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35 彪雅

裏夢は今、最も危ない状況にいる。


どうしても裏夢を守らなくては、そう思った俺はいつの間にか行動に出ていた。


俺は裏夢を腕に抱え、外に出ようとした。


俺の部屋にいれば少なくても少しは安全に生活できるだろう、そう思ったのだ。


だが、違った。


リアムは拒絶したのだ。


「どこにつれていくの?」


その黒い瞳は不安げに揺らいでいた。


空気が揺らいでいるのが分かった。


俺は息を呑む。


握った手のひらがの中で、魔力が暴れている。


その瞬間、部屋から大量の水が溢れて出た。


ものすごい水圧に俺は押しつぶされそうになる。


そして、数秒もしないうちに俺は屋敷の外まで飛ばされた。




この事件により俺は一か月も病院送りになった。



ちなみに、病院で入院していた俺のところにリアムが一度会いに来た。


面会は叶わなかったから、声だけ聞くこととなった。


「ごめんなさい。けがをしたんでしょ?」


裏夢は寂しそうに、それでいて悲しそうな声で謝ってくれた。


「いや、大丈夫だ。」


「でも……ごめんなさい。」

その瞳はゆらゆらと揺れていて、今にも涙が溢れそうだった。


可愛い。そう思った。



思えばあの日、俺はリアムのことが好きになったのだろう。





裏夢を幸せにしたい。


毎日そんなことを思うようになった。


だが、おそらくそれは叶わない。


俺が悪江家の当主となれば、間違えなく俺の母であるイニシア様は裏夢を殺す。


おそらく、間違えなく。


リアムは前当主の息子だ。


前当主は影響力が強く、このままだと俺が当主になる障害なのだ。


イニシア様は裏夢のことを邪魔に思っている。



このままだと悪夢は殺されてしまう。


だから俺は、妹を守るために行動に移した。




妹を当主にすればいい。



俺は父上と取引をした。


今思い出せば、それが最大の間違えだったのだろう。


しばらくして再び会った悪夢は悪江家当主に相応しい虹色の瞳をしていた。


しかし、しばらくして悪夢は一人で、どこか遠くへ行ってしまった。


8年もの間、私たちは会うことがなかった。



ーーー




なぜ悪江家のことを嫌っているリアムが今になって急に帰ってきたのか、最初は分からなかった。

でも、少しだけ分かった気がする。


きっとリアムは、彼らのことを大切に思っているのだ。


「友達」と話す時のリアムは楽しそうに笑っている。

こんな笑顔、今までで一度も見たことがなかった。


なんでリアムが試験を自分から関わっているのか、それもきっと「友達」のためなのだろう。


さっきの説明ではあえて言わなかったが、この試験では通常、落ちたものは全員悪江家の地下に閉じ込められることになる。

そして、そうなる人間は予め決まっている。


試験を受けているというあの二人は、かなり強い能力者に見える。

きっと悪江家が取り込もうとしていただろう。


なんとなく、気づいた気がする。


リアムは彼らを必死に守ろうとしている。


リアムの行動はすべて彼らのためなのだ。


俺は10年前の、リアムの感情のない瞳を思い出す。

まるで無感情で、「自分」を捨てているようだった。



それが今、リアムの瞳は輝いている。


それが嬉しいのと同時に、俺は少し寂しさも感じていた。



リアムのことを大切に思っていた。


ずっとリアムと一緒にいられればいいのに、とも思っていた。


けれど、リアムにはもう大切なものがあるのだろう。


リアムの瞳がモニターの画面へと向かう。



その虹色の瞳に、もう俺の姿は写っていない。


それでもやはりリアムは美しかった。

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