73.錬金術士キキョウの正体
あとはレンジだ。
他の子供たちは魔法が発生して、楽しそうに修練してるのに、毎日一所懸命頑張っているが未だに発生しないようだ。
やはり素質が必要なんだろうか。
俺ならとっくに諦めてる。
頑張りすぎてイヤになる前にちょっと息抜きさせてあげよう。
「おーい、みんな。集まってくれー」
「はーい」
「今度ユンが冒険者になるために一度エルフの郷に帰ることになった」
「そーなんだ」
「ユンちゃんがんばってね」
「みんなも魔法の修業を頑張ってるし、今日はお兄さんたちの演武を見せてあげようと思う」
「えんぶ?」
「ご主人様、いつも急にはじめるにゃ」
「ん」
「はわ、演武なんて何すればいいです?」
「ザクロ!」
「はいです」
「ミケに土魔法、石つぶて!」
「は、はいです」
「にゃ!」
ザクロの石つぶてをミケが華麗に避ける。
「ミケちゃん、すごーい」
「ザクロ、大きめの土人形作れるか?」
「はいです」
「ミケ、土人形に必殺技だ」
「まかせろにゃ」
ミケが土人形に向かって飛び上がる。
「ローリングスラストにゃー」
回転しながら短剣を突き立てる。
「ミケちゃん、かっこいい!」
「にゃはははは」
「ザクロ、次はピピように何体か作ってくれ」
「はいです」
「ピピ!なんかかっこよく壊してくれ」
「ん」
ピピがモーニングターを回しながら土人形を破壊していく。
「ザクロ、ピピに石つぶて」
「はいです」
ピピは土人形を破壊しながら飛んでくる石つぶてをモーニングスターではじく。
「ん!」
ピピの弾いた石つぶての1つが子供たちに向かう。
「危ない!」
いち早く動いたのは、演武を見ながらも手に集中していたレンジだ。
カチン!
飛んできた石つぶてがレンジの掌にぶつかる。
「あれ、痛くない」
「レンジ!だいじょうぶ?」
「ぜんぜん大丈夫。俺の手おかしくなっちゃったのかな」
「やれやれ、それこそが金魔法じゃ」
「キキョウさん」
「レンジ、お前はとっくに魔法が使えてたんじゃよ」
「そうなんですか」
「金魔法はあまり使われんからな。まあ知らなくとも仕方ないか」
「はわわ、すいません。よくわかってなくて」
「ザクロとかいったな。お前ダークエルフのくせにキキョウの名を知らんのか」
「え?キキョウさんて、まさかあのキキョウ様のことなんですか?」
「ザクロ、どういうことだ」
「ダークエルフが使える魔法はせいぜい2種類です。相反する魔法は使えないとされてるです」
「うん、それは前に聞いた」
「ですが光を除く6種類の魔法が使えるという伝説の魔法使いがいたそうです。その人の名前こそ、キキョウ。六魔のキキョウ。伝説だと思ってたです」
「キシシシシ、それがわしじゃ」
おいおい婆さん。見た目だけじゃなくて本当に伝説だったのかよ。
「お主たち、多少は魔法のことがわかってるようじゃが、まだまだじゃ。これじゃ子供たちの才能も宝の持ち腐れになっちまうよ」
「キキョウさん」
「いいかい、お前たち。よくお聞き。木魔法は成長の魔法。体力や気力を回復する。火魔法は攻撃の魔法。敵を焼き尽くす。土魔法は守りの魔法。壁を築き仲間を守る。金魔法は力の魔法。己の体を鋼に変える。水魔法は浄化の魔法。毒を癒す」
なんか急に元気になってきたぞ、この婆さん。
「うちの子たちをこんな素人に任せてはおけないよ。これからはわしが教えよう」
「キキョウさん、いんですか」
「まったく、こんなひどい修練を見せてわしをやる気にさせるなんて策士だねえ」
「えーと、それでいいです。でも約束は守ってもらいますよ」
「やっぱりわしのからだ目当てかい」
ちげーよ!子供たちの前でそんなこというな。
「キキョウさんと子供たちはマナルスに行ってもらいます。少なくともここよりはいい暮らしができると思います」
「こんな年寄りを故郷から追い出そうってことかい」
あんたの故郷ここじゃないよね。
「わしは構わんよ。この子たちもこの国に未練はないじゃろうて」
「そうですか。それを聞いて安心しました」
その後はユンのお別れ会ということで宴会だ。
俺のお金でだけど。
『バウ!オレそろそろ出番?』
別に放っておいたわけではないが、ファルコンが寂しそうだったので、演武が途中で終わってしまったこともあり、子供たちに触らせてあげた。
ファルコンも子供たちも大喜びだったのでよしとしよう。




