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【TS幼女転生王族スローライフ】姫殿下(三女)は今日も幸せ♪ ~ふわふわドレスと優しい家族に囲まれて★~  作者: 霧崎薫


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第四百三十六話「真夜中のリボン同盟と、薔薇の塔の『秘密の夜会』」

 その日の夜、王城の薔薇の塔は、普段の静寂とは打って変わって、甘いお菓子の香りと、抑えきれない高揚感に包まれていた。


 窓の外には満月が輝いているが、カーテンを閉め切ったシャルロッテの居室の中は、魔法のランプによって、昼間よりも明るい、パステルピンクの光で満たされていた。


 今夜は、シャルロッテの発案による、王城初の公式な(しかし男子禁制の)「パジャマパーティー」が開催されていたのだ。


「皆様、ようこそ! 今夜のルールはたった一つ。『世界で一番可愛いことしかしちゃダメ』です!」


 シャルロッテは、ベッドの上に立ち上がり、高らかに宣言した。

 彼女が身につけているのは、エマがこの日のために仕立てた、最高級のシルクとレースをふんだんに使ったネグリジェだ。銀色の髪は、寝るためだけに緩く編まれ、小さなリボンがいくつも結ばれている。その姿は、まさに「眠りの国の妖精姫」そのものだった。


 招待客であるイザベラ王女、マリアンネ王女、そして友人のエリーゼは、それぞれの個性に合わせたナイトウェアに身を包み、シャルロッテの宣言に拍手を送った。


「まあ、シャル。なんて素敵なルールなの。今夜ばかりは、外交の駆け引きも、優雅な姿勢も忘れて、ただの女の子に戻れるのね」


 イザベラは、真紅のサテンのパジャマの裾を翻し、クッションの山に優雅にダイブした。普段の完璧な王女からは想像もつかない、無防備で愛らしい姿だ。


「非論理的なルールだわ……でも、この空間の幸福指数の高さは、否定できない事実ね」


 マリアンネは、幾何学模様のナイトキャップを被り、眼鏡の位置を直しながらも、口元には隠しきれない笑みを浮かべていた。彼女の手には、論文ではなく、ふわふわの猫のぬいぐるみが握られている。


 エリーゼは、恥ずかしそうに、しかし嬉しそうに、フリルのついた白い木綿のネグリジェの裾を握りしめていた。


「シャルロッテ様……こんな夜更かし、初めてです。なんだか、悪いことをしているみたいで、ドキドキします」

「ふふ、エリーゼお姉様。可愛くて悪いことは、神様も許してくれるんだよ!」


 パーティーは、シャルロッテの魔法によって加速した。


 彼女は、テーブルに並べられた山盛りのポップコーンとマカロンに、光属性と風属性の魔法をかけた。

 すると、お菓子たちは重力を失い、部屋中をゆっくりとふわふわ漂い始めたのだ。


「さあ、みんな! お空を飛ぶお菓子を、パクリと食べてね!」


 四人の少女たちは、空中に浮かぶマカロンを追いかけ、ベッドの上で跳ね回り、笑い声を上げた。イザベラが空中のイチゴをキャッチし、マリアンネが浮遊するクッキーの軌道を計算して待ち構える。


 そこには、王族の重圧も、貴族の義務も、将来への不安も存在しなかった。ただ、「今、この瞬間が楽しい」という、純粋で圧倒的な「女の子の輝き」だけがあった。


 一通り遊んだ後、彼女たちは巨大な天蓋付きベッドに集まり、車座になった。

 シャルロッテは、モフモフを抱きしめながら、秘密の話を切り出した。


「ねえ、みんな。もし、魔法で何にでもなれるとしたら、何になりたい?」


 それは、問題を解決するための問いかけではない。ただの夢想だ。


 イザベラは天井を見上げて言った。


「私は……一日中、ただ美しく咲いて、散っていくだけの薔薇になりたいわ。誰の視線も気にせず、ただ自分のために咲くの」


 マリアンネは眼鏡を外して言った。


「私は、風になりたいわ。形を持たず、世界の果てまで飛んで行って、全ての秘密を見て回るの」


 エリーゼは小さな声で言った。


「私は、誰かのポケットの中にある、小さなお守りになりたいです。誰かを、そっと安心させてあげたいから」


 三人の夢は、どれも彼女たちの本質を映した、美しく輝く宝石のような言葉だった。

 そして、全員がシャルロッテを見た。


「シャルは? シャルは何になりたいの?」


 シャルロッテは、満面の笑みで答えた。


「わたしはね、今のままでいいの! だって、今、大好きなお姉様たちとこうして笑っている私が、世界で一番幸せで、一番可愛いって知っているもん!」


 その言葉に、三人は顔を見合わせ、そして一緒にシャルロッテを抱きしめた。

 部屋の中は、パジャマの柔らかい感触と、女の子たちの甘い香りと、弾けるような笑い声で満たされた。


 一方、その頃。


 薔薇の塔の扉の外では、ルードヴィヒ国王、アルベルト王子、フリードリヒ王子、そして執事オスカーが、中の様子を伺おうと、聞き耳を立てていた。

 しかし、扉にはシャルロッテによる厳重な「男子立ち入り禁止結界(※ピンク色の光の壁)」が張られており、中の会話は「楽しそうな笑い声」という音色に変換されてしか聞こえてこなかった。


「くっ……中から、とてつもない幸福の波動を感じる……! 何が行われているのだ……!」とフリードリヒが悔しがる。


「入れない……。論理的に、この結界は『乙女の園』という概念で構成されており、我々が介入する余地はゼロだ」とアルベルトが諦めを口にする。


「娘たちが……楽しそうなら、それでよいのだが……寂しい」と国王が本音を漏らす。


 部屋の中では、夜明けが来るまで、誰にも邪魔されない、キラキラとした秘密の時間が流れ続けた。

 シャルロッテと姉妹たちは、枕を抱き、互いの体温を感じながら、いつしか幸せな眠りに落ちていった。その寝顔は、王国のどんな宝石よりも美しく、無防備に輝いていた。


 何も事件は起きなかった。誰も救われる必要はなかった。

 ただ、女の子たちが女の子として、最高に可愛く輝いただけの、完璧な夜だった。

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