48・邂逅2
こいつが……勇者。
顔つきはとても若い。二十歳そこそこだろう。短めの金髪に整った目鼻立ちをしている。
談笑中の笑顔に歯がキラリと光る。同席しているローブを着た二人も同じくらいの歳だろうか。
着ている物の高価さからして、勇者のパーティーだと思える。
天使たちは既に興味も無くなったらしい。黙々と朝食にありついている。
ニナのロザリオも、輝く事を止めていた。
サーラは……何故かフォウをずっと見ている。
「お前らならあいつ……勇者に勝てるか?」
俺はもしかしたらと思って聞いてみた。
先ほどはニナ以上の存在が居る事を、フォウはほのめかしていたが、俺にはどうしても信じられない。
フォウは勇者をチラリと一瞥した後、サラリと言った。
「わたくしで互角。ですがあの剣がやっかいです。ニナは相手が狡猾な場合負けます。でもサーラなら余裕で勝てます」
サーラの部分は冗談だろうが、フォウで互角なのか。
ニナはその脅威的な魔力を持ってしても、その性格的に相手次第になるらしい。
しかしフォウも真面目な顔をして、冗談なんか言うようになったものだと、感心していると――
「はっはっはっは! 僕に余裕で勝てるだって?(笑)」
――勇者が突然立ち上がって、こちらに顔を向ける。地獄耳かよ。
「これは失礼。いや面白そうな話が聞こえてきてしまってね。僕の耳は普通の人間と違って感度が良いものでね(笑)」
なんかいけ好かねぇ。言葉尻に毎回薄笑いを浮かべやがって。
何を思ったのか、こっちのテーブルに来やがった。
「自己紹介しよう。僕は勇者! 勇者ローランドだ。知らない者は居ないだろうがね(笑)」
「……」
「この剣がどうとか言っていたね。そうともこの剣はね、勇者のみが持つ事を許された伝説の剣! カリブルヌスの剣だよ! 素晴らしいだろう? この輝き、この力強さ! 僕にとてもよく似合っていると思わないかい?(笑)」
こいつウザいんだが……。
洞窟の神様の所で聞いた話の中に、勇者の話も、その剣の話もあった。
よくは覚えていないが、勇者が勇者たる所以は、伝説の剣によるものだという。
その剣は勇者の資格を持つ者にしか、手に取る事が出来ないとされ、手にした瞬間に剣が勇者と認めるものだそうだ。
カリブルヌスの剣。別名『エクスカリバー』――こいつが何処でそれを手にしたのか知らないが、資格はあったのだろう。
「ところでこの中の誰が、この僕に余裕で勝てると言うんだい?(笑)」
「あ、それは冗談ですから気にしないで下さい。だからお引き取り下さって結構ですよ」
一応敬語を使ってやるから、さっさと戻れ。――勇者に視線を送るが、こいつは引き下がらない。
「とても冗談に聞こえなかったのだけどね。ほら、僕の耳って感度が良いから、そういう機微も感じとってしまうのだよ(笑)」
知らねえよ。さっさと戻れよこの馬鹿。
「よく見るとお嬢さんたちとても可愛いね。僕のテーブルでお茶でもどうだい? その目つきの悪い男はご遠慮願うけど(笑)」
「ローランド、その辺にしといたらどうだ」
「そうかい? バナム。僕より強い者が居たら気にならないかい?(笑)」
「そちらの者も冗談だと言っているだろう。そのまま受け取って戻れ」
お仲間から声が掛かって、ようやく引いてくれそうだ。
「仕方ないな。では失礼したね。僕の噂はよく耳にするけど、余裕で勝てるとか聞いた事が無かったからね。興味を持ってしまったのだよ(笑)」
ああ、殴りたい。その笑顔。
せっかくの朝食が不味くなってしまった。
天使たちが終始無視していたのには笑えるが、勇者がこんなにウザいやつだったとは……。
「では可愛いお嬢さんたち、またね(笑)」
馬鹿勇者はやっと、仲間の居るテーブルに戻って行った。
去り際にニナに向かってウインクしてやがる。――無視されてやんの、ざまあ。
勇者の評価マイナス増し増し。
心の隅にメモしておいた。




