第百八話「王女の『虹色の石ころ』と、城下町の物々交換」
その日の午後、シャルロッテは、モフモフと共に城下町を散策していた。彼女が手に持っていたのは、庭園で拾った、何の変哲もない、ただの丸い石ころだった。
しかし、シャルロッテは、その石ころに光属性魔法で、虹色の、温かい光を込めた。それは、石ころを宝石に変える魔法ではなく、ただ、この子は、ここにいるだけで可愛いという、純粋な愛の魔法だった。
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シャルロッテが歩いていると、一人の若い娘が、道端で泣いていた。娘は、大切なレースのハンカチを風に飛ばされ、教会の尖塔の装飾に引っ掛けてしまったのだ。
「ね、お姉さん。泣かないで」
シャルロッテは、風属性魔法で、ハンカチを傷つけないよう、ごく優しく、しかし確実に、娘の元へ届けた。娘は、ハンカチが戻ってきたことに大喜びし、深々と頭を下げた。
「姫殿下! ありがとうございます! お礼をさせてください!」
シャルロッテは、「いいのよ、可愛いから」と辞退しようとしたが、娘は譲らなかった。
「姫殿下のその虹色の石ころ、とても温かい光を放っています。その光は、私の心に希望をくれました。私には、お礼をする誇りが必要なのです。どうか、この刺繍入りのリボンと交換してください。私が心を込めて作った、私の一番大切なものです」
シャルロッテは、娘の「無償の奉仕に対する、自らの価値を捧げたい」という純粋な誇りを理解した。彼女にとって、石ころの価値は、誰かの笑顔と、その誇りという最高の価値に変わるのだ。
シャルロッテは、虹色の石ころと、刺繍入りのリボンを交換した。
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次に、シャルロッテは、果物屋のマルタおばさんの前を通りかかった。マルタおばさんは、孫娘の誕生日に贈る髪飾りを探していたが、なかなか良いものが見つからず困っていた。
シャルロッテは、刺繍入りのリボンを差し出した。
「マルタさん、これ、可愛いよ! このリボン、勇気の印なんだよ!」
マルタおばさんは、そのリボンの美しさと、シャルロッテの言葉に感動し、お礼に、最高級の果物が詰まった、大きな籠をシャルロッテに渡した。シャルロッテは、リボンの価値が、果物という「みんなで楽しめる美味しさ」の価値に変わったことに、満足した。
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シャルロッテが、果物の籠を持って歩いていると、城の門の前で、隣国から来た、疲れ果てた旅の商人に出会った。商人は、長旅で食料が尽き、飢えと疲労で倒れかけていた。
シャルロッテは、迷うことなく、果物の籠を商人に差し出した。
「お兄さん、これ、美味しいよ。みんなで食べてね!」
商人は、その果物で飢えをしのぎ、心からシャルロッテに感謝した。
「姫殿下、私は、この御恩に報いるため、私が故郷から持ってきた、最も価値のあるものを、あなたに捧げます」
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商人が差し出したのは、小さな、古びた木箱だった。
箱の中には、一枚の、色褪せた楽譜が入っていた。
「これは、我が国の伝説の音楽家が残した、『失われた愛の歌』の楽譜です。しかし、誰も、この楽譜を完全に演奏することはできません。この楽譜を理解するには、愛の純粋な心が必要なのです」
シャルロッテは、その楽譜を受け取った。彼女は、楽譜に、「愛する人に、届かなかった想い」という、切なく、しかし美しい感情が込められているのを感知した。
その日の夜、シャルロッテは、王城の音楽室で、その楽譜をピアノで演奏した。彼女の虹色の魔力は、楽譜に込められた感情を完璧に解き放ち、音楽室は、誰も聴いたことのない、究極の愛の旋律で満たされた。
ルードヴィヒ国王とエレオノーラ王妃は、その音楽に、涙を流した。
「シャル。これは、金銀財宝にも代えがたい、王国の、いや、世界の宝だ」
シャルロッテの「虹色の石ころ」から始まった物語は、物々交換を経て、最終的に、「失われた愛の歌」という、最も高貴で、美しい価値へと昇華したのでした。




