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転生失格 ~転生して記憶も能力もない俺が行き着く所~  作者: 山下香織
第5章 王都編~闘技場のあれこれ~
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47・邂逅1

「さてどこから見るかな」

「おに……」

「お肉は後でな、フォウとサーラは何か見たいものはないか?」

「わた……わた……」

「わたくしはとくにないです」


 目的もなく歩いていたが、今の所見るものと言えば、色々と並んでいるお店くらいだろうか。


「とりあえず朝食でもとるか」

「おに……」

「朝からお肉は無しな。太るぞ」


 最近肉ばかり食っているような気がするので、朝からそんな重いものは見たくもない。


 視界に入った手頃なカフェに入る事にする。

 ちょうど開店したばかりのようだ。肉を出すような店には見えない。


 店の中はまだ客も入っていなく、俺たちが最初のようだ。

 テーブルにつき、パンにスープ、果実ジュースと適当に注文する。


「武器や防具の店も見てみるか? フォウは何か必要な物はないか?」


 この中で武器を使用するのはフォウだけだ。ニナはいつだって手ぶらだし、サーラのそれは飾りだ。


「わたくしも基本は魔法ですから、武器は手持ちので間に合ってます」

「そうかじゃあ、俺の剣でも買うから後で付き合ってくれ」


 あのポケットにどれだけの武器が入っているのか知らないが、新たに必要なものは無いらしい。

 俺は戦闘に参加するつもりはないが、軽い剣くらい持っておこうと思った。……金ならある。


 運ばれてきたパンを齧りつつ、他にどうやって時間を潰そうかと考えていると、ニナの首元がぼんやりと光っているのが目についた。

 位置からして、出会った当初から身に着けているロザリオだろう。――それがワンピース越しに光っている?

 ニナにその事を聞こうとしたその時、――カラランと扉が開かれ、新たな客が店に入ってきた。




 そいつらは圧倒的な存在感を放っていた。


 一瞬で店内の空気が冷たいものへと変わり、寒気さえ覚える。

 思わず目で追ってしまう。入って来た三人組は、奥のテーブルに落ち着くと談笑し始めた。


 ……なんだあいつらは。オーラが溢れ出ているかのように、その体に淡く光が纏って見える。

 

 気が付けば天使たちとサーラも、三人組に視線を送っていた。

 俺でさえ、この異常とも言える感覚を覚えるのだ。天使たちが何も感じないはずがない。

 

 ニナを見ればその首元のロザリオが、さっきよりも更に光を増して輝いていた。

 俺の視線に気付いたフォウが、説明をしてくれる。


「ニナのこれは敵対するかもしれない存在を教えてくれています。普通の敵ではありません。ニナと同格かそれ以上の存在を知らせます」

「ニナ以上だと?」


 それを聞いて、あらためて三人組を見た。

 剣士風の男と、魔法使いの装いの男と女。

 

 特に剣士風の男のその身に着けた装備が、既に只者ではない事を物語っている。

 その質や装飾からして、そこらで売っている装備ではなかった。――素人が見てもわかる程に。


 入って来た時に背負われていた大剣は、今は脇に置いているが、見ただけで恐怖を覚え、心を委縮させる。

 到底、人の手で作られた物とは思えない代物だ。

 

 鞘のない剣身には二匹の蛇が装飾されていて、見ているとそれが生きているかのような錯覚に囚われ、目が離せなくなり、動けなくなる。気付けば鳥肌が立っていた。


 俺はそいつが何者なのか、分かってしまった。

 こんなのがただの人間であるわけがない。


 図らずもその正体は、注文を取りに来た店員から漏れた。


「いらっしゃいませ、勇者ローランド様。本日は当店をご利用いだだき、まことにありがとうございます」


 俺の予想通りそいつは――


 ――勇者だった。




 

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