70.錬金術士魔法教室
孤児院の子供はレンジが一番年上で11歳。もう一人同い年の男の子がいる。レンジと違い大人しそうだ。
その下にプルアが9歳。
8歳の女の子が2人。6歳の男の子が1人だ。
赤ん坊がいなくてよかった。
「お前たち、キキョウさんを助けたいか?もし助けたいと思っていないなら魔法は教えられない。今すぐ抜けてくれ」
そういって見回すと子供たちは全員うなずいた。
「よし、次に魔法なんてどうせ使えないと思ってるやつは絶対に魔法は使えないから、やっぱり抜けてくれ」
そういうと子供たちが少し動揺したようだ。
「いいか、お前たちは子供だ。力もないし、お金もない」
みんな俯いてしまった。
「だけどお前たちは信じることはできる。必ず魔法が使えると信じるんだ。できるか?」
「はい!」
「よし」
子供は単純だ。単純だからこそ、子供の今だからこそ魔法は使えるようになる。
俺は勝手にそう思った。
「クロ」
「ピ」
「みんなサラマンダーは知ってるな」
「そんなの知ってるよ」
「じゃあサラマンダーは何で火を吐けるんだ」
「え?そ、それはサラマンダーだから」
「クロ、ちょっと普通の火を吐いてくれ」
そういうとクロが小さな炎を吐いた。
「ザクロ」
「はいー」
「ちょっと火を出してくれ」
ザクロの手に火が灯る。
「おー」
みんな魔法を見るのは初めてだそうだ。
「魔法というのは空気中にある魔素から作られる」
「まそ?」
「そうだ」
「ザクロもクロも魔素を火に変えたんだ」
「ザクロ、次は土だ」
「はいー」
ザクロは手から石つぶてを飛ばした。
「おー」
いちいち驚く子供たち。
「今度は魔素を石に変えたんだ」
子供たちは素直だ。見たままをそのまま受け入れる。
「ザクロはダークエルフだから火と土の魔法が扱えるが、人は1つしか使えない。だから自分が何の魔法が使えるか、それがわかれば魔法は使える」
「おー」
「俺、火がいい!」
「ほかに何があるんですか」
「うむ、火と土のほかに水と木と金がある。それに光と闇がある。水は水を生み出す。ウンディーネを知ってればわかりやすいだろう。木は成長を促す。金はごめん、よくわからない。光は回復、闇はその逆だけど、これもよくわからない」
「なんだよ、わからないばっかりじゃないか」
「そうだ。魔法はわからないことが多いんだ。だからわかろうとしてもダメなんだ。じゃあどうすればいい」
「信じるしかない」
「そうだ。考えてわからなくても信じて突き進め」
「はい!」
「よし、じゃあ次は魔素について」
そういって俺は手引書から気体の魔素をだした。
「これが魔素だ」
子供たちが目を凝らす。
「見える?」
「見えない」
「そうだ。魔素は目で見えない」
「えー、じゃあどうするんだよ」
「感じるんだよ」
「そんなの無理だよー」
そこで弱エーテルの登場だ。子供なんでちょっとにしよう。お猪口一杯分くらいかな。
「これは魔素を感じやすくなる薬だ」
「えー、薬」
さすが子供だ。薬に対する拒否感が強い。
「別に飲まなくてもいいぞ。薬なしでも魔法は使えるからな」
「あたし飲みます!」
「あたしも!」
結局薬を飲まなかったのはレンジだけだ。
こいつなにげに強情だな。
「薬を飲んだら手のひらを上にして、そこに集中するんだ。そのとき魔素を手に集める感じにして」
そういって俺は魔素の膜を張った。
弱エーテル、濃い魔素、信じる心。ある程度才能があれば多少の魔法は発生するだろう。
最初に手のひらから木が生えてきたのはプリアだった。
「出た!出たよ」
「プルアちゃん、すごーい!」
その後、休憩、集中を繰り返しレンジ以外は多少の差こそあれ魔法を発生させることができた。
「よし、今日はここまで。時間があるときはずっと練習するんだぞ」
「はい!」
レンジ以外は元気よく返事をした。
「じゃあ、明日の午後にまた来る」
その日はそこで終了した。
明日は王宮に挨拶にいってからこっちに来よう。
最悪キキョウ婆さんがいれば、わざわざいるかいないかわからない奴隷のダークエルフを探す必要もないだろう。




