挨拶にいこう
「花さんの両親とは結構あってるじゃないですか」
「むうそれは知人としてだよね! 今度ははもっと深い中になるかもしれないからね! 当然あってくれるよね! お父さんもいい人いないか言ってくるんだよ」
「別に会うだけなら構いませんけど。後で自分が選ばれなかったとしても後悔しないでくれよ。それが皆の親に挨拶する条件てことでよろしく」
「大丈夫……です……そのため……に……私達……は……協定……を……結んだ……のです」
「そういう事! だから安心して私達といちゃこらしてればいいのよ!」
「ゲロ! そういう事よ!」
協定って一体なんなんだ?
疑問を積もるが、聞いても教えてくれなさそうだし、仲のいい女の子を無理に詮索するってのは野暮ってもんだ。
「じゃあ魚と屏風は再来週として、花さんと九条院さんと豊穣の親御さんとはいつ会えばいい?」
◇
「じゃあ再来週ね忘れないでよ!」
「再来週……お願い……します」
木下と屏風に手振り別れると時間はもう5時過ぎ。
何だかんだで結構時間がかかった。
そのまま家路につくかと思いきやしかし目的地は自宅ではない豊穣の自宅である。
あれから豊穣が家に電話するとたまたまおじさんがいて今日でいいという話になりこの流れとなった。
花さんと九条院さんは要相談だとのこと。
そういえば豊穣のおじさんとは会うのは久しぶりだ。
そして気付けば豊穣宅前。
「ゲロ! どうしたの糞虫!」
『どうしたの浅井君?』
豊穣が俺の顔を覗き込んでくるいつもと変わらぬ無表情だが、心の声のおかげか不思議そうにしているように見える。
「いやな、お前とこういう仲になるなんて一年前には欠片も考えなかったからな。そういう意味であいさつとなると流石に緊張してな……」
「ゲロ! そんなこと気にしてるのペット同伴はよくある事でしょ!」
『浅井君だったらもう家族みたいなものだし……』
その言葉でポッと頬を染める豊穣。
中々のギャップであるいったいいつデレるのだろうか。
毒のない普通の女の子としての可愛い豊穣を見たいもだが。
じっくりいこう、これでも随分ましになった物だしな。
「ゲロ! じゃあちょっと待ちなさい準備がるから!」
準備? すでにできてるんじゃないのか。
「分かった待ってる」
そう答えると豊穣は小走りで家に中に入っていた。
次に何か聞こえてくる多分おじさんとおばさんの声だと思う。
五分ほど待っているとガチャリと扉が空いた。
「入りなさい糞虫!」
「てかお前……」
「ゲロ! なによ!」
『えへへへへへどうかな。私の希望だよ』
その姿に出すべき言葉を迷う。
豊穣は制服の上にエプロンを纏っていた。
だがそんなものは見慣れている。
問題はその胸に描かれた言葉だ。
「どうしたのよ! 入りなさい!」
『浅井君どう答えてくれえるかな? えへへへ』
豊穣のエプロンの胸には【貴方の愛妻希望】と可愛らしい字でプリントされていた。




