72.錬金術士エルフを説得
翌日も翌々日も孤児院で1日の大半を過ごした。
ユンはすっかりなじんでいるが、レンジの魔法だけ発生しないようだ。
ほかの子たちは毎日の修練により、魔法の扱いが目に見えて上達している。
さて
ユンを無理やり捕まえることは可能だが、エルフの郷に帰すのは簡単にはいかないだろう。
そもそもエルフの郷ってどこだよ。
「ミケ」
「にゃ」
「エルフの郷ってどこにある」
「エルフの郷はエルフの森にあるにきまってるにゃ」
「そのエルフの森はどこにあるんだよ」
「エルフの森はエルフの森にゃ」
「お前さん、そんなことも知らんのか」
ミケと不毛な会話をしているとキキョウさんが教えてくれた。
エルフの森はこの国の北にある。
森自体は馬車で5日ほどのところにあるらしい。
ただその森は非常に広大で、エルフ以外が森からエルフの郷に行くのは不可能だとされている。
魔物こそでないが森の中には道があるわけではなく、まず間違いなく道に迷うそうだ。
つまりエルフの郷に行くにはユンの協力がなければ不可能。
エルフに偶然会って道案内してもらう、なんてことは期待できない。
エルフがポーションを国に運ぶ時に一緒に連れて行ってもらうという選択肢はあるが、結局無理やり引き渡すということになってしまうので、解決策にはならないだろう。
ここはユンが自発的に帰るように仕向けないといけない。
奴隷商人に捕まってもあまり懲りてないようだから、エルフの郷の外が、どれくらい危険かわからせるか、それでも冒険者になりたいなら親の許可を取らせるかだな。
「ユン」
「なーに?」
「ユンはどうして冒険者になりたいんだ」
「えっと、冒険者になりたいから!」
「そっか。エルフの郷にいたのに、なんで冒険者なんて知ってるんだ?」
「えっとね、郷に迷い込んだ人がいて、その人は郷で助けてあげたんだけど、他の人ははなしちゃいけないっていわれたんだけど、ユンはその人から郷の外の話しをいろいろ聞いたの」
「そっかそっか。でも郷の外は危ないと思わなかったのか」
「えっと、冒険者は危険を乗り越えるから大丈夫なの」
「お前、乗り越えてないよな?」
「でも、これから冒険者になるから、これから乗り越えるから」
どうやら外の世界に触れてしまって好奇心が抑えられなくなっちゃったんだな。
「ユンはいくつだ」
「16!」
微妙な年齢だな。というか随分若く見えるな10歳くらいかと思ったぞ。
「15から冒険者になれるんだよね!」
うーん、年齢制限で諦めさせようと思ったんだがダメなようだ。
「よく知ってるな」
「うん、その人に教えてもらったの」
「その人は1人だったのか」
「うん、その時は1人だった。仲間とはぐれちゃったんだって」
「そうだな。冒険者には仲間が必要だ。1人じゃ危険だからな。ユンの仲間はどうする?」
「うん・・・。冒険者になってから探そうかな・・・」
よし、だいぶテンションがさがったな。
「子供のエルフを仲間にしてくれるかな」
「うん・・・。でも回復魔法も使えるし」
「みんなポーションを持ってるから、回復魔法はそんなにいらないんじゃないかな」
「でも。ポーションはエルフが作るし・・・」
「ユンはポーション作れないよな」
「うん・・・」
「もしユンを仲間にして、あとからエルフの郷に怒られて、ポーションもらえなくなったら仲間が困るんじゃないか?仲間を困らせてもいいのか?」
「それはダメだけど、ユンを仲間にしても怒られないよ」
「本当か?エルフの郷にちゃんと冒険者になるっていったのか?」
「えっと、ダメだっていわれたから」
「なんでダメだっていわれたんだろう」
「わかんない。エルフは冒険者なんてならなくていいって。郷で暮らせって」
「かといって勝手に出てきたらだめだろ」
「でも、ダメだっていうし、ユンもう子供じゃないし」
「でも危ない目にあっただろ」
「それは・・・、仲間がいなかったからだし」
よしよし、これだけ言って聞かせれば世間の怖さもわかっただろう。後は一緒に郷まで連れて行って、その後のことは郷に任せよう。
「そうだ!おじさんが仲間になってよ!」
「え?」
「ねー、ザクロちゃん」
「はいです?」
「ユンも仲間にして!」
「はい、いいですよ」
おい、ザクロさん。いつからお前はそんな権限を持つようになったんだ。
「ミケちゃん」
「にゃ」
「ユンも仲間にして!」
「もちろんにゃ!」
ミケ、お前にはその権限はない。絶対だ。
「ピピ姉さん」
さすがにピピは断るぞ。子供とはいえエルフだからな。
「ん、わかった」
いやピピさん、まだ聞いてもいないですけど。
「ね!」
ね、じゃねーよ。
「わかった。ただし、条件がある」
「なんでもいって!」
「一度郷に戻って許可を得たら正式に仲間として認める」
「そんなの無理だよ」
「親を説得もできないなら冒険者にはなれない」
「ん、そういうこと」
あれー、ピピさんも結構勝手に抜け出したクチだよね?
もしかしてユンを自分に投影しちゃってる?
まあ、仲間云々は置いといて結果オーライだ。
「どちらにしろ、一度郷に戻って無事でいることは知らせた方がいいだろ。きっと心配してるぞ。一緒にいってやるから」
「うん、わかった」
「行きがてら俺たちの冒険の話しも聞かせてやるよ」
「ほんと!じゃあ、行く!すぐ行こう!」
ちょろいな。




