第百五十一話「地下の石畳と、王女の『仁義の魔法』」
その日の午後、王城の誰も使わない地下通路で、ある小さな問題が起こっていた。古くから城の修繕を請け負ってきた、腕は確かだが不器用な老職人が、役所の不手際で、工事の報酬を正当に受け取れずにいたのだ。
老職人は、法廷に訴える気力もなく、ただ黙って、自分で修繕した地下通路の石畳を、「理不尽な世の中だ……」と、寂しそうに撫でていた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、地下通路を歩いていた。彼女は、老職人の持つ、「無言の怒りと、諦め」という、深く重い感情の波動を感知した。
「ねえ、モフモフ。この通路、心が寒くなって、全然温かくないよ」
シャルロッテは、職人に話しかけた。
「おじいさん。あなた、正当な報酬をもらってないでしょう?」
老職人は、王女に秘密を知られていることに驚きつつも、静かに頷いた。彼は、王族に面倒をかけるつもりはなかった。
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シャルロッテは、職人の「無言の義理」と「正義への怒り」を尊重した。彼女は、王女の権威を使うのではなく、まずは「職人の誇り」を回復させる方法を選んだ。
彼女は、職人の隣に座り、光属性魔法を応用した。彼女の魔力は、職人が修繕した石畳の、継ぎ目一つ一つに、ごく微細な、しかし揺るぎない、金色の光を注入した。
「おじいさん。この石畳はね、おじいさんの誇りだよ。この誇りはね、誰にも盗むことができない、おじいさんの最高の宝物なの」
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そして、シャルロッテは、翌朝、王城の予算会議の場に、泥だらけの職人を招き入れた。
「パパ、兄様たち。このおじいさんは、王城の地下通路を、命がけで直してくれた、最高の職人だよ。この人が、正当な報酬をもらえないなんて、王族として、国として、一番恥ずかしいことだよ!」
シャルロッテは、王族の権威を、「最も弱い者の正義」のために、豪快に行使した。
アルベルト王子は、妹の行動の「筋の通った怒り」と、その裏にある純粋な愛に、心を打たれた。彼は、即座に、役所の不手際を正し、職人に正当な報酬の三倍の金額を支払うことを決断した。
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老職人は、正当な報酬と、王女からの過剰なまでの名誉回復に、涙を流した。
「姫殿下……私は、殿下から、最高の仁義をいただきました」
シャルロッテは、職人の手を握った。
「ね、おじいさん。愛はね、誰にも曲げられない、一番太い筋を通すのが、一番可愛いんだよ!」
老職人は、王女の「仁義の魔法」によって、誇りを取り戻した。王城の地下通路は、その日以来、「正義と愛の温かい光」に満ちた場所となったのだった。




