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第四十七話「選ばれ呼ばれし異邦人」

 スヴェンはポイズンの魔法を詠唱、メリッサは毒に侵された。

 素早く接近したスヴェンはハルバードの一撃をメリッサに浴びせる。


 命中!


 メリッサはよろけたが即座に解毒ポーションを飲み、レッサーヒールで回復する。

 そしてファイヤーボールを詠唱して手に炎のオーラを宿したままスヴェンにシミターで斬りつけ、即座に魔力開放をする。

 ダメージを受けたスヴェンはレッサーヒールで回復した。

 二人はしばらく膠着した戦いを続けるが、ヘビィウェポンのハルバードを振り回すスヴェンは一撃離脱を好み、シミターを使うメリッサは張り付いての連撃を好む。

 決して相性が悪いわけではないが、まだ経験の未熟なスヴェンには荷が重い組み合わせであった。

 メリッサはスヴェンに中程度のダメージが蓄積したのを確認すると、スヴェンに見えないように背後でシミターを持ち替えた。

 蛇の装飾のされたシミターからは緑色の液体が滴り落ちている。


「ほおぉら! どうしたぁ!」


 メリッサは猛毒のシミターで斬りつけた。

 スヴェンは激痛で悶え、切られた腕を見ると既に周辺が変色している。


「ガフッ」

「それはこの世で最強のベノム毒、

 そこらのポーションや解毒魔法じゃ治らないよっ!

 死の秒読みは始まっている! ホラホラホラホラァ!」


 スヴェンはメリッサから距離を取り、立て直しを図る。

 だがメリッサはそんな事は許さない。

 ここぞとばかりにワンドを取り出すとファイヤーボールを連射し始めた。

 ファイヤーボールの魔法がチャージされた魔法のワンドである。

 スヴェンはアンソニー老人に貰ったワンドを取り出し、チャージされたヒーリングの魔法を自分に連射しながらヨロヨロと距離を取る。

 メリッサのファイヤーワンドとスヴェンのヒールワンドは同時にチャージを使い切り、パキりとヒビが入って壊れた。


「こんの野郎しぶとい奴め! これで終わりだ!」


 メリッサは息絶え絶えのスヴェンに向かい、爆炎の魔法を唱えた。

 そしてスヴェンに手を向け発動……しようとしたがスヴェンは姿を消した。

 レンジャーの森で貰った透明化の魔法の込められたリングを指にはめたのである。

 スヴェンは透明化した状態で必死で腰の袋を弄り、ジャーラ特製、最強の解毒ポーションを飲み干した。


「おらぁ! 出てきなっ!」


 メリッサは火炎瓶をスヴェンの隠れた場所へと投げる。

 スヴェンは姿を表し、飛び退いて火炎瓶の炎を避けながら爆発の魔法を詠唱し、メリッサに発動した。


「バイバイ! 坊や」


 メリッサは背後に隠していた炎のオーラを宿す手をスヴェンへ向け爆炎の魔法を発動した。

 まだ回復できていないスヴェンが喰らえばあの世行きである。

 だがスヴェンは腰に下げたバックラーを素早くかざす。

 バックラーは爆炎の魔法をメリッサに向けて反射し、亀裂が入って壊れた。


「ぐあぁぁ!」


 燃え上がるメリッサにスヴェンは跳びかかり白銀のハルバードを打ち下ろした。

 同時に爆発の魔法がメリッサに発動、さらには天から稲妻が落ち、メリッサに命中した。

 だがメリッサはまだ生きている。

 息絶え絶えだが生きていた。


「畜生! 予想外な事の連続で計算が狂ったぜ!

 だがここから挽回だ!」


 メリッサはレッサーヒールで少しだけ回復する。

 スヴェンはハルバードの2発目をメリッサに打ち下ろした。


 命中!


 そして再び天から稲妻がメリッサに落ちて直撃した。


「ああぁぁ!」


 メリッサは叫び声を上げてその場に倒れた。

 スヴェンはメリッサの死体が目を見開いたまま動かないのを確認し、

 自分の懐を探った。

 そしてARCCで支給された、連絡用の伝書鳥に括りつける手紙を探した。

 だが取り出してみると激闘とファイヤボールの影響で黒焦げになっており、炭になって崩れ落ちる。

 スヴェンは目を見開いたままのメリッサの赤いバンダナをむしりとり、

 伝書鳥の足に巻きつけて、鞄の底にあったバッヂで固定した。

 バッヂには刻印がされ、銀色に光り輝いていた。


 Magic Night


 スヴェンの手から伝書鳥が空へと放たれた。



 一方カルフンガリアではジャーラの作成した猛毒を塗った矢が大きな効果を上げていた。

 重装オークは次々と倒れていく。

 あまりの威力にオーク一匹に付き、矢一発で事足りる状態であった。

 ズシズシと歩くミュータントオークにはバリスタから杭のような矢が放たれて突き刺さる。

 ダメージは確実に与えているようである。

 だが歩みは止まらない。


「もう少し! もう少しなんだけど!

 止まらない!」


 ミュータントオークは街の中心まで辿り着き、最終防衛ラインのモンク達が身を挺して戦うが一人、また一人と巨大な棍棒で吹き飛ばされていく。

 皆が諦め始めた頃、遠くから馬の掛ける音が近づいてきた。


「全軍突撃じゃぁああ! わしに続けぇ!」


 辺りに響き渡る掛け声とともにカルフンガリアの西門からカゲヒサの率いる騎士団が突入した。

 カゲヒサとモーガスは二人並んで次々とオークを薙ぎ払って街に突入する。

 あっという間にミュータントオークの元に辿り着き、カゲヒサが大太刀を振るいながらミュータントオーク5匹の股間の下を駆け抜けた。


「えいやっ! はぁっ! ふんぬっ! そぃっ! ていやっ!」


 ミュータントオーク5匹はそれぞれ片足を切断されてその場に倒れこむ。

 騎士団総勢でミュータントオークに斬りかかり、全滅させた。

 もうオークがやってくる気配はない。


「すげぇ! 何者だあのおっさん」

「カーグレイルのカゲヒサ将軍だよ」


 ビクトルがカゲヒサの元に駆け寄る。

 そして腰に下がっている生首を見て驚愕した。


「そ、それ、オークのムタ将軍じゃないかっ!」

「やはり首級であったか。ここに来る途中のオーク共に混じって偉そうなのがおったからの。

 壊滅のついでの持って来たわい。

 情けないほど弱かったがの」


 カルフンガリアを襲ったオークは完全に撃退され、人々は王城の大広間に集まり、ARCCの報告を祈りながら待つ形となった。

 王座に座って不安そうに待ち続けるラード王の元に伝令兵が駆け寄る。


「ラード王! ARCCで使っていると思われる伝書鳥が謎の布持って来ました!」


 ラード王は伝令兵から布を受け取る。


「何だこれは?」


 表と裏を返して見ているラード王に片足を無くして杖をついた古参兵が歩み寄る。


「ラード王、それを少し私めに確認させて頂けないでしょうか?」


 ラード王は赤い布切れを古参兵に渡した。

 古参兵はそれを広げて確認し、興奮しながら王に言った。


「これは、メリッサ・キャットの付けているバンダナです。

 間違いありません。

 この刺繍と紋章は私は絶対に忘れません」

「なんと! ということは、遂に!

 赤猫旅団の女首領メリッサ・キャットが討ち倒されたということか!」


 周囲の人々にざわめきが広がった。


「ではこのメリッサのバンダナを貫いているバッヂは何だ?

 Magic Night……。魔法の夜?」


 大広間にいたナーバが衝撃を受けた顔ですっくと立ち上がり、ラード王の元へと駆け寄った。


「ラード王様……、私に、私にそのバッヂを見せて下さい!」


 王はナーバにバッヂを渡した。

 ナーバはバッヂを確認すると涙と鼻水を噴出させながらラード王に言った。


「これは、我がギルド、スキッピングベアのギルドタグです!

 我がギルドに所属するギルドメンバー、スヴェンのギルドタグです!

 遂に!

 遂にアリスやエリィ達の雪辱をスヴェン自らが晴らしてくれたのであります!

 ギルドマスターとしてスヴェンの事を誇りに思っております!

 訳あってしばらく離れていましたが一度足りとも忘れたことはありません!」


 ナーバは涙と鼻水でぐじゃぐじゃの顔で大広間に集まった人々にスヴェンのバッヂとメリッサのバンダナを高々と掲げた。


「ついに!

 遂に赤猫旅団を倒しましたぞ!

 スヴェンがやってくれましたぞ!」


 二人目の伝令兵が紙を持ってラード王に駆け寄った。

 紙を見たラード王は立ち上がり人々に叫んだ。


「ARCCのマサイアスからの報告だ。

 赤猫旅団の幹部全てを討伐に成功した。

 赤猫旅団は残りは首領メリッサを残すのみ。

 メリッサはARCC所属のスヴェンが追撃したとな」


 人々は湧き上がった。


「今宵、赤猫旅団は遂に壊滅したのだ!

 予も信じられない。

 夢を見ているようだ。

 まさに今宵は魔法の夜と言えよう」

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