79.錬金術士本気の仕事
今回の内容はマニアックです。
ご不快に思われる方がいたらすいません。
この街の娼館は遊郭に近く、キャバクラとちょんの間を足したような業態が一般的だ。
飲むだけなら街の酒場の方が安いし、ヤルだけならドワーフの村に行けば無料だ。
もちろん、飲むだけの客もいるしヤルだけの客もいる。
娼館の売上が落ちてきたのはだいぶ前からで、別に俺がドワーフの村を改革したからとか、パインさんの酒場に助言したからというのが直接の原因ではないようだ。
ただこのままではいけないという認識はあったのだが、どうしていいかわからない。
そんな時に面白いことを考え付く男がいたんで協力をお願いすることにした。
ということのようだ。
「おの街に娼館はいくつあるんですか」
「5つね」
「売上はどこも落ちてる」
「そうね」
「その5つはどんな違いがあるんですか」
「違い?どこも娼館なんだから全部一緒よ。敢えて言うなら場所とそこにいる女の子が違うってくらいね」
「5つも必要ですか」
「痛いとこ突くわね。ちょっと前までは5つあってもよかったわ。でも今の売上だと減らすべきかもしれない。でもだからといって働いてる娘たちを簡単にクビにはできないわ」
「全部で何人くらい働いてるんですか」
「だいたい300人くらいかしら」
「そんなにいるんですか!」
「この街の大きさだとこれ位が普通よ」
ちょっと300人の嬢の将来を担うとか荷が重すぎるな。
でもアイデアがないわけじゃない。
国全体が不景気になっているわけではないようだ。
でも娼館にいかなくなってるのはたぶん飽きてきたんだろう。
エッチなことに飽きたんではなく、いつも同じでつまらなくなったんじゃないかと思う。
だったらもっと刺激的にすればいいんだ。
「改革というのは少なからず痛みを伴います。それと俺の言うとおりにやっても売上が必ず伸びるかというとそれはわかりません。それでもいいですか」
「ええ、お願いするわ」
「300人いるうちの上位15人の美人と上位15人の床上手だけ集めて高級娼館を作ります。金額は今までの2倍にして基本飲み食いは無しです。ただし時間は1人当たり2時間ほどにします」
「飲み食いなしで値段が倍?」
「はい、できれば部屋ごとにお風呂もつけたいんですけど可能ですか」
「まあ、できないことはないけど」
「この高級娼館に限ったことではないんですけど全員に仮の名前を付けてください。できるだけ覚えやすいやつ」
「本名じゃダメなの?」
「覚えやすいなら本名でもいいです。でも娼館で働く娘には『源氏名』をつけます」
「げんじな」
「はい、それで娼館に来てくれた人にできれば名刺を渡してまた自分を指名してもらえるようにしてください」
「別にいろんな娘に相手してもらえばいいんじゃないかしら」
「もちろん、毎回変えたい人もいると思います。でも月ごとに指名数によって娼館ごとに上位だけでいいので発表します」
「上位に入れない子がやる気をなくしちゃうんじゃないかしら」
「それはその娘の努力次第です。できれば上位の娘には金一封をあげてください」
「それは可能よ」
「高級娼館のほかにエンターテイメントに特化した娼館とマニアックな娼館を作ります」
「えんたーていめんととかまにあっくとかよくわからないわ」
「エンターテイメント娼館は、飲み食いはありですけど舞台を作ってそこで踊りなんかをやってもらいます。ですのでそういうのが得意な娘を選抜してください」
「たぶん、探せばいると思うけど、踊りなの?」
「はい、舞台の上で男を誘うような踊りとか、少しづつ服を脱いでいく踊りとか、とにかくお客さんが見て楽しめるようなものがいいです」
「難しそうね」
「そこは試行錯誤しながら。そしてマニアックな娼館ですけど」
「ええ」
「叩いたり叩かれるのが好きな娘を集めてください」
「叩かれるのが好きな娘はいそうだけど、叩くのが好きっていうのはお客さんを叩くってこと?」
「そうです。女王様になってもらいます」
「女王様?」
「はい、鞭とかでお客さんを叩いてもらいます」
「お金を払って叩かれにくる人なんているのかしら」
「正直この国にいるかはわかりませんが、いるのはいます」
「うーん」
「もうひとつはイメクラです」
「いめくら?」
「お芝居が得意な娘を集めてください。特定の設定を体験するっていう仕組みです」
「特定の設定?」
「例えばご主人様と給仕とか馬番と女主人とか。最初はあらかじめいくつか準備しておくほうがわかりやすいかもしれません。衣装もそれにあったものを準備してください」
「準備が大変そうね」
「残りの1つは今まで通りやってみましょう。ワイシャツデーをこちらの娼館で使ってもらって結構です。ほかにもチャイナドレスデーとか水着デーをやりましょう」
「ちゃいなどれす?」
「女王様の衣装と一緒になんとなくのデザインは教えるので作ってみてください」
娼業組合長も一緒にいた2人もそのときは俺の言うことがちんぷんかんぷんのようだ。
正直俺の知識がこちらの世界でどこまで受け入れられるか不安ではあるが、男の欲望の深さに期待しよう。できれば嬢たちにも新しい刺激を楽しんでもらえると嬉しい。
そうして俺の娼館大改革が始まった。
その後俺は総監督さながら娼館組合で指導に明け暮れた。
まあ、組合長がある程度適正をみて店ごとに嬢を選んでくれたのでそれほど苦労はしなかった。
高級店は心構えだけ教えればなんとかなったし、ダンスチームは特に獣人の嬢は目を見張りものがある。ドM、ドSに目覚めた嬢もそれなりにいた。
イメクラに関してだけは、なかなかうまくいかなかったが、まあこれはできるだけお客さんが何を求めてるかを探りながらやってもらうしかないだろう。
この大改革のためにアルカサルは5つの娼館全部まる1週間休業にした。
その間、変態紳士が娼館全部貸切にしてるとか、娼館の売上が下がって全部つぶれたとかいう噂もたったのだが、変態紳士が娼館組合の改革に乗り出し、何か新しいことを始めようとしている、というこの街には珍しく、正しい噂が広がっていった。
そして新規開店の初日。
普段は夜にならないと営業を開始しない娼館だが、その日は夕方から営業を始めることにしていた。一般客にはなじみのない新しい娼館については今まで通りの娼館で嬢が説明できるようにしておいた。
俺はというとパインさんの宿にいる。
「総監督が現場にいなくていいのかい」
パインさんが聞いてくる。店の入りは普段より少ない気がする。というか女性冒険者しかいない。
「ええ、やるだけのことはやりました。それよりそのせいでこっちの売上が落ちると悪いんで今日はここで」
「ありがとう。でもほんとにちょっと心配してるんだ」
「そこでちょっと提案があります」
「さすが街の英雄変態紳士様、抜け目がないね」
「この店を娼館の情報共有の場にするんです」
「というと?」
「軽食がでるとはいえ、それだけじゃお腹もすくだろうから、行きや帰りに酒場に寄る客は多いと思うんです」
「まあ、そうかな」
「そのときこの酒場に来て、どの店にどんな娘がいたらわかればみんな次に行くときの参考になるじゃないですか」
「なるほど」
「レビューです」
「れびゅう?」
「えっと娼館に行ったお客さんに、行った娼館と遊んだ娘の情報をなるべく詳しく書いてもらって、それを店頭で見れるようにするんです。個人的な点数をつけて」
「でも人によって好みが違うだろ?」
「そこです。だからいろんな人に書いてもらって参考にしてもらうんです」
「テンプレは用意しますからやってみませんか」
「てんぷれっていうのはよくわからないけど、まあそれでうちが潤うならお願いしてみるよ」
まあ、嬢にモンスターはいないから好みにそんなに差はでないと思うけど、ここまで手を尽くしたんでレビュアーアイデアはパクらせてもらおう。
娼館運営に確実に役立つし、なんだったら月ごとにまとめて娼業組合に売ってもいい。
その後娼館事業は大成功。
パインさんの店も噂になり大盛況。
俺は新たな伝説を生むことになった。
ただし、
街に住む女房たちには相当恨まれているらしい。
次はホストクラブでも作ろうかな。




