表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひとつだけ 願いが叶うなら 【連載版】  作者: とと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/4

小さな 好奇心  ( ランドルフ 視点 )

夏のチャレンジホラーに投稿したくて書いた作品です。

異世界恋愛に ひとつだけ願いが叶うならに続いていたのですが。

物語としてセットで読んでいただきたかったので 異世界 恋愛に統一して連載として掲載します。

以前にホラーと異世界 恋愛のふたジャンルをはしごしていただいた方は、1.2話は、誤字や言い回しを少し修正しただけですのでご了承ください。

「お前、名前は、なんて言うんだ」


夏の長期休暇で、領地を訪れていた俺は、曾祖母の住む別棟の裏で、見知らぬ女の子を見つけた。


「お兄ちゃんだあれ?」


「ここは、僕のおばあ様の家だぞ、お前が先に名乗れ」


俺が両手を組んで少女の前に立つと、少女はくりくりした大きな瞳で、俺を見上げてほほ笑んだ。


摘んでいた花を置いて、立ち上がった少女は、驚くほど綺麗なカーテシーをする。


「グリフィス伯爵家のアリアと申します」


アリアは膝を折ったまま、頭を下げている。


「ア アリア!頭を上げていい。俺はアルバ侯爵家のランドルフだ!アリアはどうしてここにいるんだ?」


「我が伯爵家は、家庭教師を雇うお金がないので、エレナ様にマナーやピアノ、家政を教えてもらっています」


「おばあ様に…………。」


アリアを改めて見つめる。


体格は小さいが、話し言葉や所作は、とてもしっかりしていて………かわいい。


「アリアは何歳だ?」


「はい。先月のお誕生日で6歳になりました」


はきはきと、元気に答えるアリアは、俺の周りにいる令嬢達にはいない。


興味がどんどん沸いてきて、じっとアリアをみつめていると、返事をしない俺に近づき、彼女はキョトンとした表情で首をかしげる。


ぐわぁ。


俺は思わず目線をそらして、横を向いた。


「あの。アルバ侯爵令息様?どうされました?」


顔を覗き込むアリアの顔を見ないままに、俺は彼女に手を差し出した。


「俺のことはラル様と呼べ、俺も…………。おばあ様と一緒に、アリアに勉強を教えてやる!」


俺が差し出した手に、小さくて暖かなアリアの手が重なる。


小さな手を、ぎゅっと握りしめると、急に恥ずかしくなって………グイグイと手を引いて、おばあ様の屋敷に向かった。


「あらあら、まあまあ。私のかわいい天使が二人」


エレナおばあ様は、窓辺のロッキングチェアに座りながら刺していた、刺繍の手を止めて、俺達を見て穏やかにほほ笑む。


「おばあ様、アリアにマナーを教えていらっしゃるんですか?」


「ええそうよ。アリアは私の優秀な生徒よ」


「おばあ様、僕もアリアの先生になってもいい?」


「ふふふ。まあ先生に?」


「うん。僕お勉強教えてあげられるよ」


おばあ様が、アリアを見てにっこり微笑む。


「アリアは先生が増えてもいい?」


「はい。よろしくお願いします」


俺はアリアがほほ笑むのを見て、胸が弾んだ。


「よし、アリア!裏の小川でザリガニが取れるんだ、行くぞ」


俺は、アリアの手を引いて急いで部屋を出る。


「あらあら。ランドルフ、お勉強するのではなかったの?」


「おばあ様、ザリガニ捕まえたら!すぐに戻ります」


それからの毎日は楽しかった。アリアは、俺より年下とは思えない優秀な子で、俺も………おばあ様に、マナーを一緒に習い、空いた時間は一緒に山や川で過ごした。




✿ ✿ ✿




「ねえラル様、あの森の端にあるお屋敷はなに?」


「ああ、あそこは昔、えーっとおじい様の妹だから……大叔母様か、そのおばさまは小さな頃から体が弱くて、領地のあの屋敷でずっと静養していたそうだが、大人になる前に死んだって聞いた」


アリアの瞳が不安げに揺れる。


「どうした?」


アリアが、ぎゅっと俺のジャケットの裾を握る。


「侍女の皆さんが話していたのでけど…………あのお屋敷から、女の人が泣く声が聞こえるんだって…………時々叫び声も聞こえるって…………。」


幽霊が怖くて、俺の服をぎゅっと握るアリアが、むちゃくちゃかわいくて、頼りにさえた俺が誇らしくて、俺は何でもできる気持ちになった。


「なんだ~アリア。幽霊が怖いのか?」


「…………。ラル様は怖くないの?」


「怖いはずないだろ!俺はもう10歳なんだぞ」


夕日に照らされて、ピンク色が濃くなり、キラキラとしたアリアの瞳が、尊敬を乗せて俺を見ている。


俺は、アリアの耳元で小さな声で囁いた。


「今夜、こっそり抜け出して、あの屋敷を探検しないか?」


「うぅ。幽霊は…………。」


「大丈夫、幽霊なんていないさ、この間ホタルを見に行った(護衛付き)夜も、なんでもなかっただろ、もし幽霊がいても俺がやっつけてやる」


アリアが俺をじっと見つめる。


「今夜、夕食の後、着替えずに待ってて、迎えに行く」


アリアは、眼を左右に泳がせながら、コクリと頷いた。




✿ ✿ ✿




夕食後、早く眠るとベッドルームに入った俺は、倉庫から持ち出したランプと、小さな短剣を持って、こっそりと裏口から外に出る。


アリアのいる客室は一階の角部屋、窓を外からノックすると、直ぐにアリアが顔を覗かせた。


「ほら、アリア、手を貸して」


少しだけ、高い位置にある窓から、アリアを抱える様に降ろすと、しっかりと手を握り、あの屋敷へと向かう。


「ラル様……暗いですね……私。こんな時間に、大人なしで外に出るの、初めてです」


俺は、ぎゅっと唇を引き結んだ。


俺だって初めてだ………でも、アリアを守らなきゃ。


「アリア。もっとそばにおいで、ランプの明かりで、足元が見えやすいよ」


アリアの指先が冷たい。


冷たい手をグイっと引いて、腕を組む。


屋敷に近づくにつれて、草の背が高くなる。


「ラル様、大きなお屋敷ですね、扉は空くのでしょうか?」


玄関の扉はかなり大きく、薄汚れているが、壊れている様子はない。


「そうだな、扉があかなければ、ぐるりと周りをまわって帰ろう」


アリアがコクリと頷く。


俺は、ランプを床石に置くと、大きな扉を手前に引く。


ぎぃぃぃぃ…………ぎぃ。


扉はきしんだ音を響かせて開いた。


バサバサ、ガン、バサバサ。


「うわー」


「キャー」


開いた扉から、大きなコウモリが飛び出して、驚いて二人ともひっくり返る。


俺が転がった先には、鉄の柵があり、折れた先がちょうど肘にあたって服も肘も少し切れた。


「いたたた…………大丈夫か、アリア」


肘を抑えながら、直ぐにアリアを助け起こす。


「はい。しりもちを突いただけ…………。」


「ラル様!肘から血が」


「大丈夫だ、かすり傷だよ」


アリアは、ごそごそと、ドレスのポケットを探り、小さな水袋とハンカチを取り出した。


「ラル様、見せてください、あの私のハンカチですが、ガーゼの代わりになりますから」


アリアはおもむろに、二つに結んでいた髪のリボンをひとつ解き、水袋の水を含ませて俺の肘を綺麗に拭いた。


創の上に、緑のかわいい縁取りが刺繍された、白いハンカチを当てると、もう片方のリボンも解いて、ハンカチを俺の肘に結ぶ。


「凄いな~アリア、手際がいい」


「あ、あの~」


アリアは恥ずかしそうに頬を染める。


弟がよく(飼ってるヤギが)怪我をするので…………。」


よし!今度こそ、俺が絶対にアリアを守る。


シクシク…………シークシーク。ギヤー。


部屋の奥から、鳴き声と叫ぶような声。


「ゆ…………幽霊?」


「幽霊なんかいないよ、コウモリかな?」


……………コウモリは鳴かない………。


アリアの手を握り、屋敷の中に入る。


歩くたびにギシギシと床が軋む音。


屋敷の中には月の光が入らず、どんどん周囲が暗くなる。


……………………。


ガリガリガリガリ…………ガリガリガリガリ。


突き当りの部屋から、何かをひっかく様な音が響く。


俺は、アリアと繋いだ手に力を込める。


「あの奥の部屋だな…………。」


廊下の奥を、ランプで照らすと、白い影が横切った。


「きゃ」


アリアが小さく悲鳴を上げる。


……………………。


ガタガタガタガタ…………。


「ラル様、やっぱり幽霊が…………。」


そう言いながら、アリアが俺の腕にしがみ付く。


頑張るぞ俺!


部屋の扉に手を掛けると。


「ミャーミャー」


今度は、猫みたいな鳴き声が、後ろからして振り返る。


そこには、真っ白な子ぎつねが二匹。


「アリア、見て子ぎつねだ、真っ白だよ」


俺がアリアの手を引いて、子ぎつねに駆け寄ると、「ギャー」と大きな鳴き声がして、後ろから何かがぶつかってきて、アリアと一緒に、廊下の隅に転がった。


「アリア」


俺は隣に転がっている、アリアを引き寄せ顔を上げる。


グルゥ。グルゥ~。


目の前には、低い声でうなりながら俺達を見据える、大きな白い狐。


足元には、さっきの子ぎつねが二匹、小さくなって隠れている。


グギャーーーー。


大きな狐は大きく口を開け、高く飛びあがった。


俺はアリアを守るために、ぎゅっと抱きしめて眼を閉じる。


「あっちにいきなさい!」


叫び声に、俺は眼を開けた。


目の前には、ボロボロと大粒の涙を流しながら、歯を食いしばるアリアの顔。手には、俺が腰に下げていたはずの、短剣を両手で握りしめ、唸る白狐に向けている。


ギャアァーー。


もう一度大きく鳴いた白狐が、飛び上がろうとすると、バタバタと複数の足音が聞こえ、白狐の頭に石が命中した。


キャン。


白狐は、二匹の子ぎつねを咥えると、屋敷の外に逃げていく。


短剣がころりと床に転がった。


「ランドルフ坊ちゃん、お怪我はありませんか?」


護衛騎士のカイセルが駆け込んでくる。


腕の中でアリアの涙は止まり、うるうるとした瞳が俺を見上げた。


俺は…………。


「アリア嬢も、怪我は無いかい?」


カイセルはアリアをするりと抱き上げ、髪を撫でる。


他の騎士たちが、屋敷の中を確認する声が響く中、俺は立ち上がり床に落ちたナイフを拾う。


アリアは安心したのか、カイセルの肩に頭を乗せて、眼を閉じている。


俺は、ぐっと拳を握りしめた。


「さあ坊ちゃん、皆さん心配してお待ちですよ」


カイセルが差し出す手を、俺は握らずに一歩前に出る。


「カイセル、俺に剣術を教えてくれ」


「はい。承知しました坊ちゃん」


「坊ちゃんて呼ぶな」


屋敷の玄関を出て、空を見上げると、月がかなり高い位置まで登っていた。


それから俺は、父上にこってり絞られて、5日間の自室での反省を言い渡された。




✿ ✿ ✿



「アリア!」


5日間、いい子に過ごした俺は、急いでおばあ様の屋敷に行くと、アリアの姿が見当たらない。


使っていた客室も、綺麗に整えられている。


アリア………どうしたんだ…………怖い思いさせたから、俺を嫌いになったのか?


俺は、おばあ様の部屋を訪ねる。


「おばあ様、アリアが居ません」


ノックもせず扉を開けた僕を、おばあ様は、優しく微笑んで手招きした。


「ランドルフ、こちらにいらっしゃい」


駆け寄ると、おばあ様は、僕に小さな包みを差し出した。


「開けてもいいのですか?」


「ええ」


ピンク色の包みを開けると、花のかわいい模様がある封筒と紫、ピンク、シルバー三色の組みひもで作った、ブレスレットが入っていた。


「手紙を読んでみて」


おばあ様に促され、封筒を開く。


= ラル様 =


お手紙での報告、すみません。


私は、隣国にいる叔母の家に養女に行くことになりました。


ラル様と過ごした毎日は、とってもとっても楽しかったです。


ありがとうございました。


組みひもで編んだブレスレットは、私が作ったので、あまり上手ではないのですが、私からの精一杯のお礼です。


お元気で、さようなら。


アリア・グリフィス




手紙は、6歳の子が書いたとは思えない、綺麗な字で書かれていた。


俺は、手紙を握りしめ、おばあ様を見上げる。


おばあ様は、アリアの境遇や組みひもを編んでいる様子、最後に俺に会いたがっていたことなど、会えなかった毎日のアリアの様子を聞かせてくれた。


俺が…………。


俺はおばあ様の膝に顔をうずめて、大声で泣いた。


勉強も剣術も、いっぱい頑張って、アリアを迎えに行くんだ。



(´艸`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
Xの企画から来ました。 幼いランドルフとアリアの出会いが、とても微笑ましかったです。最初は「守ってやる」と張り切っていたランドルフが、白狐を前にした場面では逆にアリアに守られる形になるのが印象的でした…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ