92.錬金術士鬼の女官
「こんにちは、トラカさんいますか」
「あら、あなたグラニさんと互角にやり合ったんですって?パイロ様にも気に入られてるって国中で評判よ」
期せずしてこの街でも有名になってしまった。
オークのお姉さんの視線が熱い。
「お、有名人!今日はどうした」
オークのお姉さんの視線を避けているところに2階からトラカさんが声をかけてくれた。
「実はトラカさんに教えてもらいたいことがありまして」
「役に立てるかどうかはわからんが、とりあえず上がって来い」
「悪魔族と不死族に詳しい人か」
「そうなんです。ちゃんと勉強しておこうかと思いまして」
「まあ、心当たりがなくもないが」
「会うのは難しいですか?」
「まあ、お前さんなら大丈夫だろう。直接言って聞いてみるんだな」
「はあ。どこに行けばいいでしょう」
オーガは戦闘民族で男も女も戦い、特に肉弾戦を好む。
もちろん不要な戦いを率先してするわけではないが、
だからこそ武闘大会のような催しが好まれる。
魔大陸武闘大会もオーガの提案ではじまったそうだ。
基本脳筋のオーガは敵の分析や戦略などは苦手なのだが、オーガには珍しく情報収集や分析が大好きな女性がいたそうだ。
その女性は、今のお妃様に大変気に入られてお妃様付の女官になっているそうだ。
「お妃様付の女官になんて会えるかな」
「普通の人はご主人様に知らない女の子なんて会わせようとは思わないにゃー」
「ん、これ以上増えても困る」
ピピさん、増えないよ。安心して。体力的にすでに限界超えてるから。
王宮入口の仁王門番はちゃんと俺たちのことを覚えていてくれたので、事情を話して取り次いでもらった。
控室のようなところで待っていると、お妃様ではなく王様が現れた。
「王様、お邪魔しています」
「うむ、お主が来たと聞いて顔だけでもみておこうかと思ってな」
「勿体ない、どうぞお構いなく」
「うむ、次は儂と手合わせでもしてみるか」
「いえいえ、とんでもない。でもグラニさんより王様の方が強いですよね。武闘大会には参加されないんですか」
「うむ、どの国も王が一番強いのはそうなんじゃが、万一があるとまずいからな。一応取り決めとして各国とも王は参加しないということになっておるんじゃよ」
「なるほど」
そこで王様は小声で
「ところで娼館には行ったのか」
「いえ、見ての通り見張りが厳しくて」
チラッとピピ達に目を向ける。
「そうか、お主も大変じゃのう。今度二人で抜け出さんか」
「私はいいですけど王様目立ちますよね」
「そこなんじゃよ。」
「変装とかしてみますか」
「変装とな」
「顔を隠すのは無理なんで、そこは逆に大きな傷とかつけて、人相より傷を目立たせれば怪しまれないと思うんですよ」
「なるほどな」
「今の時期なら武闘大会に出るために田舎から出てきたといえば大丈夫そうじゃないですか」
「うむうむ、そうじゃな。流石じゃ。儂が見込んだだけはある」
あれ、見込まれてたんだ。
「あなた、私のお客様と何の相談かしら」
「お妃様!悪い相談してたにゃ!」
流石ミケ。お前耳がいいな。でも王様に敵対するとはいい度胸だ。
「いや、別に。その、武闘大会のな」
「はい、王様に色々参考になるお話を聞かせていただきました」
「いやいや、儂の方こそ参考になった。ではまたな」
そういうと王様はそそくさと出て行った。
お妃様の横にはオーガにしては小柄な、オーガにしては理知的な情勢が佇んでいる。
「それで、今日は悪魔族と不死族について勉強したいと」
「はい、死にたくないので、詳しい女性がいるということを聞き不躾とは思いましたが訪ねて参りました」
「いい心がけですね。この国の男どもは学ぶよりとにかく実践。見ている方は気が気ではありません」
「はあ」
「ここにいるクリスは他種族について非常に詳しく調べているので役に立つでしょう」
そういわれたクリスがペコリとお辞儀をした。
「それで我々にも教えてもらってよろしいのでしょうか」
「空いている時間であれば私は構いませんよ。ただ、ねえクリス」
「はい、お妃様」
そういうとお妃様は部屋を出て行った。




