君しかいない
「いやなんでもない」
「ゲロ!」
『えーーそれだけ折角頑張ったのに~』
何か言っておくべきか。
無難な所でいいだろう。
「エプロン似合ってるぞ。意外と豊穣はいい嫁になりそうだな」
「ゲロ! お世辞はいいわよ入りなさい!」
『えへへへそうかな。なれればいいな浅井君のお嫁さんに』
全くこれが現実の口で言えていれば凄い可愛いだろうに、今でも心の声が聞こえるから十分可愛らしいけど。
そして豊穣に引きつられ、靴を脱いで玄関先に用意された可愛らしい猫のスリッパを履いて豊穣宅へ。
前来た時と変わらない海さんの趣味の魚の小物やら絵やらが所々に飾ってある。
そのままリビングの戸を豊穣が開けて俺が入ると。
パンと小さな炸裂音が響いた。
「おめでとう灯!」
海さんが薄く煙を立てるクラッカー片手に歓喜の籠った声で豊穣へ声をかける。
流石に長い付き合いだからな声の質で感情は読みとれる。
ちなみに今の海さんの声は昔宝くじの高額当選したときに声質と同じだ。
小学校低学年の時豊穣の家に遊びにいた時そんなことがあったのだ。
どうやらそれと同等らしい。
「よかったわね! 灯! 金緑君がそういう目でやっとあなたを見てくれたってことね! 今夜はご馳走よ! 精力がつく料理沢山用意したから今晩から励みなさい!」
「ちょっと母さん! ゲロ!」
『そういうのはちゃんと私が浅井君に好きっていえてからで、でもそういうのもいいな浅井君の子供だったら今すぐにでも――』
「ほら母さん。灯が困ってるから、金緑君久しぶりだね。こうして会うのは、今回は家の娘をお嫁さん候補として見てくれるようになったと取っていいんだよね?」
豊穣の父親豊穣陸さんは見た目道理の渋い声でそう聞いてきた。
何というべきか。
こういう時に嘘をつくのは無しだ。
そう考えると自然と口が動いた。
「はい、そうです。でも皆が皆魅力的でまだだれを選べばいいか分かりません」
「大丈夫よ皆愛せば! 私はハレームでも娘が幸せならそれでいいのよ! それに協定とかいうの結んでるんでしょ! それで私はオッケーよ! 家の娘を受け止められる男の子は金緑君だけだから」
「僕も同意見さ! 世間の常識より娘の幸せの方が大事だからね! 本当に灯は家で君の話をするとき凄い嬉しそうに話すんだ。今着ているエプロンの文字もそうだし、だから金緑君も家の娘をできるだけ愛しほしい娘を頼んだよ!」
相変わらずの自由人だな二人共。
「分かりました。こいつの相手は慣れているので」
「もう、金緑君たら鈍感ね! 両親公認で子孫繁栄に励みなさいて言ってるのに!」
とんでもない事を言い出す海さん。
「そういうのは思いが通じあったらじゃないんですか……」
「何言ってるのよ! 娘を嫁候補に見るって言ったらそういう事よ! 子孫繁栄と娘の幸せの為なら綺麗ごとなんてナッシングよ!」
「ちょっと母さんはっきり言い過ぎだよ。灯がほら」
その言葉で豊穣を見た。
豊穣は顔真っ赤にしている。
すると意識を向けたせいか心の声が聞こえてきた。
『あわわわそんな急に、子作りなんてまだ私には……でもでも浅井君との子供、赤ちゃん可愛いんだろうな。毎日はエプロンで浅井君を出迎えて、行ってきますのチューお休みのチューあわわわわわわわわわ』
豊穣はオーバーヒート寸前だ。
色々と豊穣が送ってくるがすでに子供が出来た妄想に入っていた。
こいつよくわからんな。
毒を年中吐くほうが素直になるよりハードル高い気がするのだが。
俺の周りの女子は癖が強い。
まぁそれはそれで豊穣を含めて魅力なんだがな。
「ほら灯帰ってきなさい! 愛しの金緑君の胃袋を掴むんでしょ!」
海さんが豊穣を揺すると豊穣は、現実に戻て来た。
「はっそうね! 糞虫の虫袋を掴む算段だったわね!」
「全くもう維持ははっちゃって、金緑君ごめんねこの子の暴言はただの照れ隠しだから、家の娘は君にぞっこんラブいないと生きていなないぐらい好きだからね!」
「ちょっと母さん! ゲロ!」
『確かにそれぐらい浅井君は大好きだし、いないと生きていける気がしないけど、そういわれると恥ずかしいよ……』
「灯が戻ってきたみたいだから、皆でご飯にしましょ! ほとんど灯の金緑君への愛情ギチギチ溢れんばかりの愛情を込めた手料理だから存分に味わってね!」




