44.錬金術師騙されて拗ねる
「兄貴、ありがとう」
「王様、だからそれやめてくださいって」
「いや、この国だけでなく、グラシリスまで救ってくれた。兄貴はやっぱり兄貴だよ」
俺たちはマカルー王の様態が少し落ち着いたのでとりあえず部屋に戻っていた。
「いくつか確認させてください」
「おう、なんでも聞いてくれ」
「最初から騙す気でした?」
「いや、アルカサルの宿でも話したが一人でもマカルーに行こうとしてたのは本当なんだ。そのとき言っていた周りがっていうのは家臣たちだが絶対に認めてくれなくてな」
それは当たり前だろう。一国の王が友達助けに行くからあとよろしくってわけにもいくまい。
「そこでお前たちの噂を聞いてな。協力してもらえるんじゃないかと思ったんだ。なんとか家臣たちを説得して、1週間だけ、へんたいしんしが一緒に行く、何があっても身分は明かさない、という条件で行けることになったんだ」
だから錬金術師です。
「マホギーさんの庭でいきなり襲ってきたのは」
「ああ、あれは悪かった。個人的にお前の実力が知りたかったんだ」
「本気でした?」
「本気も本気。家臣たちも俺が負けると思ってなかったんで見直してたぞ」
「俺がここに来るのを断ったらどうしようと思ったんですか」
「いや、それは手を変え品を変え、な。でも娼館無料証であっけなく落ちたから」
「ん」
「にゃ」
「はわ」
ピピさん、ミケさん、今まで話を聞いてなかったじゃない。なんで急に反応するのかな。
ザクロさんはなんで反応したのかな
「ん、ん、ん」
「にゃ、にゃ、にゃ」
二人とも近い近い。
「大丈夫、そんなのないからな」
「えーーーーー!」
「いや、さすがに王がそんなの発行するわけにもいかないだろう。職権乱用にもほどがあるしな」
「むふ」
「にゃむ」
「はわー」
何事もなかったように二人は戻っていった。
ザクロさんも一緒に。
しかし。
王様といえどもその嘘は絶対に許さない。絶対にだ!
「ちゃんとそれなりにお礼はするから。そこは許してくれ。どうだ王宮付きの冒険者とか」
「いえ、結構です。もう帰るんで、牢獄の魔溜まりはそっちで何とかしてくださいね」
「悪かったよ。頼む!最後まで付き合ってくれ」
「ん」
「そうにゃー、王様の頼みを断るなんて許されないにゃー」
こいつら王様の味方だな。
「まあ、そこは最後までやりますよ。給仕が協力的だったのは顔を知ってたからなんですね」
「ああ、この城には何度も来てるからな。宰相がおかしいと思っている家臣は多かったから、顔を見せるとみんな協力してくれたよ」
俺のAチーム作戦が功をなしたわけではなかった。そこも残念だ。
「最後に、ザクロの身体はこちらで預かりますがいいですよね」
「ダークエルフだぞ。いいのか」
「罪を擦り付けられて処刑されてもかわいそうですし。それくらいの我儘は認めてもらいますよ」
「はわ、私処刑されるのでしょうか」
錬金術の知識を高めるのにザクロは絶対に役に立つ。魔族の知識もありそうだしな。
ちょっと頼りなさげだが。
将来的には魔族の国にもいってみたい。サキュバスとかいるかしら。
「わかった。ダークエルフの存在はほとんど隠されていたようなものだしな。なんとかなるだろう」
「あの、あの、私処刑ですか」
こうしてローツェとマカルーの戦争は終結した。
塔に閉じ込められていた先王の后やシダーさんの家族その他大勢は解放された。城内にいた金で集められた宰相の手下は追放され、シダーたち元親衛隊が呼び戻された。
仮の宰相も決められ、マカルーは再生のために動き出す。




