カルフ三叉の『荒ぶるカササギ亭』
雲一つない青空の中、太陽は天高く登り、枯れ木の巨木が立ち並ぶ森の中、その下草や茂みからは虫の鳴き声が聞こえる。
傷だらけの顔の青年・スヴェンとフェアリーのリン、若き吟遊詩人のエルメスは森の中の街道を歩いていた。
エルメスはスヴェンに話しかける。
「この辺りの森って、不思議な風景をしていますよね。
大きな木は尽く枯れ木となって、草の茂みや、まだ小さな木ばかりが広がってます。
おかげで周囲の風景が遠くまで見えます。
どうして大きな木は皆枯れてしまっているんでしょうね?」
「ははは。確かに不自然な風景だね。
でも太陽を遮る大木が無くなったおかげで、今は小さな草や木にとっての新天地となって繁栄している。
大木達の時代が終わり、次世代の覇者として小さな木々にこの地が受け継がれたんだね」
「魔法の夜、もうすぐ『荒ぶるカササギ亭』よ」
森の街道の先に分かれ道があり、一軒の店が見える。
日当たりの良い場所に幾つもの丸太や植木鉢が並べられ、キノコやハーブがいくつも育っていた。
そしてその店を分岐点として街道が二股に分かれている。
「ここってもしかして……、スヴェンさんがシェイドさんと出会ったと言う場所じゃないですか?」
店の前まで歩くと、エルメスは周囲をキョロキョロと見回す。
「多分君が探しているのはあれかな?」
スヴェンが指差す先には一際大きな枯れた大木があり、エルメスはそれに駆け寄って幹を見る。
深々とクロス状に付けられた剣の切り傷、わずかにのこる二つの焦げ跡があった。
スヴェンは大木に近寄らずに店の中へと入っていく。
エルメスは慌ててスヴェンの後に続いた。
「いらっしゃいませ~。あら? リンちゃん。
それにスヴェンじゃないの。久しぶりね。
リンちゃん……今日は鳥に襲われないように気を付けてね。(クスクス)」
「まったく、私のお陰でこの店が手に入ったのよ?
私が居ない間にこんな名前付けて……」
「お知り合いなんですか?」
「ああ、彼女はイヴァリス。この店の主人だよ」
「魔法の夜、正確に教えて上げなさい?
イヴァリスと私の共同経営よ」
「リンちゃんは食べる担当ですけどね」
「もうっ……で、今日は何にしようかしら」
「ははは……否定はしないんだ」
「お二人の店なんですね! ……何となく店名の由来が想像つきます」
その場は楽しそうな笑いに包まれる。
エルメスは3人に混じって暫くの間食事を楽しむ。
イヴァリスとスヴェンが楽しそうに会話している中、エルメスの頭の上にリンがもたれ掛かった。
先ほど飲んだエールで少し酔っているようである。
「エルメスぅ……。本当はシェイドの話とかをもっと聞きたいんでしょ?」
「は、はい。伝説の英雄の方からお話を聞ける機会なんて滅多にないので……」
「魔法の夜にその話を振るのは止めておきなさい……。
彼にとっては辛いお話なのよ……」
「そうなんですか……。なんとなく予感はしていました……。
すいません。もう少し注意すべきでした」
「代わりに私が教えてあげるわ。
どうしてこの森がこんな風景になったのか。
そして私とっ! 魔法の夜とイヴァリスの大冒険のお話」




