80.錬金術士次の目標
いつの間にか錬金術士というよりは何でも屋になってしまっている気がする。
最初の空気鑑定士よりはましだが。
どこかに行くたびに空気中の成分はマメに格納しているし、鉄やミスリルの精製をなんやかやでやっている。
ポーションやエーテルも小まめに作っている。
そのおかげかどうかわからないが複雑な物質も錬金術で生成できるようになっている。
例えばゴムだ。
以前であれば(多分化学式が)複雑なものは熟練度が足りなくて生成できなかったが、今ではある程度の物ならできるようになった。
化学式がわからなくてもできるというのは非常に大きい。
それでも未知のものはやはり今でもできなくて、以前ポリエステルを作ろうと思ったができなかった。
水着を作るのに必要だと思ったのだ。
因みに普通の糸、綿糸もダメだった。
ただカーボンは作れる。
炭素だからな。
もっともチートだと思うのは生成できるだけでなく、自由に変質できることじゃないかと最近思うようになった。
その最たるものが我がムチムチソードだ。
鉄を精製するだけでなく、熱を加えず伸び縮みさせるとか液体に変えるとか、正直錬金術の範囲を超えている気がするが、そこはありがたく受け入れることにしよう。
今はさらなる錬金術の高みを目指すためにホムンクルスが作れないかなと思っている。
ただ綿も作れないのに人造人間が作れるとは思えないので最初はゴーレムでいいかな、と考えている。
ゴーレム・・・
いい!
「ザクロ!」
「はいです」
「ゴーレムって知ってるか?」
「ごーれむですか?知らないです」
「岩の魔物なんだけど、魔族の国にもいないか」
「魔物ですか?そんな魔物は聞いたことないです」
そうか、いないのかゴーレム。
「あの・・・」
「思い出したか?」
「いえ、あの、魔族の国ですけど」
「ああ、ザクロの故郷があるんだよな」
「はいです。実は、あの」
「故郷に帰りたくなったか?」
「いえ、あのはい、というか、勝手に持ってきちゃった魔素抽出器を返したいんです」
ザクロはエーテルの研究をするために村に2つしかない魔素抽出器を勝手に持ち出し、その後インプに騙されて人族の国にやってきたんだったな。
「魔族の国かぁ」
「あの、やっぱりダメですか」
「いや、ダメじゃない。でも行けるのか?」
「そうなんです。行けないんです」
「だろ?」
ザクロはたまたまこっちに来ることになったドラゴンに頼んで人族の国まで飛んできたということだった。
ドラゴンの定期便があるわけもなし、そんな簡単には行けないだろう。
「あの、キキョウ様に相談してみようかと」
ダークエルフの間では伝説の六魔のキキョウか。
聞くだけ聞いてみてもいいかもしれない。
「そうだな、聞くだけ聞いてみよう。でもその前に魔族の国について詳しく教えてくれないか」
「はいです」
魔族の国。
人族の世界とは海で隔てられていてそう簡単に行き来はできない。
海には海の魔物が住み着いているので、船での移動も難しいそうだ。
魔族といっても大きく分けて3つの勢力があるらしい。
悪魔族、不死族、鬼族。
それぞれに王が君臨していて特に種族間での争いはないようだ。
それなりに交流はあり、悪魔族の国には悪魔族しかいないかというとそんなことはない。
ただ魔族の国には人族はほとんどいない。こっちで魔族をほとんど見かけないのと一緒だ。
こちらと同じように魔溜まりはあり、スケルトンのような魔物も存在するし、魔法生物やゴブリンもいるそうだ。
こっちにエルフがいるように向こうにはダークエルフがいる。
スケルトンは不死族じゃないか思ったが、よくわからんがスケルトンは魔物で魔族ではない。
種族間の争いはないが、年に1度武術大会が開かれていてそこには各種族から猛者が参加し、1位になるということは相当な栄誉だそうだ。
どれくらいの栄誉かというと、1位を出した種族の王が1年間威張れるそうだ。
そんなことかと思うかもしれないが、向こうでは基本弱肉強食。力こそ正義。
わざわざ国を越えて争うことはしないが、一番強いということこそ至上なのだそうだ。
まあ、それはいいとしてザクロの願いを叶えるべく俺たちはマナルスに向かうことにした。
「ところでピピ、ミケ」
「ん」
「にゃ」
「魔族の国に行くって言ったら、お前たちも来るか?」
「行かないにゃ!」
「ん、行く」
「え?ピピ姉さん行くのにゃ?」
「ん、相棒が行くなら行く」
「じゃあ、ミケは留守番。ユンの面倒見といてくれ」
「あたしも行きますよ!」
ちょっとユンは心配だな。でも残しておくわけにもいかないか。
「にゃ!留守番ってご飯はどうするにゃ?王様に変なこと頼まれたらどうするにゃ?ポーション寄越せっていわれても作れないにゃー!」
「じゃあ、ミケこれね」
「金貨1枚?」
「当面の生活費」
「にゃ!当面っていつ帰ってくるにゃ?これなくなったらどうするにゃ!」
「じゃあ、俺たちはマナルス行くから」
「にゃー!行くにゃ!ウチも行くにゃ。しょうがないから付き合ってやるにゃ!」
「いやいやなら来なくていいから。じゃ!」
「待つにゃ!行きます!連れて行ってくださいにゃ!独りぼっちはイヤにゃー!」
とりあえずお俺たちはキキョウさんに会うべくマナルスに向かった。




