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第四十五話「カルフンガリア・ディフェンス」

 カルフンガリアのラード城の大広間では、他の街から集められた援軍が並んで座っていた。

 王座に座るラード王が声を上げる。


「よくぞ集まってくれた。

 マイナーズヴィレッジのギルド『Hammer and Pincers』の方々。

 ホワイトウッドランドのレンジャーの方々。

 ウシャドナのモンクの方々。

 スタグランドの魔法使いの方々。

 このカルフンガリアの危機に駆けつけて頂いた事には心より感謝する。

 予は一生そなたらの勇気と心意気を忘れることは無いだろう。

 カーグレイルの騎士団も来る予定であったが、赤猫旅団の陽動作戦と思われる襲撃を受け続けており、到着が遅れると聞いている。

 この度、このカルフンガリアにオークの大軍団が襲撃することが予想されている。

 襲撃予想は明日であ……」

「陛下! 国王陛下!」


 衛兵が息を切らして駆け込んで国王の演説に割り込んだ。


「既に襲撃が始まっています! オーク兵がカタパルトで西と東の城門を破壊し、次々と走って突入してきます!」

「なんと! 早すぎるではないか! 総員防御態勢につけ!」


 人々は王城から走り出た。

 オークが一匹ずつ斧と盾を持って駆け込んできていた。

 すかさずモンク達がオークを打倒しするが、点々と並ぶ突撃オークの列は地平線の果てまで続いて見えた。

 ギルドHaPのギルドマスター、マリアが男衆に叫ぶ。


「急いで防護壁を構築するのよ!」

「了解!」

「了解!」


 大工たちは街の材木置場から木材を運び出し、オークが侵入してくる民家と民家の隙間にバリケードを作った。

 バリケードが出来るとオーク達はそこを迂回して突撃を続ける。

 レンジャーのビクトルがマリアに言う。


「こいつらの動き、これはオーク将軍ムタの指揮だぜ。

 こいつらは止まることを許されない。

 通路の完全封鎖をせずに街に迷路状に迂回させるバリケードを作るんだ!」


 マリアは半信半疑だったが職人たちに指示して街の建物と建物の間にバリケードを張り巡らせて迷路状の都市へと変貌させていく。

 オーク達は全員律儀に迷路を進みながら王城を目指し、モンク達に撃破されていた。

 次々とバリケードが完成するとあちこちに簡易の矢倉が組み立てられ、レンジャーが配置された。


「やばいぞ! オーク兵の密度が濃くなってきた!

 我々が抑えるのも限界が近いぞ!」


 オークを葬るモンク達が叫ぶ。


「そこよ! 次々と投げちゃって!」


 バリケードの高台にジャーラとアメリア、路上ティーパーティーのメンバーが集まり、次々と大河のようにうねって続くオークの隊列に液体の入ったフラスコを投げ込み始めた。

 ジャーラ特製、最強の爆発ポーションである。

 密集したオークの軍団は爆風で次々と蹴散らされ、ジャーラ達を睨むが止まること無く前進を続ける。

 オークの隊列は止まること無く続き、遂には重装オークが現れ始めた。

 ジャーラが嘆く。


「なんてこと! もう一箱使いきっちゃったの?

 いいわ次の箱を開けて!」


 重装オークの集団がジャーラの爆発ポーションとレンジャーの弓をすり抜け始めた時、

 スタグランドの魔法使い達の集団が別のバリケードの背後の高台に登り魔法を連射し始めた。

 その中にはナーバの姿もあった。

 HaPのギルドメンバー達は次々と木材だけでなく、石版や金属板を持って駆けまわり、バリケードを補強して回っている。

 一部のレンジャー達は裏で次々と弓と矢を生産し、町の人々に配る。

 オークの流れる川に町の人々も矢をうちこみはじめた。

 物見遊山に来ていたリンはオークの流れる大河のような行列を見て目を輝かせる。


「うっは! 楽しそう!」


 リンは隊列の中心に業火の魔法を詠唱した。

 地面に強烈な火が上がり、オーク達が燃えて苦しみながら前進する。

 リンはあちこち飛び回りながら業火の魔法、毒霧の魔法、チェインライトニングの魔法など範囲魔法を使いまわって遊びはじめた。



 一方凍てつく霊廟ではARCCがグイグイと赤猫旅団を圧倒し、押し続けていた。

 メリッサ・キャットは霊廟からの退却を指示し、3つほど開けられたゲートから赤猫旅団はどこかに次々と退却していく。

 スヴェン達が辿り着いたころには残り1個のゲートが消えそうな状態であった。


「不味いぞ! このままでは逃げられる」


 ロックはゲートの記憶の魔法を詠唱した後、ドラゴンに命令した。


「a! b! 俺を守れ! そして着いて来い!」


 ロックはドラゴン2匹とともに最後のゲートに飛び込んだ。

 同時にゲートが消滅し、ARCCのメンバーは取り残された。


 ロックがゲートを潜るとそこは点々と茂る密林と、縦横無尽に網の目のように走る土の道、そして草原の広がる野外であった。

 ロックの周りは赤猫旅団の残りの部隊も集結して取り囲んでいる。


「a! 俺を守れ! b! 敵を牽制しろ!」


 一匹のドラゴンが体と尻尾と長い首でトグロを巻くようにロックの体を隠し、羽でさらに覆い被せる。

 もう一匹のドラゴンは地響きを立てながら周囲を歩いてブレスと魔法を撒き散らす。

 無数の魔法と矢が2匹のドラゴンに集中砲火を浴びせた。

 ドラゴンのうめき声とけたたましい咆哮の中でロックはゲートの魔法を詠唱した。

 スヴェン達の前に魔法のゲートが開く。

 マサイアスが声を上げる。


「全員突撃! 一人として乗り遅れるな!」


 霊廟に居たARCCのメンバー達は次々とゲートの中に駆け込む。

 そしてロックと2匹のドラゴンの横たわる野外へと出た。


「お前たち! 一旦引くよ! 遅れるな!」


 メリッサの声で赤猫旅団は一斉に一方向へと撤退を始めた。

 エンゼルが倒れたロックの元に駆け寄って回復魔法を詠唱する。

 ロックは息絶え絶えの状態である。

 矢が何本も体に刺さっている。


「エンゼル、俺は大丈夫だ、だがもう戦線離脱をせざるを得ない。

 先へ行ってくれ。

 お前の力がARCCには必要だ」


 エンゼルは無言でしばらく黙った後、冷徹な瞳で立ち上がり、追撃するARCCの後を追った。

 ロックは息絶え絶えの2匹のドラゴンの首を両脇に抱えて語る。


「a! b! 二人共良くやった。

 お前たちは最も優秀で、最も勇敢で、最も素晴らしく、最も俺の愛するドラゴンだった。

 お前たちと戦えたことを俺は誇りに思う。

 俺はお前たちのことを一生忘れない」


 荒く息をしいていた傷だらけの2匹のドラゴンはロックの胸で静かに永遠の眠りについた。

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