第百二十四話「雨上がりの庭園と、涙の跡の『虹のしずく』」
その日の午後、王城の庭園は、激しい夕立が去った後の、湿った、淡い光に満たされていた。空はまだ厚い雲に覆われているが、光が雲の隙間から差し込み、庭園全体が、水彩画のように滲んだ、透明な色彩を帯びていた。
シャルロッテは、長靴を履き、モフモフを抱いて、庭園の小道を歩いていた。彼女の銀色の巻き髪には、雨のしずくが残り、それが光を反射して、小さくきらめいていた。
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シャルロッテの視線は、庭園のベンチに座り込んでいる、一人の小さな平民の女の子に注がれた。女の子は、雨に濡れたまま、膝を抱えて、静かに泣いていた。彼女の顔には、涙の筋が残り、その表情は、言葉にできない、幼い悲しみに満ちていた。
その子の悲しみは、喧嘩でも、怪我でもなく、単に「雨が降って、楽しみにしていた花摘みができなくなった」という、幼い心にとっての、世界の崩壊のような、純粋な失望だった。
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シャルロッテは、その女の子の隣に、そっと座った。彼女は、女の子に、言葉をかけることはしなかった。言葉は、この純粋な悲しみを、かえって濁らせてしまう気がしたからだ。
シャルロッテは、自分の指先に、光属性と水属性の魔法を融合させた。その魔法は、「悲しみ」という、心の水分を、美しく昇華させるための、優しい試みだった。
彼女は、女の子の頬に残り、乾きかけていた涙の筋を、ごく優しく撫でた。
その瞬間、乾きかけていた涙の筋は、シャルロッテの魔法によって、微細な、七色の光を放つ「虹のしずく」へと変わった。
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女の子は、自分の頬が温かい光に包まれたことに気づき、顔を上げた。彼女の目の前の世界は、涙で滲んでいたが、頬の「虹のしずく」が、その滲んだ世界に、希望と、美しさの光を与えていた。
シャルロッテは、女の子の手に、雨上がりの庭園で拾った、光を浴びた小さなカタツムリの殻をそっと置いた。
「ね、これ、可愛いでしょう? 雨が降ったから、私たちはこの子に会えたんだよ」
女の子は、シャルロッテの純粋な愛の行為によって、自分の悲しみが否定されることなく、「雨」という出来事が、新しい「可愛い出会い」へと繋がったことを悟った。
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女の子の悲しみは、笑顔に変わった。その笑顔は、雨上がりの空のように、透明で、清々しかった。
シャルロッテは、モフモフを抱き、庭園を歩いた。彼女の足跡が、水たまりに残るたびに、水たまりは、虹色の、優しく、淡い光を放った。
シャルロッテの純粋な愛と感受性は、日常のささやかな悲しみを、ノスタルジックで、美しい、希望の光へと変貌させたのだった。




