべて返り討ちにあってしまっていますわ」
「結構な危険度じゃないのか? それ」
「そうなのですわ。竜種もはっきりしてませんので、本来ならSランク指定にしたい所ですわ」
なるほど、それ程なのか。
「それがお勧めなのか?」
「はい。アラン様のパーティーに相応しいかと思ったのですわ」
天使たちと竜との相性はどうなのだろう。俺のイメージとしては互角なのだが。
「フォウ、竜ってどんな感じ?」
「そうですね。竜種によっては勇者よりは遊べるんじゃないですか?」
遊べるって……。
「あの馬鹿勇者、一応魔王も倒しているよね? その勇者よりも手強いっての?」
「勇者はパーティーに恵まれたのではないでしょうか? ニナもそのパーティーのせいで負けました。それにあの剣が強すぎるのです」
確かにあの伝説の剣を手に出来たら、誰もが無敵になりそうだ。
「まあいいや。サジリア、この依頼受けよう。どうせ暇だし」
竜というものが見てみたかったので受ける事にした。
俺からしたら竜なんて雲の上の存在とも言える。天使を引き連れていて言うのもなんだが。
「よかったですわ。アラン様のパーティーが受けてくれて安心ですわ」
「ではすぐに行ってみるか」
トルネ山の場所を聞いて、早速出発することにする。
「お気をつけて、パーティー『エンジェル』の皆さん。無事のお帰りを祈っていますわ」




