表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/110

33.錬金術士誘惑に勝つ


アルカサルに戻ってローザンヌさんに手紙を渡す。

結局明日また向かうことになってしまった。

少し休みたい。

明日は確実に襲撃されるだろうと思うと気が重い。

「ミケ、敵が襲ってくるとしたらどこだと思う?」

「にゃ、アルカサルとマルボルクの丁度中間位のとこで通った森の中の道で間違いないにゃ」

多分そうだろう。

あとは敵の規模が問題だ。

オーキストさんに拠れば街道以外から国境を越えるとなると徒歩で移動するしかないだろうということだった。

既に侵入していたとしても、大人数だと目立つだろうから、少数精鋭で来るだろう。

多くても10人。ただ前回の野盗とは違い正規の兵士だとこちらはまともに戦える筈もない。護衛といっても所詮冒険者。勝てるはずがない。

俺の能力がどこまで知られているかわからないが警戒はされてるだろうな。

しっかりピピとミケに守ってもらおう。



翌早朝


ローザンヌさんの商館。

「よく1日で作れましたね」

「すでにあったものをちょっと改造しただけよ」

俺はローザンヌさんに特別な荷馬車を作るようお願いしていた。

以前馬車5台でドワーフの村から装備を運んだが、それを3台で積みきれるくらいの大きさの馬車だ。

馬車5台になるとどうしても縦に長くなる。

護衛するとなるとそこは短くしたかった。

本当は1台でにしたいが、流石にそこまで大きいものは無理ということだった。

それに馬車が重くなった分、馬では運べないのでノームに運んでもらうのだが、ローザンヌさんのところには3匹しかノームがいなかった。

ここのノームはカリバーと違い大型なので、まさに普通のカバ位の大きさだ。

小さくてもどんな重い物も運ぶノームだが、大きければその分歩幅が大きくなるので歩くスピードも速くなる。

といっても成人男性の早歩き程度の速さにしかならない。

その馬車にはちょっとした仕掛けがあるのだが最後に俺がそれを仕上げる。

馬車に鉄格子を付けたのだ。

荷馬車に鉄格子が乗っかっている感じなので、相当重くなる。

それもあって馬ではとても曳けない状態だ。

ぱっと見は罪人を護送するような作りだが、革製の幌をかけるのでそれほど変ではない。


「では、行ってきます」

「気をつけてね」

ローザンヌさんの見送りで俺たちはマルボクルへ向けて出発した。

今回もトネリコさんが一緒だ。

他に御者が3人、護衛の上級冒険者が6人。

冒険者組合で出した依頼は急なこともあり、なかなか集まらなかったのだが、チェダーさんの働きと報酬が金貨2枚ということもあり、なんとか集めることができた。

それも上級だ。

上級冒険者にもなると、そこらへんの兵士にも引けは取らない実力がるらしい。

ただ、今回の依頼にはなにがあっても俺に従うという条件をつけてもらった。

できれば人死にはだしたくない。

出発の前の打合せでは、冒険者たちは不服そうだったが、依頼の条件にもあったので渋々従ってくれた。


そろそろ中間地点の森の道へ入るというところでキャラバンの前方で女の人が倒れている。

普通の馬車なら避けられたかもしれないが、今回の馬車では小回りが利かない。

1番馬車に乗っていた俺が、倒れている女性に駆け寄る。

「どうしました、大丈夫ですか。危ないですよ」

そういって、女性を抱きかかえとりあえず街道を開ける。

「すいません、急に具合が」

そういって女性が俺をみると急に眼を輝かせて

「もしかして、あなたは今街で話題のへんたいしんしさんではありませんか」

「いえ、錬金術士ですが」

「ああ、あたしは運がいい。こんなところで有名なへんたいしんしさんに会えるなんて」

そういって俺にしがみつく女性。

ただでさえ歩みの遅いノームなので、こんな所で止まっているわけにもいかない。

「すいません、先に行っててください」

そういって、先に行かせることにした。

「ん?」

ピピは心配そうだったが、荷物と一緒に先に行かせた。


さて。

なかなか綺麗な女性だ。スタイルもいい。

具合が悪いはずだが何故かずっとしがみついて話し続けている。

「とりあえず、これを飲んでください。ポーションです」

「ポーションなんて、こんな高価な物。ありがとうございます、ありがとうございます」

俺にしがみつきながらポーションを飲む女性。純正ポーションなんですぐに元気になるはずだ。


「じゃあ、急いでるんで」

「待ってください、是非、お礼を。何にもありませんがこんな私でよければ」

そういいながら服を脱ぎ始める。

さすがにここでおっぱじめられないので鎖で拘束することにした。

「ムチムチソード!」

いきなり鎖で雁字搦めにされて驚く女性。

「え、な、何するの」

「さて、誰に頼まれたんですか」

「え、何?なんのこと、あたしはただお礼をしたくて」

ここで時間を取られるのも面倒くさいので手っ取り早く脅すことにした。

ムチムチソードから溶けた鉄を地面にぼとぼとと垂らす。

「これ、溶けた鉄です。あなたは今動けない。これをかければ骨も残りません」

「ひ、ひー。やめ、やめてください」

「同じこというのイヤなんですけど、最後にもう一度聞きますね。誰に頼まれたんですか」

「ひー、ごめんなさい、ごめんなさい。知らない男に、頼まれて。噂のヘんたいしんしは女に弱いから簡単だからって。ここで足止めしてくれって。」

俺ってどんな噂の男なんだか。

「あたしは、娼館組合に入ってて、ちゃんと登録証ももってます!1時間ごとに足止め料、金貨1枚くれるからって」

「わかりました。命までは奪いません。でもこの後こちらに協力してもらいますよ」

ちょっと面白いことを思いついたんで、この人には一緒にきてもらおう。


あとで連れて行くとして、その女性はそのままそこに置いといた。

鎖に巻かれてるので仮令たとえ襲われても安全だ。

走ってキャラバンを追いかける。

そんなに時間は経っていない。

すぐに追いついたがキャラバンは停止していた。

荷馬車の幌に矢が何本か刺さっている。

ピピとミケ、トネリコさん、御者、護衛の冒険者がこちらに走ってきた。

手筈通りだ。


「みなさん、無事ですか」

「はい、いきなり矢が飛んできたときはどうなることかと思いましたが」

「襲撃者は?」

「ん、森から矢を撃ってきたのは多分2人」

「あと武装した兵士が6人にゃ」

「わかった、合図するまで隠れててくれ」

そのままキャラバンまで走る。


「おい、止まれ」

リーダーらしい男がこちらに気づく。

他に部下らしい男2人が荷馬車の近くに立っていた。

「え?それうちらの馬車なんですけど」

「お前が変な術を使うという噂のへんたいしんしだな」

その男が言うとそれぞれの荷馬車から3人の男が顔を出した

「隊長!中はからっぽです!」

「空の荷馬車を盗みにくるなんて、ヒマなんですね」

「慌てるな、二重底だ、よく調べろ」

あら、そこまでばれてたか。

「あれ、そんなことまで知ってるんですか。最近の盗賊は怖いですねぇ」

「我々は盗賊ではない!」

「他人の物を盗む奴らを盗賊っていうんですよ」

「隊長!取っ手みたいなものがあります」

「こっちも」

「こっちもありました」

それぞれの馬車から部下が報告する。

馬車の外にいる部下2人は周りを絶えず警戒している。

なかなか統制がとれているようだ。


「よし、それだ。動かしてみろ」

俺を無視して指示を出す隊長。

「無理無理、あなたたちじゃ動きませんよ。手伝ってあげましょうか」

馬車に近づこうとすると隊長と言われている男が剣を抜く。

「動くな!お前は馬車に近づくんじゃない」

かなり警戒されているようだ。

「隊長、硬くて一人じゃ、無理です」

「こっちも無理そうです」

「こっちもです」

すぐに隊長が指示を出す。

「一番後ろの馬車に全員集まれ」

前2台に乗っていた兵士が手早く3台目の馬車に移動する。

「どうだ」

「もうちょっとでいけそうです」

「だからあなたたちじゃ無理ですって。手伝いますよー」

「まて、動くなといってるだろう。おい、こいつを見張っていろ」

外にいる部下の一人に命令して隊長も馬車に乗り込んだ。

ちょっと硬すぎたかな。


馬車の中から声がする。

「いいか、一斉に引くぞ、せいの!」

ガッシャーンという大きな音とともに鉄格子の入口が閉まる。

大きなネズミ捕りの仕掛けだ。


「隊長!閉じ込められました」

外にいた部下が慌てだした。

「おい、お前!何をした!」

「やだなー、何もしてないじゃないですか。勝手に閉じ込められたんでしょ」

「ふざけるな、すぐに開けるんだ」

「あれー、それが人に物を頼む態度かなぁ」

「くっ」


「おい、すぐに逃げろ」

荷台の中から隊長が指示を出す。

「さっすが隊長、読みがいい!」

「ですが、まだ弓隊もいますし」

「弓隊ってあれのことですか?2人でも隊なんですかね」

そういって道の前方を指さすと弓兵を思しき2人を連行しながら騎馬のオーキストさんを先頭にマルボルクの兵士たちが10名ほどでこちらに向かってくる。

「なに」

「動くな!」

呆然としていた外の部下2人だが、マルボルクの兵士が来る前に森の中へ逃げ出した。


森でオーキストさん達が捕まえた弓兵2人も鉄格子に閉じ込めた。

捕虜6人は武装解除させて鎖で拘束してある。

「オーキストさん直々に来なくてもよかったんじゃないですか」

「いやいや、(あね)(さま)の頼みを失敗するわけにもいきませんから。でもいんですか2人逃げましたけど」

「ちゃんと味方が無様に捕まったことを報告してもらわないといけませんから」


荷馬車は敵兵を載せたままマルボルクに無事到着した。

そのまま砦に捕虜を運ぶ。

「盗賊のみなさん、今日はお疲れさまでした。みなさんが狙っていたものですが、この通りすでに砦に到着しています」

「な、これは」

そうとう動揺しているようだ。それなりに考えた襲撃作戦が失敗したうえ、まったく無駄なことをしていたと思えば落胆するだろう。

「さて、皆さんは今日1日は全く無駄に過ごしたわけですが、今後は私の実験台として協力していただきますので、そんなに気を落とさないください。」

「実験台?どういうことでしょう」

オーキストさんにもこれからのことはまだ話していない。

ちょっとした思い付きだがうまくいくだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ