43.錬金術師お供の正体を知る
ブッシュはそのままマカルー王を抱えて玉座に向かう。
しきりに何か話しかけている。
王の寝室から玉座まではそれほど離れていない。
異変を聞きつけたピピとミケはすでに玉座の脇で待っていた。
フードを被ったザクロも一緒のようだ。
「おい、ザクロ。王様にポーション飲ましていいか」
「あの、あの、やめたほうがです。エーテルとポーションが体内で混ざるとどうなるかわからないです」
しばらくすると玉座に続々と城内にいたマカルーの家臣たちが集まってくる。
衛兵はブッシュに剣を向けている。
ブッシュはそんな衛兵を無視して
「宰相はこのインプが化けていた。王はこの通り救出された!」
家臣たちがざわつく。
お前ら騙されてましたといわれて、はいそうですかとはならないだろう。
「誰だお前は!」
衛兵の一人がブッシュに声をかけると、周りに集まっていた給仕が一斉にブッシュの前に集まり、跪いた。
「我はローツェ王。ブシューロイ・ローツェである。朋友の危機を救うべく、ここマカルーに参上し、わが友グラシリスを救い出した」
すでに給仕たちは隣国の王のもとに跪いている。
顔を知っていたのだ。
その他の家臣たちが一斉に跪く。
あれー、俺たち騙されちゃったかな。
俺たちも跪いたほうがいいのかな。
でも俺インプ吊ってるしな。
ピピをみるとどうしたもんかという顔をしているがミケはしっかり跪いている。
こいつ変わり身が早いな。
ザクロはなぜか一人であたふたしている。
ちらっとブッシュ改めローツェ王を見るとこちらにウインクした。
ウインクしてんじゃねーよ!
少し偉そうなマカルーの家来がローツェ王に話しかける。
「ローツェ王。この度はこちらの不祥事にかかわらずご尽力いただいたことに感謝いたします。宰相が魔物だということに気付かず、我々一同取り返しのつかないことをしてしまいました。これからどうすればよろしいでしょう」
「うむ、まずマカルー王の健康回復に城内のものは尽くせ。ここなへんたいしんしとその仲間たちが力を貸してくれるであろう。また国内が疲弊しておる。民に広く城内に潜んだ魔物が退治されたことを伝え、もとの活気がもどるよう全国民で力を合わせよ。我が国もそのための協力は惜しまん」
「ははっ」
だから錬金術師だってば。
「ここに我が国とマカルーの戦争終結を宣言する」
「ははー」
すぐにローツェ王はマカルー王を寝室に戻す。
「兄貴、この病気、なんとかなりませんか。」
「やめてください、王様。それにしてもひどいですよ」
「すまない。こうでもしないとここにはこれないと思ったんだ。でもこれからもよろしく頼む」
「そりゃー王様に頼まれれば嫌とはいえないですけど。そんなことより今はマカルー王です」
「うむ」
「ザクロ、お前にも責任の一端はあるんだ。こういう場合はどうすればいい」
顔に痣の浮かんだマカルー王の顔を覗き込みザクロが答える。
「はい、この痣を見る限り、すでに体内にエーテルが溜まってるです。これ以上エーテルを取り込まなければ、体力さえあれば回復すると思うのです。エーテル中毒であるのは間違いないです、この痣さえ消えればあとはなんとかなるはずです、はい」
エーテル自体は毒ではない。ただ人に合わないだけだ。またポーションも万能薬ではない。体力や怪我の回復には使えるが、体内のエーテルを排除できるかといえばそれはできないらしい。
だったら万能薬を作ればいいか。
「ザクロ、万能薬とかエリクサーとか作れないのか」
「はわわ、エリクサーなんてよく知ってますね。エルフとダークエルフでもほんの一部の人しかしらない薬ですです。その昔、エルフもダークエルフも、人も魔族も分け隔てなく暮らしていた時代にはあったという話は聞いたことあるです。ほとんど伝説です」
あるんだ、エリクサー。
「で、製造方法は」
「あの、あの、伝説なのです。エルフとダークエルフが協力して作った薬だってことは伝えられてるですけど」
なるほど、今のエルフはポーションしか作れない。ダークエルフはエーテルしか作れない。つまり材料は聖素と魔素で間違いない。そして俺なら作れるだろうな。
半々でいいだろう。
「合成、聖素50%、魔素50%」
『ソーマの合成に成功しました』
あら、エリクサーじゃなかった。
「エリクサーがあれば治ると思うか」
「はいー、エーテル中毒は治るはずです。ただ体力がだいぶ落ちてるみたいですからそれが治ったとしても・・・ですです」
「ソーマって知ってるか」
「はわわわ!あなた一体何者ですです?ソーマはエリクサーの原液って言われてるです。エルフの里、ダークエルフの里にほんの少しづつ残ってるらしいですけど、だれも見たことはないです」
純正聖素を薄めてポーションなんだからこのソーマも薄めればいいか。
そのまま飲んだら死人も生き返ったりしてな。
「合成、ソーマ50%、水50%」
『エリクサーの合成に成功しました』
「王様、エーテル中毒についてはわからないことが多く、治るかどうかはわかりません」
「だが、エリクサーというものがあれば治るのだろう?」
「はい、治るかもしれないし、もしかしたらもっと悪くなるかもしれません。試してみますか」
「試すって、あるのか?エリクサー」
「今作りました」
ザクロが騒ぎ出す。
「はわ!ちょ、エリクサーがそんなに簡単に作れるわけないです。私は今までずーっと研究してきたです。ソーマはどうしたですか!」
「ああ、ソーマも作った」
「本当にそれはエリクサーなのか」
「はい」
手引書がいってるから。
「よし、試そう。いいなグラシリス」
マカルー王が頷いた、ような気がした。
手引書からエリクサーを近くにあったグラスに注ぐ。
ザクロがそれをまじまじと見ている。
エリクサー金色だよ。
それをローツェ王に手渡す。
「グラシリス、大丈夫だ。少しづつな。ゆっくり飲んでみろ」
一口、二口飲むとマカルー王がうっと唸る。
「グラシリス!大丈夫か」
するとみるみる顔の痣が消えていった。
さすがエリクサー。すごいね。
「おお!グラシリス!痣が消えていくぞ!もう大丈夫だ」




