第百九十四話「薔薇の塔の優しい儀式と、おやすみの『愛の点呼』」
その日の夜、薔薇の塔のシャルロッテの居室は、静かで、優しい闇に包まれ始めていた。エマが、暖炉の火を小さくし、天蓋のカーテンをそっと閉じる。
シャルロッテは、パジャマに着替え、モフモフを抱き、ベッドの上で座っていた。彼女の目には、部屋の中の全ての物が、単なる道具ではなく、自分を見守る親愛なる友人として映っていた。
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眠りにつく前の、最も大切な時間。
シャルロッテは、部屋の全ての物に対して、いつもの「おやすみの儀式」を始めた。
彼女は、まず、部屋の隅の巨大なクローゼットに向かって、そっと手を振った。
「おやすみ、ライラック色のドレスさん。今日は、私を一番可愛くしてくれて、ありがとう」
次に、窓辺の読書コーナーに置かれた、クッションの山に向かって微笑んだ。
「おやすみ、ふわふわのクッションさん。明日も、私を優しく包んでね」
彼女の挨拶は、単なる言葉ではない。彼女は、光属性魔法を応用し、挨拶した物の一つ一つに、ごく微細な、温かい感謝の光を、そっと灯した。
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その儀式は、部屋の小さな物たちへと続いた。
ぬいぐるみコレクションの棚に向かっては、「おやすみ、私の可愛いお友達。今日は、私の夢の中でも、一緒に遊んでね」
小さな魔法暖炉に向かっては、「おやすみ、ちっちゃな太陽さん。寒い夜も、私を温めてくれてありがとう」
彼女の魔法は、部屋の隅々まで行き渡り、全ての物が、穏やかな愛の光を放ち始めた。部屋全体が、巨大な、愛に満ちた揺りかごのようになった。
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エマは、その光景を、静かに見守っていた。彼女の目には、シャルロッテが、「おやすみの愛の点呼」を行うことで、部屋の全ての物に「存在の安心感」を与えているのが見えた。
最後に、シャルロッテは、ベッドに潜り込んだ。
彼女は、モフモフを抱き、そっと目を閉じた。
そして、部屋全体に、最後の、最も大きな愛の光を送った。
「おやすみ、世界。明日も、可愛いことがいっぱいありますように」
その瞬間、部屋の全ての光が、一斉に、安堵の溜息のように消え、シャルロッテは、愛に包まれた深い眠りへと移行した。
エマは、静かに部屋を出た。彼女は、王女の日常の儀式が、「すべての存在を愛し、肯定する」という、最も純粋な哲学であることを知っていた。薔薇の塔の静かな夜は、今日も、愛という名の確かな光に守られていた。




