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第十七話「対赤猫旅団の有志抵抗軍ARCC」

 街の警報が解除され、街の各建物に避難していた人々も安堵しながら外へ出る。

 街は賑わいを取り戻しつつあった。

 衛兵はオークの死体処理などであちこちを走り回っている。

 スヴェンはギュウギュウ詰めの銀行から出てくる人の中にロングソードを貸してくれたおばさんを見つけると駆け寄る。


「剣を貸してくれてありがとう。これ、お返しします」

「礼を言うのは私達のほうだよ。君が居なければ全員殺されていたかもしれない。お礼にその剣はあげるよ。持っていきな」

「赤猫旅団のネコ・キャットに坊やが炎のつばを吐きかけた(スピットファイアの魔法の事である)時は最高にスッとしたわ!

 私のそのマジックエッセンスも持って行っていいわよ」

「買い物するならワシの商店に来るといい。坊やには大サービスで値引きしてやるぞ」

「ありがとう。ありがとう」


 スヴェンは剣を抱え、商店の場所の手書きの地図やら、パンやリンゴを抱えて散っていく人々を見送った。

 ジャーラさんやエイミーさん、アメリアさん達は再び銀行前に並べた机の周囲に戻り、椅子に座っている。

 スヴェンもそこへ戻って椅子に座った。

 エイミーさんが言う。


「スヴェン君凄いわ! あの赤猫旅団に攻撃するなんて私たちは怖くて無理よ」

「スヴェン君が無事で良かったわぁ」

「僕も死ぬかと思ったよ。あの後必死で逃げたんだ。

 最後の最後で追い詰められた時、この隣のリンの召喚したデーモンにも助けられたんだけど」

「ひぃぃ、悪魔を召喚するなんて恐ろしい……」

「何故か赤猫旅団は僕を置いて慌てて帰っていったんだ。それで命拾いをしたんだよ」


 スヴェンの隣で椅子の上に自分専用のロッキングチェアを置いてリンが座っていた。

 リンの眼の前の机にミニサイズのグラスを置いて紅茶を注いでいたジャーラが言った。


「それはね……。

 赤猫旅団がARCCを恐れているからよ」

「ARCC?」

「Anti Red Cat Clan、略してARCC。

 赤猫旅団の非道な行いに対抗するために、対人戦闘に特化した魔法使いや、傭兵、退役軍人などが全国各地から集まって結束した集団よ。

 参加する理由は人それぞれだし、荒々しい人達も多いけど、皆同じ目的で繋がっているわ。

 その事を知っている人達は赤猫旅団に襲われると伝書鳥で彼らに通報するの」

「あのカッコウと鳴く鳥ですか?」

「そうよ。通報を受けたARCCは参加出来る戦力を急いでかき集めて魔法のゲートで討伐にいくのよ。

 彼らは手練れ揃いだから赤猫旅団も手を焼いているのよ。

 彼らが旅団の幹部を過去に二人ほど討伐したわ。

 ただ、どうしても戦力の結集や伝達の速度などで時間がかかるの。

 そこで赤猫旅団は最近は襲撃時間をカウントして、ARCCの到着前に撤収するようになったのよ」


 ジャーラは少し離れた場所で馬に乗って歩く騎士を指差した。


「彼がARCCのトップのマサイアスさんよ。今日はマサイアスさんが直々に出動したみたいね」


 マサイアスと呼ばれた壮年の騎士は兜を片手に抱えており、長いヒゲと長い髪の毛を鎧の上に垂らしている。

 片目は眼帯をしており、もう片方は鋭く恐ろしい眼光を発している。

 ジャーラは説明を続ける。


「ARCCの結成後、赤猫旅団を各地で撃退し、人々は旅団壊滅を夢見て希望を持っていたのよ。

 でもある時から状況が一変したの」

「赤猫旅団はARCCに対抗して、人間と敵対している亜人モンスターと手を組むようになったのよね。あいつら人間を捨ててるわ」

「特にオーク軍の将軍サムロの戦術と知略で国防軍が大敗した時から人々の希望は恐怖へ変わっていったわ。

 サムロは遥か彼方の土地から来たオーク達の信望するヒーロー、私達にとっての悪魔よ。

 この街も彼の襲撃をここ数年断続的に受けてるの」

「僕ARCCに入れてもらおうかな」

「今のスヴェン君ではまだ断られると思うわ。ごめんね。

 彼らは自分たちの認める精鋭、メンバーの推薦する強者しか加入させないのよ」

「魔法の夜。あなたが入っても足を引っ張ることになるわよ?」

「この妖精さんは厳しいことを言うわね。うふふ」

「……ああ……。でも彼女の言葉は真実さ。今日赤猫旅団のキャット一家を間近でみて思い知らされたよ。

 それに武芸だけじゃなく馬にも乗れないと戦いにすらならないね」

「スヴェン君はたしかエメラルドマウンテンにあるウシャドナの街に向かっているのよね?」

「うん。僕はまずそこで魔法剣闘士になるための修行をするんだ」

「そこへ向かう街道の途中に分かれ道があるのよ。

 左はウシャドナへ向かう道、もう片方はホワイトウッドランドへ向かう道。寄り道してホワイトウッドランドへ行ってみてはどうかしら?」

「そこに行けば何かあるの?」

「弓を使い、動物を操るレンジャー達の集落があるの。

 そこへ行けば馬を融通してもらえるかも知れないわ。

 動物の知識に長けた人達だから馬の乗り方だけじゃなくいろんな事を教えて貰えるはずよ?」

「ありがとう。明日の朝そこへ向かってみるよ」

「そう……じゃあ旅立つ前にもう一度ここへ来てね」


 アメリアが言う。


「私の家は宿屋をやってるの。スヴェン君とリンちゃんは特別に無料で部屋を用意するわ」

「ありがとう。助かるよ」

「良かったねぇ……魔法の夜。久々に布団で眠れるよ!」

「まぁ、今まで大変だったのね」


 翌朝、スヴェンはアメリアさんとその家族に礼を言うと銀行前へ向かった。

 ジャーラさんが手を振っている。


「おはよう。ジャーラさん。お別れの挨拶に来ました」

「この先の道はより危険になるわ。気を付けてねスヴェンくん。

 これは私からの餞別よ」


 ジャーラはスヴェンに小さな樽を渡した。

 錬金術士ジャーラのサインが付いている。


「材料が多く取れなくて市場には流通してない実験品だけど、最強の猛毒も即座に治す最強の解毒ポーションよ」

「ありがとう。大切にするよ」

「スヴェン君、無事を祈っているわ」


 ジャーラさんはスヴェンをハグした。


「絶対に最強のデュエリストになって戻ってくるよ。そして旅団を必ず討伐してみせる。

 ジャーラさんも気を付けてね」


 スヴェンは見送るジャーラさんに手を振りながら、カルフンガリアの街に入って来た時とは逆側の門から外へ出た。

 再びスヴェンとリンは街道を進む。


 次に目指す先はレンジャーの集落である。

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