第百五十四話「窓際の椅子と、車輪が繋ぐ『遠い日の約束』」
その日の午後、王城の誰も使わない、古い療養棟の窓際に、一台の車輪のついた椅子が置かれていた。その椅子は、長年使われず、窓の外の庭園の光景を、ただ静かに見つめているだけだった。
王城の誰もが、その椅子を、「過去の悲しい記憶の象徴」として、避けていた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、その椅子に近づいた。彼女は、椅子が放つ、「外の世界へ行きたい」という、切実な願いの魔力を感じ取った。
「ねえ、モフモフ。この椅子さん、お外で遊びたいんだって」
そこに、フリードリヒ王子がやってきた。彼は、その椅子が、過去に、戦争で負傷した騎士が使っていた椅子であることを知っていた。
「シャル。その椅子には、触らないほうがいい。暗い記憶が詰まっている」
「ううん、違うよ、兄様!」
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シャルロッテは、その椅子の持つ「悲しい記憶」を否定しなかった。しかし、彼女は、その椅子の「過去の悲しみ」よりも、「今、外の世界へ行きたいという、純粋な希望」に焦点を当てた。
シャルロッテは、風属性魔法を応用し、椅子の車輪の一つ一つに、「軽やかな回転」という、生命の祝福を与えた。
そして、彼女は、椅子に座り、フリードリヒに、「外の世界へ連れて行って」と、無邪気にねだった。
「ね、兄様。わたしを、秘密の場所へ連れて行って!」
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フリードリヒは、妹の無邪気な願いに心を動かされた。彼は、妹を乗せたその椅子を、優しく押し、庭園の小道へと向かった。
二人が庭園を巡る間、シャルロッテは、椅子に座りながら、大声で笑い、花や木々に話しかけた。その笑い声と、彼女の純粋な「今」への喜びが、椅子の持つ「過去の悲しみ」を、静かに浄化していった。
そして、シャルロッテは、椅子から降りると、その椅子に、光属性魔法で、色とりどりの、小さな花の刺繍を、無数に施した。
「ね、これでいいの。この椅子は、もう悲しい記憶じゃなくて、私と、兄様と、お花の、楽しい思い出になったよ!」
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その光景を見ていた、王城の元老たちは、涙ぐんだ。
「あの方は、過去の悲しみを、否定せずに、愛という形で、未来へと繋いだ」
その日以来、その椅子は、療養棟に戻されることなく、庭園の窓際に置かれた。椅子は、過去の悲しみを忘れさせず、しかし、「悲しみの上にも、愛と希望の花は咲く」という、温かい真実を、静かに語り続けた。
シャルロッテの純粋な愛と好奇心は、過去の悲しみという重い事実に、「希望の光」という、最も美しい彩りを与えたのだった。




