シナリオ考察⑤ ピンチを回避する
さて。ピンチの後は逆転劇。やはり、これが基本でしょう。
中にはそのまま叩き落として這い上がらせるという手法もありますが、「小説家になろう」では危険な手と言わざる得ません。その場合は「逆転の目がある」ことを提示しましょう。フォローによる印象操作は大事です。
では逆転といっても、何を以て劣勢を挽回すべきでしょうか?
軍同士の戦い、戦記物ならば援軍や敵将との一騎打ちがよくある手法でしょう。
援軍は味方の士気を高め、敵の不安をあおります。戦記物でなくとも使える優秀な「説得力のある」手法です。
対して敵将との一騎打ちは、やや説得力に欠ける面があります。そのかわり盛り上がりやすい「華のある」手法であり、読者への主人公アピールもしやすい手法です。
両者の折衷案は、援軍を率いている者が主要キャラになることですかね? その場合は新キャラにスポットが当たることになり、全体的に可もなく不可もなくなるでしょう。
リアルに考え、説得力重視の外的要因。物語としての盛り上がりを重視した内的要因。ストーリー重視かキャラ重視かといった言い方でもいいですかね? 何を重視するかは作者様の判断、作品の雰囲気を見て考えることでしょう。
次。逆転する要因の考え方。
敵側の設定をやりすぎてしまった場合。「これ、どうやって倒そう?」と思った時の対処方法です。
まず、敵側の優位な点を書き出しましょう。数であったり装備や技術であったり、個の強さであったり。時に権力財力魅力など、様々な要因が考えられるでしょう。
次に、それを打ち消す方法を考えます。数が多い場合は数を減らす方法。殲滅・各個撃破・分断などなど。量に対し質で挑むのも手ではあります。装備が負けているなら主人公側に新装備を与えるシチュエーション。相手が個人として最強なら仲間との結束が勝利の鍵でしょう。個人最強に個人で挑まねばならないならその他の要因を持ってきてその総合力で挑むか、毒や仕掛けなどの外的要因で相手を弱体化させるか、全力を出さない・出せない状況を作るために虚を突くか。
権力者にはより強い権力者を味方に引き込んだりするなど、相手が最強者・最高位者でないならより上位の力を持つ者に助力を願うのも主人公らしい手法の一つだったりします。“虎の威を借る狐”などと馬鹿にしてはいけません。その場合は虎を動かす賢さ(魅力)を持つ狐なのですから。
他には分割対処といった方法があります。一つ一つ書き出した敵が強い要因に当たらせるのです。たとえすべての要因を潰さないと勝てないとしても、一度に全ての要因を潰させる必要はありません。敗北しながらも目的を果たし敵の弱体化を進めていくのです。
問題の先送りといいますか、その場しのぎの姑息な手を使って猶予を作るのも間違った判断ではありません。その場で対処できない場合は、対処できる“場”を用意しましょう。
そういった対処も難しい時。最終手段ですが頭の中で種が割れるとか、隠された力にでも目覚めてください。その場合は少し前の話に伏線を仕込むか、次の話、終わった後に理由を付けるか反動で苦しむなどするといいでしょう。……それでもご都合主義のレッテルは貼られるでしょうが。
最後に。逆転した後を考えましょう。
逆転した。主人公が勝った。そこまではOKです。ですが、そこでそのままハッピーエンドでは、先ほどのピンチが軽くなります。
多少は被害の爪跡を演出し、いかに辛い戦いだったか、薄氷を踏むような勝利だったかを読者に伝えてください。
大切な仲間を失ったかもしれません。大事なものを無くしたかもしれません。誇りを捨て死に物狂いで戦ったのであれば、何もかもが戦う前のそのままとはいかないでしょう。それを、見せるのです。
そこまですれば、先ほどまでピンチであったと人に伝わるでしょう。




