第三百五十三話「パステルカラーの壁と、シャルロッテの『愛の和解図』」
その日の午後、王城の薔薇の塔は、重苦しい静寂に包まれていた。姉のイザベラ王女とマリアンネ王女は、些細なことがきっかけで喧嘩をしてしまい、互いに意固地になって口を利かなくなっていた。
発端は、マリアンネが実験中に、イザベラの新しいドレスに試薬のシミをつけてしまったことだ。
イザベラは「美への冒涜よ!」と怒り、マリアンネは「科学の探求を邪魔されたわ!」と反論。二人の持つ「美学」と「知性」の価値観の対立が、感情的な意地の張り合いに発展していた。
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イザベラは、自室の壁に飾られたパステルピンクの布を見つめていた。
「私だって謝りたい。でも、マリアンネが私の美学を理解してくれない限り、この意地は通さねばならないわ」
マリアンネは、研究室のデスクで、実験器具の配置図を引いていた。
「確かに論理的には私が悪い……。でも、感情的には、イザベラの過剰な感傷が理解できないわ。だから合理的な謝罪のタイミングが見つからないのよ」
二人の間には、「謝罪の言葉」ではなく、「意地の壁」が、目に見えない形で高くそびえ立っていた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、まずイザベラの部屋を訪れた。彼女の目には、イザベラの意地が、「愛の表現の仕方を忘れた、悲しい感情の鎧」として映っていた。
「ねえ、お姉様。マリアンネお姉様が、『お姉様のドレスが、世界で一番可愛い』って、言っているよ」
イザベラは、驚いて顔を上げた。
「嘘よ、シャルロッテ。マリアンネがそんな感傷的なことを言うはずがないわ」
シャルロッテは、イザベラのドレスの裾に、光属性と共感魔法を融合させた。彼女の魔法は、イザベラが「マリアンネの知性を愛している」という、秘めたる感情を、微細な光のパターンとして、ドレスのレースに定着させた。
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次に、シャルロッテはマリアンネの研究室を訪れた。マリアンネは、論理的な解決法を求めて、複雑な数式を書き連ねていた。
「ねえ、お姉様。イザベラお姉様が、『お姉様の知性が、私の美学を支えている』って、言っているよ」
マリアンネは、戸惑いながらも、シャルロッテの言葉に耳を傾けた。
「イザベラが? ほんとに? 彼女がそんな非合理的な言葉を言うなんて……」
シャルロッテは、マリアンネの数式ノートに、光属性と共感魔法を融合させた。彼女の魔法は、数式の行間に、イザベラが「マリアンネの優しさを愛している」という、秘めたる感情を、パステルカラーの光の模様として描き出した。
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シャルロッテは、二人の姉をテラスに連れ出した。
二人は、互いに目を合わせようとせず、壁を向いていた。
シャルロッテは、二人の間に立ち、両者の手をそっと握った。そして、両者の手に、互いの服やノートに注入した「秘めたる愛のパターン」を、光の波動として、同時に送り込んだ。
イザベラは、マリアンネの「知性のノート」に隠された、自分への静かな愛情を感じ、涙が溢れた。マリアンネは、イザベラの「美のドレス」に隠された、自分への静かな尊重を感じ、理性の壁が崩れた。
先に意固地の壁を壊したのはマリアンネの方だった。
「イザベラ……ごめんなさい。あなたの美学を、私の冷たい論理で傷つけたわ。でも、あなたの美しさが、私の探求の究極の目的であることをわかってほしいの」
イザベラは、涙を拭い、マリアンネを強く抱きしめた。
「マリアンネ! わたくしもごめんなさい。あなたの知性こそ、わたくしの美学に真実の深さを与えてくれるわ。もう二度と、あなたの優しさを疑わない」
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シャルロッテは、モフモフを抱きながら、にっこり微笑んだ。
「えへへ。だって、喧嘩しているよりも、抱きしめ合っているほうが、絶対可愛いもん! 愛はね、論理よりも、抱きしめるほうが、強いんだよ!」
その日の午後、テラスは、シャルロッテの愛の哲学によって、「愛は、意地の張り合いよりも、抱擁の温かさで簡単に調和する」という、温かい真理に満たされたのだった。




