69.錬金術士安い依頼
奴隷商館は5つもあるので回るのは大変だと思い、とりあえず冒険者組合に行ってみた。
2つあるうちの庶民向けの方だ。
街が大きいだけあって冒険者組合の作りも立派だ。
「こんにちは、この街初めて来たんですけどどんな依頼がありますか」
特級冒険者登録証を受付に提示して聞いてみた。
「こんにちは、特級冒険者でしたら山の手の冒険者組合にいかれてはいかがですか。こちらは報酬も含めてたいした仕事は紹介できませんよ」
受付のお姉さんは親切に教えてくれた。庶民向けの冒険者組合でこれだけ美人だと山の手の冒険者組合はどんだけなんだ、と思うような美人さんだ。
「そうですか。あとで顔は出すつもりですけど山の手の冒険者組合とここだとそんなに違うんですか」
「そうですね、依頼の内容もそうですけど報酬額が全然違います」
「だったら、みんなそっちに行っちゃうんじゃないですか」
「ええ、腕に自信があれば。そもそも上級冒険以上でないと建物に入ることも認められてませんが、金持ちの道楽に近い依頼が多いので難易度が高いんですよ」
「へー、例えば?」
「最近話題になったのはグリフォンの羽が欲しいというものでした。合法的に達成するには魔法生物組合の登録証が必要なうえに堅物で有名なエルフの組合長の許可まで取らないといけません。難易度の高いのがおわかりでしょう」
「ええ、確かに」
持ってますけどね。
「ですので合法的な手段をとらない冒険者もいるようですが、あっちは依頼さえ達成されれば手段は問わないみたいなんです」
「なるほど、なら私はこちらの冒険者組合向きですね」
そういうと受付のお姉さんはにこっと笑った。
「そういう冒険者ばかりだといいんですけど」
よし、いい感じなんでもう少しいい人アピールをしておこう。
「せっかくなんで何か依頼はありませんか。報酬は気にしません」
そういうとちらっとザクロをみたお姉さんがちょっといいずらそうに
「実は、子供の依頼なんですけど。魔法が使いたいって」
「ずいぶん変わった依頼ですね。魔法は忌み嫌われてるって聞きましたけど」
「ええ、変わった子なんです。人族なんですけど何故か魔法に憧れてるみたいで」
「親御さんが嫌がるんじゃないですか」
「それは大丈夫です。孤児院の子なんで」
一応ザクロの了解を得て、俺たちはその依頼を承諾した。
報酬は銅銭貨10枚。
受付のお姉さん曰く、孤児院の子が稼ぐには結構な金額でその子の本気度が伺えるとのことだ。
折角だからタイガーマスクごっこでもやろうか。
受付のお姉さんが教えてくれた孤児院は下町のさらにはずれにあった。
治安もよくなさそうだ。
空き地に建てられたちょっと広めの掘っ立て小屋。
そんな建物だった。
世が世なら地上げ屋に立ち退きを迫られていそうなところだ。
ただ、こういう孤児院には可憐で薄幸なお姉さんがいて子供たちの面倒をみているものだ。
ほんのちょっと期待して中に入ると
「なんだいお前さんたちは」
背の低い婆さんが現れた。
一気にやる気を削がれた。
帰ろうかしら。
「あの、冒険者組合の依頼で来ましたです」
「あー」
期待を打ち砕かれて呆然としている俺に代わってザクロが説明してくれた。
「おい!レンジ!レンジ!」
婆さんが体に似合わぬ大声を出す。
すると痩せこけた男の子が掘っ立て小屋っから出てきた。
「お前にお客さんだよ」
「よー!」
「おじさん誰?」
「錬金術師だ」
「うでひしぎじゅうじ?」
お前耳にも栄養足りてないんじゃないのか。
「冒険者組合から来た」
「え!そうなの!ちょっとこっちきて!呼んでくるから!ちょっと待っててね」
慌ただしく俺たちを掘立小屋の中に案内すると、女の子を伴って戻ってきた。
「こいつも一緒にお願い。妹のプルア」
「何?お兄ちゃん。なんなの」
なぜ二人。
「2人なら依頼料は2倍だ」
「ご主人さま・・・、大人げないにゃ」
まあ、教えるのは俺じゃないがな。
「わかった。じゃあプルアだけ教えてくれ」
「ちょっとお兄ちゃん、何を教えるの」
「プルア、俺たちは冒険者組合から魔法を教えてほしいという依頼を受けてきた」
「え!あ、はい」
「プルア、なんで魔法を覚えたいんだ」
プルアがたどたどしくもしっかりと理由を説明してくれた。
ザクロはすぐに気付いたようだが最初にあった婆さんはダークエルフだ。
キキョウという名前だそうだ。
ここマッターでもダークエルフの地位は非常に低い。
そのためこの孤児院もいわれのない迫害を受けることが多いそうだ。
ただ子供たちはダークエルフが迫害されることが理解できず、魔法を使うから差別されるのだというなら、自分たち人が魔法を使えるようになれば、ダークエルフに対する迫害がなくなるのではないかと考えたそうだ。
「泣かせる話しだにゃー」
ピピとミケはそんなプルアの思いに感動している。
ザクロは実際泣いている。
「はうう、わたし、頑張って魔法教えます」
「プルア、じゃあ、この孤児院にいるみんなで魔法を覚えるのか」
「はい!」
「全部で何人いるんだ」
「今は6人です」
「人族だけか?獣人とかはいないのか」
「人が一番子供に対して無責任じゃからな」
いつのまにか婆さんが後ろに立っていた。
「やれやれ、レンジがまた悪だくみしてるのかと思ってきてみたが、まったくお前たちは」
「で、どうします」
「どうとはどういうことじゃ」
「一応保護者の許可をとっておこうと思いまして」
「はは、できるもんならやってみんしゃい」
「あれ、できないと思ってます?」
「できるわけないじゃろう」
「では、みんなが魔法を使えるようになったら、この孤児院ごと貰い受けますけどいいですか」
そういうとチラとザクロをみて
「おうおう、いいとも。ついでにこの体も捧げてやるわい」
おい、婆さん。調子に乗るなよ。いらんわ!
「よし、プルア。みんなを集めろ」
こうして魔法教室がはじまった。




