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九州の覇王  作者: 大野半兵衛


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第21話 弘治4年、始めました

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 第21話 弘治4年、始めました

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 弘治4年1月。

 今年は確か改元があるはずだ。

 改元があっても、宗像にはあまり影響はない。

 ただ、公文書に記載する年がコロコロ変わるのは止めてほしい。

 せめて天皇が崩や退位した時に、現代のように年号が変わってほしい。


 さて、昨年の収支報告に移るか。


 銭の造り直しは70,000貫。

 やや減少したが、これは関門海峡の交通の便が悪かったせいだ。

 今は毛利が豊前の沿岸船を押さえているので、問題なく通行が可能になっている。


 椎茸は9,000貫。

 朝鮮での売れ行きがよい。

 日本向けを大幅に絞り、朝鮮に回している。

 おかげで、日本の相場がまた上がってきたらしい。


 玻璃は18,000貫。

 こちらは微減だ。

 朝鮮での売れ行きはいいが、日本の価格が下落しているせいで、売り上げが落ちた。

 生産量は横ばいだ。

 これまでは出来過ぎていたと思えばいい。

 むしろ、生産数を絞ろうと思い、そこで望遠鏡のレンズ作りをさせている。


 鉄砲は400挺の生産で、4,000貫の支出だ。

 目標の年産500挺までもう少しである。

 鉄砲の保有数は1,100挺になった。

 壊れても修理可能なものが多いことから、数は減っていない。


 走破船は0隻。

 疾風船は3隻が建造され、4,200貫の支出。

 基本的に疾風船は10隻を超えたところで、さらに小型で使い勝手がいい船の生産に移る予定だ。


 硝石は150斗を生産し、3,000貫の支出。


 交易(博多商人)2回で38,000貫。

 商人たちからの要望で、今年から船を増やすことにした。


 交易の手間賃2割で7,600貫の支出。


 硝石購入(博多商人)が3,000貫の支出。


 水あめ菓子は新製品を出したら、2,500貫まで売上を上げた。


 飴ちゃんは0。


 常備兵1,500人で、22,500貫の支出。

 今年は2,000人に増やす予定だ。

 領地も増えたことだし、常備兵で活躍したものはドンドン上に上げていこうと思う。


 生産分配は6,000貫の支出。


 シャボン生産は6,000貫。


 遠賀川の水路工事に3,000貫の支出。

 今回は戦があったので、その間の工事は細々としたものになっていることから、費用が減少している。


 姓氏対立事件支援は2,000貫の支出。

 これは去年で終わりだ。


 そんなわけで、昨年の収支は15,950貫のプラスだ。




 弘治4年3月。

 肥前の調略が進み、徐々に宗像に臣従する家が増えてきた。

 葉隠に弱みを探させ、そこを突いての交渉を深田氏実が行ってくれて成果を出している。

 この深田氏実は、宗像神社の擬大宮司職にも就いている重臣の1人だ。

 先の肥前の戦いで戦功立てたことで、肥前に5,000石を与えている。

 とても頼りになる家臣の1人である。


 そんな深田氏実が俺を訪ねてきた。


「殿。蒲池の姫を娶りませぬか」

「いきなりだな。てか、蒲池ってあれか、筑後の?」

「はい。その蒲池です」

「上、下、どっちだ」

「下になります」

「ほう。どうやって手懐けた」

「誠意をもって話をしたまでにございます」


 蒲池鑑盛かまちあきもり

 筑後最大の勢力を誇る下蒲池氏の当主だ。

 昔、少弐氏に襲撃を受けた龍造寺氏が、助けを求めたのがこの蒲池鑑盛である。

 龍造寺家兼や隆信を保護し、肥前に返り咲く手助けをした。

 大友に従属している大名だが、さすがの大友も蒲池には強く出られないらしい。

 ここと縁を繋ぐのは短期的には悪い話ではないのだが、長期的には問題がある。

 筑後の石高は精々35万石くらい。

 そのうち下蒲池だけで12万石もあると言われているのだ。

 筑後の3分の1も蒲池が持っているのだ。

 それだけじゃない。

 上蒲池を含めれば20万石にもなる。

 俺の信頼できる家臣であれば構わないが、外様の大勢力を筑後に残すのはさすがによろしくない。


「却下だな」

「ですか」

「却下されるのを分かっていたんじゃないのか?」

「蒲池は大身ですから、さすがに難しいと思っていました」

「で、本題は?」

「西牟田親氏殿のご息女を娶っていただきたく」


 西牟田城主か。

 たしか5万石くらいの石高だな。

 それくらいなら許容範囲だ。


「そんな娘が西牟田にいるのか」

「殿より3つ年上ですな」

「側室だぞ」

「構わないとのことにございます」

「ならばよい。話を進めよ」

「はい。ところで、殿」

「他にもあるのか」

「いえいえ、お色様は何方に嫁がせるのですかな?」

「む……色は外には出さん」

「ということは、家内の者にございますな」

「それがどうした」

「いえいえ、某にも息子がおりますゆえ、名乗りを上げさせていただきたく」

「まだ誰に色をやるのか、決めておらぬ。候補の1人とはしておこう」

「はい、ありがたく存じます」


 深田氏実が儂の部屋を辞すと、別の者が入ってくる。

 ゆったりとした動きで腰を下ろすと、深々と頭を下げた。

 顔を上げるように言う。

 21歳の若き武将だ。

 イケメンなので、爆ぜろと呪詛したくなる。


「もうよいようだな、孫四郎」

「はい。最近は槍を扱えるほどになりましてございます」


 鍋島直茂、通称孫四郎。

 龍造寺隆信の家臣、鍋島家の跡取り息子だ。

 儂にグロックで腹を撃ち抜かれたが、4カ月寝たきりで、さらに起き出して普通に歩けるまでになるのに数カ月かかった。


「で、どうするか決めたか」

「はい。敗残兵をここまで厚遇してくださった恩に報いとうございます」

「そうか。ならば、儂の側近として仕えよ」

「某を側近に……」

「儂は人使いが荒いぞ。覚悟せよ」

「はっ!」


 生死の境を彷徨った数カ月、その間鍋島直茂の面倒を見たのは正三配下の葉隠のくノ一だ。

 葉隠には薬に通じている者もいるため、鍋島直茂は助かった。


 儂の側近になった鍋島直茂は、常備兵たちと共に山野を駆け、筋トレをし、自分を鍛え直していくのだった。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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