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なでなで

「じゃあ金緑さんお願いいたします」


 そういって九条院さんは目をつぶって唇を尖らせる。

 目をつぶるとまるで作り物のように整った九条院さんの顔の麗美さが見て取れる。

 そんな美人さんにこんなことをされると、俺だってドキドキしてしまう。

 それでも要求を聞かないとこいつら許してくれないからな。

 俺はそのまま手を乗せた。

 次に左右に手をスライドさせる。


 「なんだかうれしいです! 大事にされているのがダイレクトに伝わってきます! これいいです!」


 「確かに前私がしてもらっときも何故か幸せな気分になったけ」


 「まる……で……家族……に……褒めら……れて……いる……ような……感じ……でした」


 『まぁそれぐらい特別な関係だからな俺と金緑』


 「ゲロ! 糞虫の手はたらしだものね!」


 『そうだよね。たったあれだけの事で幸せになれるって流石私が大好きな浅井君だよ』


 「いいねえ! 頭をなでなでなんて十数年ぶりだけど、九条院さんのとろんとした顔を見ていると気持ちがよさそうだね!」


 「金緑さんもう少し強めでお願いします」


 「了解」


 九条院さんの要望に応えるが、掌の力は向いて腕にかける力を少し強める。

 男の体は固いからな当然手も女性に比べれば固い。

 いくら頭を撫でて欲しいと言われても力いっぱい撫でたら、いい気分はしないだろう。

 キスの時感じたが柔らかいモノに触っているのは気持ちいい。

 だからこそ掌ができるだけ柔らかくなるように力を抜いたのだ。

 力を入れるコツは前の一件で大よそは把握済み。

 その成果か恍惚とした声にならない心の声が伝わってくる。

 普通に優しく頭を撫でているのだけなんだけどな……。

 九条院さんが木下(ウッドフッシュ)著の漫画を開いていた時はどんな要求をすると思えばこれか、なんでも憧れていたらしいがご満悦なようで何よりだ。


 「そろそろ交代よ! 九条院さん!」


 「もう少しお願いします。金緑さんの手が凄い熱くて気持ちよくて、それで頭がほんわりしてお風呂に入っているように気持ちいいです」


 「本当……です……か?」


 『砂糖のように甘い唾液と言い手をいいこいつの体は女を魅了する魔法でもかかってるのか? さすが金緑天性の女たらし』


 「むふふふ、それがほんとならこれはベットの上でやってもらえればきっと最高だろうね! 次は僕でいいかい?」


 「次は私屏風ちゃんね!」


 「いえ……私……です」


 『そんなこと聞いて俺は我慢できる女じゃないぜ! つーわけで次は俺だ!』


 「ゲロ! 次は糞虫の飼育権を持つ私よ!」


 『ずるい皆次は私がいい!』


 「分かった分かった全員撫でてやるから――」

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