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82.錬金術士海に出る前に


ちょっと心配していたのだが、帆柱を外せば船はカリバーに飲み込ませることができた。

スピードワゴンはちゃんとついてくる、というか小さい羽ながら飛べるようだ。

基本的にはユンに世話を焼いてもらう。

俺がクロ、ピピがカリバー、ミケがシロ、ユンがスピードワゴンだ。

ザクロにもペットが必要かな。

だがザクロに何かの世話を任せるのは少し心配だ。

以前ザクロがシロを間違って(?)エーテルに浸したことがあり、その際にシロが1mくらい膨張してしまい大騒ぎになったことがあった。

別に大きくなっただけなのだが、元に戻らなかったら巨大な瓶を用意しなくちゃいけなくなるところだった。

そうなったら水補給のために連れていく意味がなくなってしまう。


ローツェ、マナルスの王様に魔大陸まで行く旨伝え、ポーションを多めに納品しておいた。

2人ともどうせ行けるはずはないからすぐに戻ってくるだろうと思ってるようだったが、何か珍しいお土産でも持ち帰ってびっくりさせてやろう。

「ところでザクロ、魔大陸でお金使えるのか?」

「はいです。こちらのお金と変わらないです。以前ある魔王が新しいお金作ったことがあるそうですが、誰も使わなくて昔ながらの貨幣が流通してるです。でも物々交換も結構あるです」

「冒険者組合はないよな?」

「いえ、魔大陸にも冒険者組合はあるですよ。こちらとそんなに変わらないです」

「人間を見つけたら食べる魔族とか」

「もしインプ捕まえたら食べるですか?」

「いや、食べないな」

「魔族も人間なんて食べないですよ」

「そ、そうか」

どうやら俺が持っている魔族のイメージとは違い、ただ種族が違うだけくらいに思っていたほうがいいかもしれない。

「じゃあ、なんで魔族との交流はなくなったんだ?」

「海があるから交流できないじゃないですか」

「昔は繋がってたのか?」

「1000年も前の言い伝えですけどおおきな地割れが起きて、そこから見たいです」

「なるほど」

「ご主人様はほんとに何にも知らないんだにゃー」

「そうですね。あたしも少しびっくりです」

え?ミケはともかくユンに失望されるのはちょっと残念だな。

「よーし、じゃあ魔大陸いったら魔王目指しちゃおうかな」

余計しらけた。


マッターで食糧を買い込み、竜の首の岬に向かう。キキョウさんの言を信じれば10日はかかるということだ。

水はシロが海水を真水にできるので問題ない。食料も海から取れそうだが念のためだ。

さて、新たな冒険の始まりだ。

と、いつの間にか冒険者だな、俺。

なんでこんな危ないことしてるんだろう。

おまけにちょっとワクワクしている自分がいる。

そんな感慨に耽っていると、ピピ、ミケ、ザクロが呼んでいる。

「にゃーご主人様。今更だけどあの船小さくないかにゃ」

「まあ、小さいけど大丈夫だろう。鉄で補強もしてるし、なかなか丈夫だぞ」

「あの、丈夫なのは安心なんですけど、あの」

「ん、寝室が1つしかない」

「それはしょうがないだろう。別にユンに何かしようなんて思ってないぞ」

「にゃ、そうじゃなくてにゃ」

「あの、10日以上も、あの、何もないというのは、その」

「え?」

「ん」

君たち、海の恐怖より性欲優先ですか。


船は大きいヨットというか小さいクルーザーに帆がついて小屋が乗っているような作りになっている。

小屋は食事と寝るスペース、簡易な台所もあり半地下にトイレのようなものが設置してある。といってもそれが10畳程度しかないし、半地下のトイレ以外は仕切りもない。

この空間でユンに気づかれずにいたすことはかなり難しい。

夜は交代で見張りをすることになっているので、ユンが寝ている間なら小屋の外に出ても違和感はない。

夜中にいつもユン以外のみんなが甲板にいるのは怪しまれる。

最終的には俺が見張り担当をしている者の相手を甲板でする。ということに落ち着いたのだが

「それって俺が休む暇がないよね」

「ん、そういうことで」

「外というのも、それはそれでいいかもしれないにゃ」

「あの、私、前から2人きりがしたかったんです」

決定事項のようである。これが多数決ってやつか。



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