第百八十八話「ティーパーティーの種の災難と、王女の『お菓子の森』」
その日の午後、シャルロッテ姫殿下は、テラスで開かれたティーパーティーで、美味しい苺の種を食べていた。種は、ごく小さく、甘い。それは種だけ食べても美味しい特殊な種類の苺だった。
「わあ、美味しい! この種、もっともっと増えたら、可愛いのに!」
シャルロッテは、「可愛いものを増やした」という、純粋な願望を抱いた。
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夜、シャルロッテが眠りについた後、その「種の増殖」という、無邪気な願望が、規格外の魔力によって、不条理な現実へと変わった。
翌朝、王城は、未曾有の事態に直面した。
王城の庭園全体に、一夜にして、巨大な『お菓子の森』が出現していたのだ。その森は、苺の種から発芽したもので、幹はプレッツェル、葉はミントキャンディ、そして果実は、巨大な苺のショートケーキでできていた。
それは、シャルロッテの「可愛いものが増えてほしい」という、純粋な欲望が、制御不能な現実へと変貌した、不条理でユーモラスな光景だった。
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人々は、最初は歓喜した。
曰く「姫殿下の魔法の贈り物だ!」と。
しかし、すぐにその森は、現実の生活を脅かし始めた。
食料問題: お菓子でできた森は、誰もが食べ放題。人々は、主食であるパンや野菜を食べなくなり、城の食糧配給システムが崩壊した。
衛生問題: 甘い森には、虫が集まり、城の衛生環境が急激に悪化。
移動問題: お菓子の森は、城下町への主要な道路を塞ぎ、交通が麻痺した。
「シャルの願いは、究極の幸福をもたらしたが、同時に、生活の基盤を崩壊させた!」と、アルベルト王子は、頭を抱えた。
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マリアンネ王女の解析によると、この森は、シャルロッテ姫殿下の「純粋な幸福感」という魔力によって、成長を続けており、物理的な伐採では、すぐに再生してしまうという。
「森を止めるには、シャルロッテ姫殿下の心の中の『種の願い』を、『飽き』という、最も人間的な感情で満たすしかない!」
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シャルロッテは、自分の願いが、城下町全体に迷惑をかけていることを知り、心を痛めた。
「ごめんなさい……。わたしの『可愛い』が、みんなを困らせてるんだね」
シャルロッテは今まで見たことがないほど落ち込んでいた。
シャルロッテは、モフモフを抱き、その森の中心へと向かった。そして、最も不満に思っている農民や、交通麻痺で困っている商人の顔を、一人一人思い浮かべた。
シャルロッテは、「みんなを幸せにするための森」が、「みんなを困らせる森」になってしまったという、不条理な現実に直面し、心の底から『こんな嫌な森、もう飽き飽き!』という感情を抱いた。
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その瞬間、シャルロッテの「飽き」という、純粋な諦念の魔力が、森全体に流れた。
森は、成長を止め、そして、一夜にして、崩壊した。プレッツェルの幹は崩れ、ショートケーキの果実は、土に戻った。
すべてが、一夜にして元通りになった。
王族たちは、安堵の息をついた。
シャルロッテは、モフモフを抱き、テラスで、何もなくなった空っぽの風景を眺めていた。
「ね、モフモフ。何もないって、一番平和で、美味しいね」
王女の純粋な願いは、不条理な現実を生み出したが、最終的に「過剰な所有からの解放」という、静かな教訓をもたらしたのだった。




