第百十二話「無限の銀色の空間と、心に描く『愛の数学』」
その日の午後、マリアンネ王女は、王城の魔法研究室で、極めて困難な研究課題に挑んでいた。それは、「魔力の持つ、空間的な境界の有無」の探求だ。マリアンネは、魔力は有限であり、必ずその広がりには限界があると信じていた。
「魔力も、物質である以上、無限の空間を満たすことはできない。必ず、その寂しい境界線が存在するはずだ」
マリアンネは、自らの知性で、その論理的な境界線を見つけようと、孤独な探求を続けていた。
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シャルロッテは、モフモフを抱き、研究室にやってきた。マリアンネの周りの空気は、「有限性」という、冷たい論理の壁で囲まれているように感じられた。
「ねえ、お姉様。そんなに難しいことを考えてると、頭がゆで卵になっちゃうよ?」
マリアンネは、妹の言葉に耳を貸さず、目の前のグラフを指さした。
「シャル。人間の知性には限界がある。この魔力の波長が、どこまで届くか、私はその論理的な限界を見つけたいの」
「うーん……」
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シャルロッテは、マリアンネの描いたグラフの余白に、そっと指を触れた。
彼女は、光属性と共感魔法を応用し、自分の魔力の波長を、部屋全体に静かに、そして均質に広げ始めた。それは、「愛という感情」の持つ、空間的な広がりを証明するための、純粋な試みだった。
「ね、お姉様。わたしの魔力はね、わたしの『大好き』っていう気持ちだよ。大好きっていう気持ちにはね、終わりがないの。だから、どこまでも届くんだよ」
シャルロッテの魔力は、部屋の壁、天井、床を透過し、温かい光となって、王城全体を包み込み始めた。
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マリアンネは、魔法解析装置の表示を見て、驚愕した。装置の波形は、どこまでも伸び、「魔力の強度は、空間的な距離によって減衰しない」という、信じがたい結果を示していた。
「まさか……。論理的には、ありえないわ! 私の知性が、この単純な事実を否定している!」
シャルロッテは、その論理的な限界に、優しい結論を与えた。
「お姉様。論理は、終わりがあるけど、心はね、終わりがないの。だから、愛の数学はね、無限大なんだよ!」
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その日の夜、マリアンネは、研究ノートの全てのページを閉じ、新しいノートの最初のページに、こう書き記した。
『魔力の真理は、論理的な境界を持たない。それは、純粋な「愛」という、無限の精神によって証明される』
マリアンネは、妹の愛の力に、論理の壁を越えた。彼女は、王城の図書館で、古書を読みながら、ふと、「論理の限界を知ることこそ、真の知性だ」という、パスカル的な真理を悟った。
シャルロッテは、モフモフを抱き、にっこり微笑んだ。
「えへへ。無限大の愛の方が、難しいグラフより、ずっと可愛いもん!」
シャルロッテの純粋な愛の哲学は、王城の学問の世界に、「心」という、最も高貴な法則をもたらしたのだった。




