47・邂逅1
「さてどこから見るかな」
「おに……」
「お肉は後でな、フォウとサーラは何か見たいものはないか?」
「わた……わた……」
「わたくしはとくにないです」
目的もなく歩いていたが、今の所見るものと言えば、色々と並んでいるお店くらいだろうか。
「とりあえず朝食でもとるか」
「おに……」
「朝からお肉は無しな。太るぞ」
最近肉ばかり食っているような気がするので、朝からそんな重いものは見たくもない。
視界に入った手頃なカフェに入る事にする。
ちょうど開店したばかりのようだ。肉を出すような店には見えない。
店の中はまだ客も入っていなく、俺たちが最初のようだ。
テーブルにつき、パンにスープ、果実ジュースと適当に注文する。
「武器や防具の店も見てみるか? フォウは何か必要な物はないか?」
この中で武器を使用するのはフォウだけだ。ニナはいつだって手ぶらだし、サーラのそれは飾りだ。
「わたくしも基本は魔法ですから、武器は手持ちので間に合ってます」
「そうかじゃあ、俺の剣でも買うから後で付き合ってくれ」
あのポケットにどれだけの武器が入っているのか知らないが、新たに必要なものは無いらしい。
俺は戦闘に参加するつもりはないが、軽い剣くらい持っておこうと思った。……金ならある。
運ばれてきたパンを齧りつつ、他にどうやって時間を潰そうかと考えていると、ニナの首元がぼんやりと光っているのが目についた。
位置からして、出会った当初から身に着けているロザリオだろう。――それがワンピース越しに光っている?
ニナにその事を聞こうとしたその時、――カラランと扉が開かれ、新たな客が店に入ってきた。
そいつらは圧倒的な存在感を放っていた。
一瞬で店内の空気が冷たいものへと変わり、寒気さえ覚える。
思わず目で追ってしまう。入って来た三人組は、奥のテーブルに落ち着くと談笑し始めた。
……なんだあいつらは。オーラが溢れ出ているかのように、その体に淡く光が纏って見える。
気が付けば天使たちとサーラも、三人組に視線を送っていた。
俺でさえ、この異常とも言える感覚を覚えるのだ。天使たちが何も感じないはずがない。
ニナを見ればその首元のロザリオが、さっきよりも更に光を増して輝いていた。
俺の視線に気付いたフォウが、説明をしてくれる。
「ニナのこれは敵対するかもしれない存在を教えてくれています。普通の敵ではありません。ニナと同格かそれ以上の存在を知らせます」
「ニナ以上だと?」
それを聞いて、あらためて三人組を見た。
剣士風の男と、魔法使いの装いの男と女。
特に剣士風の男のその身に着けた装備が、既に只者ではない事を物語っている。
その質や装飾からして、そこらで売っている装備ではなかった。――素人が見てもわかる程に。
入って来た時に背負われていた大剣は、今は脇に置いているが、見ただけで恐怖を覚え、心を委縮させる。
到底、人の手で作られた物とは思えない代物だ。
鞘のない剣身には二匹の蛇が装飾されていて、見ているとそれが生きているかのような錯覚に囚われ、目が離せなくなり、動けなくなる。気付けば鳥肌が立っていた。
俺はそいつが何者なのか、分かってしまった。
こんなのがただの人間であるわけがない。
図らずもその正体は、注文を取りに来た店員から漏れた。
「いらっしゃいませ、勇者ローランド様。本日は当店をご利用いだだき、まことにありがとうございます」
俺の予想通りそいつは――
――勇者だった。




