第百五十三話「泉のほとりの白鳥と、王女の『質素な願い』」
その日の午後、シャルロッテは、王城の庭園にある「きらめく、慰めの湖」(※第六十八話を見てね★)のほとりを歩いていた。彼女は、装飾を排した、ごくシンプルな、白いワンピースに身を包んでいた。その質素さが、かえって彼女の銀色の髪と、大きな瞳の無垢な美しさを際立たせていた。
湖には、一羽の優雅な白鳥が、静かに水面を滑っていた。その姿は、完璧な静寂と優雅さの象徴だった。
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シャルロッテは、湖のほとりで、一人の老いた使用人が、古いパンの耳を、白鳥に与えようとしているのを見つけた。使用人は、自分の僅かな昼食を、白鳥に分け与えようとしていたのだ。
しかし、その白鳥は、王族の餌付け以外は受け付けないという、高慢な魔力的な結界を張られており、使用人のパンには、近づこうとしなかった。
老使用人は、その穏やかな拒絶に、静かに肩を落とした。彼の行為は、自己満足ではなく、「誰かに、優しさを届けたい」という、純粋な愛の衝動だった。
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シャルロッテは、その光景を見て、心を痛めた。彼女は、白鳥の「非情な結界」と、使用人の「無私の愛」のコントラストに、この世界の抱える矛盾を見た。
シャルロッテは、白鳥に向かって、優雅に、しかし強い意志を持って語りかけた。
「ね、白鳥さん。あなたが拒否しているのは、単なるパンじゃないよ。世界で一番、温かい心だよ」
そして、シャルロッテは、その老使用人の手を優しく握った。
彼女は、光属性と共感魔法を応用し、使用人の手に残る「誰かのために分け与えたい」という、無私の愛の魔力を、白鳥に向かって、波紋のように送り出した。
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白鳥は、その魔力の波動に、一瞬で、高慢な結界を解いた。白鳥は、パンの豪華さではなく、そのパンに込められた「愛の純粋さ」を、初めて認識したのだ。
白鳥は、水面を滑り、使用人の手元に近づき、静かに頭を下げた。そして、老使用人の手のひらから、パンの耳を、優雅に、しかし素朴に受け取った。
その瞬間、老使用人の顔に、最高の喜びと、自己肯定の光が灯った。
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その光景を見ていた、アルベルト王子は、妹の元へやってきた。
「シャル。君は、王族の権威ではなく、愛と慈悲で、白鳥の心を動かした」
シャルロッテは、にっこり微笑んだ。
「ね、兄様。本当に美しいものって、豪華なドレスとかじゃなくて、誰かの役に立ちたいって思う、優しい心なんだよ!」
シャルロッテの優雅さと無私の愛の哲学は、この日の王城の湖のほとりで、「真の優雅さとは、愛と慈悲にある」という、普遍的な真理を証明したのだった。




