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22話 憎む者たちの陰【三人称】

 夜も更け、活気ある王都もゆっくりと静けさを増していくなか――


「くそっ!!」

「ファ、ファールベルク様……」


 王都の中枢、貴族街の邸宅のひとつに、苛立ちの声が響いていた。


「どういうことだ!? なぜやつが……、シゴルが生きているだと!?」

 かつて、政治工作を通じてシゴルに敗戦の罪を被せた宮廷魔術師、テレウス・イル・ファールベルクである。


「それが……、調査の結果、あの男は生きていたようで……」

 部下の報告を聞いたテレウスは、線の細い顔をしかめる。


「くそっ! どうしてこんなことに……」

「やはり、テレウス様自ら始末すべきだったのではないですか?」

「黙れ!」


 テレウスは苛立たしげに叫ぶ。


「奴が生きているなんて、信じられない。何かの間違いだろう?」

「いえ、確かにこの目で……」

「うるさい!! もうお前は下がれ!!」

「はい、失礼いたしました」


 部下は頭を下げた後、部屋を出ていった。


「クソッ、クソッ。部下が戻らないから不安に思っていたが……、まさか相討ちですらなかったとは」


 テレウスは頭をかきむしり、怒りを抑えようとする。


(いや、落ち着け……。まだ、この町の主がシゴルと確定したわけじゃない)


 そう自分に言い聞かせるが、なかなか気持ちが落ち着かない。


「くそぉッ……!」


 思わず机を叩く。その衝撃で机の上に置いてあった書類が床に落ちてしまった。

 テレウスは舌打ちすると、その紙束を手に取り内容を確認する。


 そのうち一枚の紙を見て、彼は眉間にしわを寄せた。

 そこには、南大陸の新興の港町――ペンテイアに関する調査結果が記載されていた。



◆◆◆



 冷たい夜風が海から吹き付ける。

 デルポトの町の郊外に、二人の男が立っていた。


「そうか……、失敗したか」

「ええ、ファングリザードを誘導するまでは成功したのですが……」

「いや、構わん。ペンテイアの戦力が思いのほか高かっただけのこと。報酬は約束通り払おう」

「ははっ」


 片方の男が、金貨の詰まった袋を渡すと、もうひとりは素早く重さを確かめた。


 デルポトは古くから栄える港町であり、権力維持のためにこのような「暗い」伝手を多く持っている。


 そのひとつ、冒険者ギルドの裏の顔がこれであった。

 モンスターの生態、生息域を詳しく知るということは、それを誘導する手管にも長けているのだ。


「今はまだ大した損害は出ていないが、ペンテイアはいずれ脅威となる商売敵。また依頼させてもらおう」

「おお怖い怖い。またのご依頼をお待ちしてます」


 デルポト領主の言葉に対して、ギルドの男はニヤリと笑って返した。


 そして、音もなく二人はその場を立ち去るのであった。


徐々に発展していくペンテイア町と、それを狙う者たち……。

これにて第一章は終わりです。


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