第百七話「城下町の衣料品店と、王女の『みんなの可愛い』論」
その日の午後、シャルロッテは、エマと共に城下町で最も賑わっている大型の衣料品店を訪れていた。そこは、王都の高級仕立て屋とは違い、身分や財産に関係なく、誰もが手の届く価格で、流行の服や実用的な衣料品が手に入る店だ。
店内は、色とりどりの服が所狭しと並べられ、平民の女性や、若い娘たちで活気に満ちていた。
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シャルロッテは、その店の「ごちゃごちゃした楽しさ」に、魅了された。
「わあ、エマ! ここ、まるで可愛いものばかりの宝石箱だよ!」
彼女は、高価なレースのドレスよりも、そこで売られている、シンプルな綿素材の、実用的なワンピースに興味を示した。
「ねえ、エマ。なんで、このお店の服は、全部可愛いんだろうね?」
エマは、「それは、流行を抑えつつも、誰もが買える価格だからでしょう」と、論理的に答えた。
「ううん、違うよ!」
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シャルロッテは、店内の人々を観察した。彼女の目には、服の値段ではなく、その服を選んでいる人々の「喜びの光」が映った。
年老いた女性が、暖かそうなショールを選んでいるときの、小さな満足の光。若い娘が、流行の柄のスカートを試着しているときの、自分への肯定の光。
シャルロッテは、その光が、王城の豪華な舞踏会で、イザベラ王女が放つ光と、全く同じ強さで輝いていることに気づいた。
「わかった! このお店の服はね、『誰もが、自分の好きな服を選べる自由』が詰まっているから、可愛いんだよ!」
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その時、一人の痩せた平民の女性が、地味な服の山の前で立ち止まり、悲しそうにしていた。彼女は、「自分には、派手な流行の服は似合わない」と、自己肯定感の低さから、最も目立たない服を選ぼうとしていた。
シャルロッテは、モフモフを抱き、その女性の隣に立った。
「ねえ、お姉さん。そっちの服は、全然可愛くないよ」
女性は、王女に話しかけられ、恐縮した。
シャルロッテは、彼女の手を取り、店内で一番鮮やかなミントグリーンの、シンプルなワンピースの前に連れて行った。
「服はね、自分を隠すためのものじゃないよ。自分を一番、可愛く照らすためのものなの!」
そして、シャルロッテは、光属性魔法で、そのミントグリーンのワンピースに、七色の「勇気の光」を、ごく微細に纏わせた。
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女性は、勇気を出してそのワンピースを試着した。鏡に映った自分は、地味な服を着ていたときとは違い、驚くほど明るく、生き生きとして見えた。
「まあ……私にも、こんな色が合うなんて……」
シャルロッテは、にっこり微笑んだ。
「そうだよ! 可愛いはね、値段の高さじゃなくて、自分をどれだけ好きになれるか、だよ!」
シャルロッテの「可愛い」の哲学は、身分や財産に関係なく、誰もが、自分のファッションで、自己を肯定し、輝けるという、普遍的な真理を、城下町の衣料品店にもたらしたのだった。




