91.錬金術士鬼の勉強
「あの、あの」
「ザクロ、大丈夫ここに来た目的は忘れてないよ」
「はいです」
武闘大会が開かれる場所は鬼族、悪魔族、不死族それぞれの国の丁度中間にあるそうだ。
こっちの大陸がどれくらい広いかわからないが、武闘大会が始まれば中間地点まで行ける。
そこから悪魔族の国に渡り、ダークエルフの村に行けばいいだろう。
知らない土地で闇雲に動いて迷うよりは確実だ。
とはいえ武闘大会が始まるまであと少しある。
出場が図らずも決定してしまったので、それなりに対策を考えよう。
ということでオーガの国の闘技場に行く。
グラニさんは毎日ここで鍛錬しているそうだ。
「グラニさん」
「おお、今日もやるか!」
「いえ、カンベンしてください。悪魔族と不死族について教えて欲しいんです」
「いい心掛けだ!」
「敵を知り己を知るものは百戦危うからずです」
「ん?どういうことだ」
「勝負に勝つには敵の実力だけじゃなくて自分の実力も見極めなくっちゃいけない、みたいなことかな」
「なるほど!すごいな。おーい、みんな聞いてくれー!」
いやいやグラニさん、そこで講釈垂れなくても。
なんか他のオーガ達もやたらと感心してるし。
「力だけじゃダメなんだなあ」
「よし、俺もっと研究に力を入れよう!」
「俺の実力ってどれくらいだ?」
まあ、これで脳筋が少しでも柔らかくなればオーガも安泰だろう。
「おい、他にもないか」
「え?他って、そうですね。生兵法は怪我の元とか」
「それはどういうことだ?」
「中途半端に知ったかぶりをすると却って失敗するってことです」
「おおお!」
「俺はナマビョウホウだな」
「この怪我もナマビョウイホウだったよ」
お前たちほんとにわかってるのか。
「いいぞ、俺たちどんどん強くなってる気がするな!」
いや、たぶん、気のせいだから。
「次は?次は?」
「えーと、かわいいは正義、とか」
「・・・・・」
やっぱ違うか。
「おおおおおお!」
「おの通りだな!」
「それだよ!それ」
それでいいのか?役にたつのか?
「グラニさん、そろそろ修練に戻りませんか」
「あ、おお、そうだな。よし、みんな修練に戻ってくれ」
ようやく解放された。
「悪魔族と不死族についてだな」
「ええ、お願いします」
「俺が戦った悪魔族で強敵だったのは幻覚の術を使うやつだな」
「ほー」
「悪魔族は魔法じゃないが精神攻撃が得意でな、その時はなかなか攻撃が当たらなくて大変だった。飛ぶしな」
「悪魔族は飛べるんですか?」
「そりゃあ、羽が生えてるからな。長距離は飛べないらしいが」
「こちらを混乱させる術とかもありますよね」
「ああ、あるらしいが個人戦ではあまり意味がないから戦ったことはないな」
「団体戦だとかなりヤバイですよね?対策とかありますか」
「団体戦では危険だな。対策としては術にかからないことだな」
「どうやったらかからないですか」
「それは知らん」
「目を見ないようにするとか、呪文を聞かないようにするとか?」
「わからんが頭を殴ったら術が解けたことがあったな」
役にたたねえなチャンピオン。
「毒を使ったり、痺れさせたりする攻撃もありますか」
「それは不死族だな。ものすごい速さで動いて毒攻撃を喰らったときは流石に危なかったぞ。獣人だったら1分で死んでたそうだ」
「それって痺れさせられて毒を喰らったら人族なんて一溜まりもないですよね」
「そうだな、すぐ死ぬだろうな」
「なんか団体戦の方が危険な気がするんですけど」
「まあ、余興だからな。色々あったほうが面白いだろう」
いやいや死ぬから、死んじゃうから。
「不死族は死体を操ったりしないんですか」
「よく獣人の死体を操るらしいが、闘技場には死体がそんなにないからな」
まあ、人がいないからな。獣人の死体になるのか。
いずれにしろグラニさんでは役に立たん。
「そこらへんのこともっと詳しい人っていますかね」
「俺は知らんが冒険者組合のトラカなら詳しい者も知ってるんではないか」
「そうですね。ありがとうございます」
トラカさんならチャンピオンよりはマシかもしれない。
あまり期待できないが俺たちは冒険者組合に向かった。




