76.錬金術士エルフの郷
俺たちは捕縛されエルフの郷に連行された。
ユンも一緒に捕縛されている。
容疑は導き泥棒だ。
うん、ぐうの音もでない。
ピピたちは抵抗しようとしたが、ここは俺の一存で全員お縄につくことにした。
ファルコンはフラスコの中で眠っている。
ただ武装解除させられた際、バックラーの裏に仕込んである手引書まで取られてしまったので不安ではある。
エルフの郷の中に連れていかれると思ったのだが、郷の入口で捕縛されたまま待たされた。
エルフ以外は郷には入れないらしい。
しばらくすると偉そうなエルフが兵士を伴ってやってきた。
兵士を伴っているから偉そうに見えただけかもしれない。
「お前たち、ここがエルフの森と知っての侵入か」
「はい」
「お前たちの侵入により導きの消失が確認されている。心当たりがあるか」
「導きというものがあるということをこの森に入って初めて知りました。導きとは何ですか」
「それをお前たちに話す必要なない。ではお前たちは何故この森に来た」
「エルフの少女が街で奴隷商人に売られそうななったのを助け、郷に帰りたくないというのを説き伏せて連れてまいりました。それでまさかこのような扱いを受けるとは思いもよらず、エルフというものがこんな野蛮な種族だとは知りませんでした」
「何!」
エルフの兵士が色めき立つ。
「ユン以外の者の縄を解け」
「いいのですか」
「お前はこの者の言葉が理解できなかったのか」
「いえ、失礼しました」
なかなか話がわかるな、偉そうなエルフだが。
「無礼はお詫びする。また同族が迷惑をかけたようでこちらも重ねてお詫びする。導きが消えて少し慌ててしまったのだ。許して欲しい」
「いえ、こちらもエルフの仕来りがわからず、案内がいたとはいえ勝手に入ってしまってすいませんでした。ユンの縄も解いてはいただけませんか」
「それは叶いません」
「何故でしょう」
「こやつはエルフの郷を許可なく抜け出しました。縄を解いたらまた逃げ出すでしょう」
「ユン、逃げるのか」
「逃げない!」
偉そうなエルフは少し驚いたようだ。
「わかりました」
エルフの兵士は今度はすぐに縄を解いた。
「ありがとう、おじい様」
おじい様?だいぶ若く見えるけど。
「おじい様?ですか」
「おや、なにも聞いていないのですね。私はこの里の長ロイトと申します。この子は私の孫に当たります」
ユンちゃん、そりゃーだめだよ。いうなればあなたエルフのお嬢様じゃない。
「元気なお孫さんですね」
「元気過ぎて困ってます」
「ユン、じゃあ、俺たちはこれで帰るわ」
「え!ちょっと待って」
「だって歓迎されてないみたいだし」
「じゃあ、あたしも」
「ユン。まずすることがあるんだろ」
「え!えっと、おじい様。私しばらくエルフの郷を離れます」
「わけもなく郷を離れるのが許されていないのは知っているだろう」
「わけは、冒険者になることです!」
「そんな理由は認められない」
「なら出ていきます。戻らなければいいんでしょ!」
「ユン。俺は許可がでるなら連れて行ってもいいといったんだ。それじゃ一緒に行けない」
「だって」
「お前はなんで冒険者になりたいんだ。外の世界が怖いことはもうわかっただろう」
「うん。外は危ないことがたくさんあるのがわかった」
「だったらこのまま郷にいればいいじゃないか」
「でも、誰も外に行かないと外が危ないことがわからないでしょ。何が危ないか誰もわからないほうが郷にとってイケナイ気がしたの」
「ユン、我々がポーションを世界に供給する限り我々に危害が及ぶことはないんだ」
ロイトはやれやれという感じでユンに話す。
「果たしてそうでしょうか」
「ちょ、ご主人様、余計なこといわないでにゃ」
「そうです。我々は何百年もそうして世界を守ってきました」
「あなた方が世界を守ってきたんですか」
「そうです。外の世界は放っておけば争いが絶えません。特に人族の欲望は尽きることがありません。争いが激化しないように介入して、外の世界の均衡を保ってきたのです」
「ならば人族なんて放っておいて、自滅させてしまえばいいじゃないですか。エルフが介入する必要がありますか」
「それは・・・」
「魔族だけの世界になれば、ポーションなんて必要じゃなくなるから、楽になりますよ」
「別に楽をしたいわけではない」
すると兵士が横から口を出してきた
「人族がなにを偉そうに。なら我々のポーションを使わなければいいだろう」
「きっとエルフの考え方はこの兵士に代表されているんでしょう。奢りが生まれそこに差別が生まれる。世界の差別の根源がここにある」
「いや、エルフは差別など」
「いえ、エルフは高慢ちきです。差別意識はないといいながら、行動に差別が滲み出てるんです。だからここが差別の根源です」
「そんなことはない!」
「これがここと外界の差です。エルフの存在意義は世界にポーションを供給すること、これは多分そうなんだと思います。だからって自分たちが世界を守ってるなんて思い上がりも甚だしい。ポーションがなくなればなくなったで外界はどうとでもなるでしょう。
ただそうなったとき、あなたたちは自分たちが必要なくなったのかも知らないまま、この郷で朽ちていくことでしょう」
「だから外界と繋がる必要があると」
「いえいえ、そこまで言ってません。だいたいエルフが滅んでも私にとってはどうでもいいことです。ただ今ユンの冒険を許してくれるといいものあげちゃいます」
「いいもの?」
「誰にもいわないでくださいね」
そういってロイトにソーマを渡した。
「あなたならこれがなんなのかわかるでしょう。世界にはまだあなたの知らないことがたくさんあるんですよ」
「これは!ソーマ・・・」
それをひょいと取り上げる。
「で、どうします?」
「どうって、ああ、ユンか。許す。外の世界を見聞きし、それをエルフの郷のために活かせ」
「いいの!ありがとうおじい様。あたしいろいろ回ってきっと郷の役に立てるようにするよ」
「ああ。決してソーマが欲しいからではないから、そこは勘違いしないように」
その後ロイトにしつこくいろいろ聞かれたがのらりくらりとかわし森の入り口まで送ってもらった。
なんなら泊まっていくかとまでいわれたのだが、次の機会にとっておこう。




