34.錬金術士恐怖の実験
その夜
鉄格子に入れっぱなしにしている捕虜のもとにオーキストさんとともに向かう。
「さて、盗賊の皆さん。どんな実験か説明しにきてあげましたよ」
「我々は盗賊ではない。マカルーの誇り高き兵士だ」
「オーキストさん?」
「はい、たしかにこの者たちはマカルーの兵士です」
「まあ、そんなことはどうでもいいんです。ピピ!」
ピピが小さい鉄格子に布をかけたものをガラガラと引っ張ってきた。
その布を外す。
「うわっ!」
「なんだあれは」
捕虜たちが騒ぎ出す。
そこには青い炎に包まれた俺を誘惑した女性がいた。
「この人のことはご存知ですよね。あなた方が雇った女性です」
「うー、うー」
髪を振り乱し、うつろな眼差しで言葉にならないうめき声をあげている。
「あなたがたより先に実験を始めました。この青い炎に包まれると人間が魔物になるっていう実験に」
「なにをいってるんだ」
「人間が魔物に?」
「馬鹿なことを」
さすがにまだ信じれないようだ。
「確かにまだ実験の段階なんですけどね」
「うー、うがー!」
首輪がつけられている女性が暴れ出し、鉄格子を掴んだ。
ムチムチソードで鉄格子を叩くのと同時に青い炎をまとった女性が鉄格子を、ぐにゃっと曲げる。
それを見た捕虜が目を見開いて驚いている。
「どうです。すごいでしょ。本当は命令に従って欲しいんですけど、理性はなくなっちゃうみたいなんですよね。ピピ」
ピピが鉄格子ごと女性を連れていく。
女性が暴れた拍子にまかれた青い炎があちこちで燃えている。
「ああ、炎がこぼれちゃった。オーキストさん触らないでくださいね」
「これは」
「ああ、大丈夫です。ポーションで消えますから」
そういって炎にポーションをドバドバとかけて火を消した。
「そうそう、皆さんにも差し上げますね。お疲れでしょう」
捕虜がいる鉄格子のなかに、人数分のポーションを配った。
「どうぞ、飲んでください」
捕虜たちが互いに目を見合わせる。
「最初にいっておきますが、私に同じことを2度言わせないでくださいね」
にやっと笑うと恐る恐るポーションを飲む捕虜たち。
「これは」
「確かにポーションだ」
「それもかなり高品質だな」
さすが兵士だけあって、ポーションの良し悪しはわかるようだ。
「こんないいポーションを地面に撒くなんて」
「あいつは一体」
「さて、話しが途中でしたね。皆さん早く故郷に帰りたいですよね。無事魔物になったらすぐに返してあげますから、しっかり実験に協力してくださいね」
「な、何をいってるんだ」
「そんなことに協力できるか」
騒ぎ出す捕虜たち。
「まあ、皆さんが帰っても、そこがどこかもわからないかもしれませんけどね。キヒヒヒヒ」
「あいつ、おかしいぞ」
「どうかしてる」
「人体実験なんて」
「あの、流石にこれは」
オーキストさんがおずおずと口をだす。
「オーキストさんも言ってたじゃないですか。いきなり攻めてきたあいつらは許せないとか、正々堂々戦わず装備を盗むような奴は兵士じゃないとか」
「まあ、確かにいいましたが」
「とにかく明日から実験始めますから、順番でも決めててください」
そのままオーキストさんとその場を立ち去った。
翌日
真新しい装備を着こんだ兵士100人が整列して敵の砦に向かっている。
その真ん中には6人の捕虜が鎖に繋がれて連れられている。
その朝、オーキストさんから捕虜には解放する旨が伝えられてた。
「お前たちのやったことは許せない。だからといってお前たちを人体実験の材料にして魔物にするというのは、誇り高いローツェの兵士としての私の矜持が許さない。これに懲りたらあのへんたいしんしにはできる限りかかわらないことだ」
憔悴しきっていた捕虜は、口々にオーキストさんにお礼をいったそうだ。
敵の砦の手前200mほどの所で捕虜は開放された。
「これでよかったでしょうか」
「オーキストさん、お疲れさまです。バッチリです。これでこちらがどれほど恐ろしいことをしようとしているか、向こうには伝わったでしょう。いよいよ明日の夜が最後の仕上げですよ」
「はあ」
事前に頼んだ最後の大役に乗り気でないオーキストさんは元気なく答えた。




