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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第5章 王都編~闘技場のあれこれ~
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50・ニナVS鬼

 あらためて見るとデカい。十メートル越えの巨人だ。

 首と手首と足首に、鎖で繋がれていたと思われる名残の鉄輪が残っている。


 その鉄輪の大きさだけで、ニナの身長の半分以上はある。それが武器にもなり得るのは一目瞭然だ。


 こいつが暴れて、観客席に被害はないのだろうか。


「一応結界が張ってありますね。アラン」


 心の疑問をフォウが解説してくれた。

 なるほど、ある程度暴れてもこちら側に被害は出ないようになっているのか。

 当然と言えば当然の話だな。


「ランクAニナたんはこの身長差をどう克服して攻めるのでありましょうか!!! では早速ぅぅぅ!!! 戦ってもらいましょう!!! ファイッ!!!」


 電光石火! ニナは十メートルの高さを飛び上がり、巨人の目を殴り付けた。


「あの馬鹿! いきなり弱点行きやがった!」

「ニナですから」

「……」


 前回の鬼の件で、ニナには鬼の弱点は伝わっていたはずである。

 それなのにいきなりその弱点を攻めに行ったのだ。

 

 あの高さを飛んだ事から、既にその全身は強化魔法を施しているはずだ。

 案の定ひとつ目の鬼は、その一撃で倒れてしまった。


 ズシイン! と巨体が倒れ込み、闘技場の床が沈んだ。

 終わった。あいつ、フォウの倒し方を真似したのだろうか。自分にも出来るか試したかったのかもしれない。


「おおおおっとぉぉぉ!!! スィクロプいきなりダウンだーーーーー!!!」


 ニナは慌てた。めっちゃ慌ててた。

 たぶんあのひとつ目はもう、立ち上がれないだろう。

 

 ニナは何を思ったか、ワタワタと巨人に走り寄り、――なんと回復魔法を掛けていた。

 全回復したひとつ目は、片膝をついて起き上がった。


「スィクロプもダメージなしだーーー!!! 立ち上がってきたぞーー!!!」

「「「ウオォォォォォオオオ!」」」


 進行役も観客も、回復魔法が使われた事に気付かない。

 まさか無詠唱で瞬間的に全回復させられる者が居るとは、思ってもいないのだろう。


「いいのかそれで……」


 この後ニナが何をやっても、ひとつ目はすぐダウンしてしまうので、その度にニナは回復魔法を行使していた。

 あの天使からしたら、ひとつ目は弱すぎたのだ。


 そのうちニナはオロオロし始めた、――たぶん俺の姿を求めているのだろう。

 観客席をキョロキョロしている。どうすればいいのか分からないらしい。


「ニナー! もういいからやっちまえ!」


 俺の声が聞こえたのだろうか。

 こっちを向いてニコリとすると、ひとつ目に向き直った。


 ひとつ目の太い腕が、小さな天使に向かって唸りを上げる。

 ニナはその場を動かない。

 バシイと物凄い衝撃音が響き渡る。

 なんとニナは微動だにせず、それを受け止めていた。

 いや、受け止めてさえいなかった。無防備に両手を広げているだけだった。

 ひとつ目の剛腕は彼女の体に触れる事なく、空に止められた。


 受けた攻撃は防御魔法で防ぎ、同時に違う魔法を展開する。

 広げた両手の掌が淡く発光し始めた。

 ニナは軽く後ろに跳ね退き、ひとつ目から距離を取ると両腕を交差した。

 刹那。十指から個別に放たれた風は、十の閃光となってひとつ目の巨体に吸い込まれた。


「グガアアアア!!!」


 どこから声を出すのか、口もないひとつ目の断末魔の後で、その巨体は細切れとなって爆散した。

 幾十(いくそ)と飛び散った肉片は観客席に向かい、その結界に跳ねのけられていた。


 既にひとつ目の姿はなく、その残骸と思われる肉塊だけが場内に散乱している。


「「「……」」」


 静まる場内。……進行役の男はその役目も忘れて、口をあんぐり開けたままだ。


「最後は圧巻だったな」

「ニナですから」

「すごかった……です……ニナ様」


 忘れがちだが、サーラもちゃんとここに居る。


「え、えと……勝者……ニナたん?」


 やっと持ち直した進行役も、なんとかそれだけを言うと、ニナの片手を持ち上げた。


「「「ウオオオオォォォォ!!!」」」


 それを合図に、観客もありったけの声援を送りだす。


「凄かったぞーーー!!! ニナたーーーん!!!」

「惚れたーーー!!!」

「もうロリコンでいいやーーー!!!」

「「「ニーナ! ニーナ! ニーナ!」」」


 最後は大合唱だ。


 ニナは手を振り応えていたが、そのうちひとつ目の残骸に齧りつきやがった。


「食うなーーーっ!」




 


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