第三百六十一話「交差点の不思議な少年と、シャルロッテの『七色の影の秘密』」
その日の午後、城下町の最も人通りの多い交差点は、いつものように騒がしかった。その交差点の隅、誰も見向きもしない汚れた壁の前に、一人の少年が立っていた。彼の名はリアン。年の頃は十二、三。彼は、誰も理解できない、奇妙で、無意味な行動を毎日繰り返していた。
リアンは、石畳の同じ一点に、しゃがみ込み、手のひらを地面につけて、「静かな呼吸」を送り続けている。そして、太陽が傾むき始めた午後三時になると、彼は立ち上がり、自分の影に向かって、「無言の、しかし激しいダンス」を踊るのだ。
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城下町の人々は、リアンを嘲笑していた。
果物屋のマルタおばさんも、彼を静かに哀れんでいた。
「かわいそうに、あの子は頭が弱いのだろうね。あんなところで、毎日何をしているのやら。あんな無意味な行為では、パン一つ買えやしないよ……」
マルタおばさんにとって、リアンの行動は、無意味な行動以外なにものでもなかった。そして多くの人にとって、彼の行動は無駄の極みだった。
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しかし、シャルロッテは、モフモフを抱き、リアンの行動を、交差点の喧騒の外から、毎日静かに見守っていた。彼女の目には、リアンが「知恵遅れ」などではない、「愛の魔力を具現化する、孤独な芸術家」として映っていた。
シャルロッテの共感魔法は、リアンが手のひらから大地に送り続けている「静かな呼吸」が、「人々の心の重荷を、人々の代わりに大地に吸い込ませる」という、究極の献身の魔法であることを感知していた。そして、彼の影が踊る「無言のダンス」は、「大地の重い魔力を、七色の光に変えて、空に還す」という、愛の儀式だった。
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ある日、シャルロッテは、マルタおばさんに話しかけた。
「ねえ、マルタおばさん。リアンお兄さんはね、この交差点で、一番大切な、お仕事をしているんだよ」
マルタおばさんは、驚いた。
「お仕事だって? 姫様は何をおっしゃっているのやら。あんな無意味なことを……」
シャルロッテは、にっこり微笑んだ。
「ううん。リアンお兄さんが、あんなに一生懸命ダンスを踊ってくれるから、この交差点の、みんなの心が、カチコチにならないで、柔らかいままでいられるのよ。お兄さんのダンスはね、心のマッサージなんだよ」
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その夜、シャルロッテは、リアンの仕事場に、「愛の証明」を残した。
彼女は、リアンがいつも手のひらを付けている石畳の、ごく小さな窪みに、「決して枯れない、真っ白な一輪のミニチュア薔薇」を、光属性と土属性の魔法で創り出した。それは、「あなたの献身は、誰にも知られず、静かに咲き続けている」という、シャルロッテからの無言の、揺るぎない愛の承認だった。
リアンは、その薔薇を見て、自分の孤独な献身が、この白薔薇の主以外に誰にも気づかれず、しかし、最高の形で王族に承認されたことを知った。その時、彼の心には、新しい希望の光が灯った。




