第三百九十話「銀河の石ころと、姫殿下の『孤独な星の愛』」
その日の午後、王城の最も古い塔の最上階にある、秘密の天文台は、冷たく澄んだ空気に満ちていた。そこには、星図の解析に没頭する、マリアンネ王女の姿があった。彼女の周りには、彼女が追求してきた「論理の壁」が、厚い氷のように立ち込めていた。
「この宇宙の法則は、あまりにも広大で、私の知性を超えているわ……。魔力の統計学的な解析をもってしても、この『無限の空虚』の、その底知れぬ孤独を、どうすれば埋められるのかしら」
マリアンネ王女は、自分の知識が、宇宙の広大さの前では、あまりにも無力であることに、静かな絶望を感じていた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、その天文台の冷たい空間に、音もなく現れた。彼女の銀色の巻き髪は、窓から差し込む、星の光の粒子を浴びて、プラチナのように儚く輝いていた。
「ねえ、お姉様。あの空、なんだか、みんなが一人ぼっちで、宇宙で迷子になっているみたいだよ」
シャルロッテは、マリアンネの持つ、「知性の孤独」という、冷たい魔力を感知していた。
マリアンネ王女は、妹の言葉に、静かに顔を上げた。
「シャル……。宇宙は、冷たい論理で構成されている。そこに、人間の感情が入る余地などないわ。私も、この『孤独な星図』に、ただ、静かに向き合うしかないのだわ……」
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シャルロッテは、マリアンネの「孤独な論理」を、否定することも、論破することもなかった。彼女は、「孤独」を、「愛の温もり」で包み込むことを選んだのだ。
シャルロッテは、天文台の望遠鏡の接眼レンズに、そっと触れた。そして、光属性と共感魔法を融合させた。
彼女の魔法は、望遠鏡が映す星々の光に、「地球から遥か遠く離れた、温かい『故郷の記憶』」という、微細な魔力を注入した。
シャルロッテは、マリアンネに語りかけた。
「ね、お姉様。この星はね、『遠い遠い、誰かの、温かい故郷』の光を、ずっと、みんなに送ってくれているんだよ。だから、お姉様は、もう一人ぼっちじゃないの」
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マリアンネ王女は、望遠鏡を覗いた。彼女の瞳に映る星は、冷たい論理の光ではなく、「故郷の温かさ」という、親しみやすい感情の光を放っていた。その光は、彼女の知性の壁を、優しく溶かした。
マリアンネ王女は、星の光の中に、自分が幼い頃、祖母から聴いた、星にまつわる古い童話の記憶を呼び覚ました。それは、星々が、遠い旅人たちの「愛しい記憶」を、集めて灯しているという、温かい物語だった。
「ああ、シャル……! この星の光は……! 私の知性が、長年探求してきた『宇宙の論理』よりも、遥かに尊い、『愛の論理』を、私に示してくれたわ!」
マリアンネ王女は、涙ぐんだ。彼女は、自分の知性が、人類の「孤独な探求」に縛られていたことを悟り、シャルロッテの愛という「温かい視点」によって、知性の新たな地平を開いた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、にっこり微笑んだ。
「えへへ。だって、冷たい宇宙よりも、温かい故郷の光のほうが、絶対可愛いもん! だって、遠くの星も、きっと誰かに愛されて、笑っているんだもん!」
その日の深夜、天文台は、シャルロッテの愛の哲学によって、「宇宙の孤独は、愛という温かい記憶によって、満たされる」という、最も温かい真理に満たされたのだった。マリアンネ王女は、シャルロッテの言葉から、人類の知性が、愛という普遍的な概念なしには、真の宇宙の姿を捉えきれないことを学んだったのだった。




