19.錬金術士冒険者の説明を受ける
翌朝
メイドさんに頼んでお風呂を沸かしてもらった。いったいどうやるんだろうと思っていたらなんとサラマンダーに湯を沸かさせていた。なるほど、思ったより簡単だな。サラマンダーどっかに売ってるのかな。
朝ごはんもごちそうになったが、ローザンヌさんはいなかった。
その時モーニングスターを返してもらったが、なんか全体が舐められたようにカピカピになっていたような気がしたが、きっと気のせいだろう。
商館を出るときトネリコさんが来てくれた。
「色々ありがとうございました。代表から仰せつかってます。こちらをお納めください」
そういって革袋を渡してくれた。
「スケルトンナイト装備の買取代と護衛に払うはずだった護衛代5人分もお渡ししろということでしたので一緒にしております」
「え、いいんですか。泊めていただいた上に、ご飯までごちそうになったのに」
「いえいえ、買い取った装備が無事だったことを考えればもっとお礼してもいいくらいです。護衛代をケチったお前の責任だと代表に大変怒られました。危うくわたしもクビになるところでした」
「では、遠慮なく。ところで冒険者組合はどこにありますか」
「はい、それもご案内するよう代表から仰せつかっております」
「いやいや、場所だけ教えてもらえればいいですよ。トネリコさんもお忙しいでしょう」
「はい、ですから給仕が案内いたしますので。」
そこにうさ耳メイドさんが現れた。
うむ、それならお願いしよう。できればこの機会に仲良くなっておこう。
ナイス!トネリコ。
「では、ご案内させていただきます」
「はい、よろしくお願いします」
「ではトネリコさん」
「はい、代表がいつでも遊びに来てくれと申しておりました」
「ありがとうございます。」
そういえば、結局代表に挨拶しなかったな。
だが今はそんなことよりうさ耳メイドさんだ。
「すいません、よろしくお願いします」
「いいんですよ。ずっとお屋敷にいると疲れちゃいますから。外に出られてわたしもうれしいです」
屋敷の外だからか、ちょっと気さくになってる気がする。
「あそこから出られないんですか。もしかして借金のかたに売られたとか」
「いえいえそんなことないですよ。住み込みで働いていますが週1回お休みもいただけますし、何よりお給金がいいんで満足してます」
ちっ、住み込みか。デートに誘うとかは難しそうだな。
「そうなんですか。ところで働いているのはみんな獣人でしたよね。これって何か理由があるんですか」
「ローザンヌさまはお忙しいんで何でも早く済ませたいんです。だから機敏に動ける獣人がお気に入りだと聞いたことがあります」
「なるほど」
「だから機敏に動けないとすぐ首になっちゃうんですよ」
ああ、それで昨夜ムチムチソードを持ってくるとき早かったのかな。
「こちらになります」
え、ちか!これからもっと仲良くなるはずだったのに。
10分も経ってないじゃないか。
「こんな近いのにわざわざ案内してもらってすいません。場所もわかったんでどこかでお茶でも、」
「ん」
ぐいっとピピに袖を引っ張られた。
「え、ピピ、ちょ、待って」
「それでは失礼します」
うさ耳メイドさんは行ってしまった。
冒険者組合の中に入るといかにも冒険者といった者たちがうじゃうじゃいて騒々しい。
人族と獣人がほとんどで、わずかだがドワーフもいる。エルフはいないんだな。
正面にカウンターがあり受付の人たちが5人ほど控えている。その手前にテーブルと椅子がいくつか。右手と左手に巨大な掲示板がある。そこに貼られた依頼を取って、受付に持っていく。そういうシステムなんだろう。
とりあえず俺たちも受付に並ぼうとしたら上から声がした。
「おい、こっちだ」
チェダーさんだ。
「そこの階段から上がってきてくれ」
左手の掲示板の裏にある階段から2階にあがる。
「冒険者登録証は持ってきたか」
「はい、こちらに」
チェダーさんに登録証を渡す。
「それにしてもお前ら随分でっけえ後ろ盾を手に入れたな」
「いえいえ、後ろ盾なんて。でもローザンヌさんって代表の愛人かなにかですか。奥さんではないですよね」
「は?何言ってんだ。あいつが代表だぞ。この街で一番でっかい武器商人の代表だ」
「えーーー!」
「なんだ知らなかったのか?おめでてー野郎だな。その分じゃ知らねえだろうからついでに教えてやるが、武器商人の代表でこの街の領主様の娘だ」
「えーーーーーーー!領主様の娘って貴族ってことですか?貴族の娘がなんで武器商人なんてやってるんですか!」
「貴族の娘だって仕事くらいするだろう。まあ、武器商人の代表やってるやつは流石に聞いたことないがな」
やっぱり貴族なんだ。
「あいつは武器狂いなんだよ。趣味と実益を兼ねてたら商売がうまくいって大きくなっちまったってとこだろうな」
「武器狂い、わかります。ちょっと怖いですよね。凄い美人なのに」
「美人なのは違いないが、手は出さない方がいいだろうな」
「はい、わかります。あ、愛人だと思ってたなんて言わないで下さいよ!」
「それはそれで喜ぶかもしれねえぜ」
にやっと笑うチェダーさん。
危なかった。余計な事言わなくてよかった。ローザンヌさん絶対わざとわからないようにしてたよな。
「ただ冷酷で計算高いのは事実だ。お前さんたちは認められたみたいだからいいが、あいつを敵に回すとこの街じゃ生きていけないってもの事実だ」
よかった。ほんとに迫害されるとこだった。
「さて、本題だ。冒険者登録したのは2人とも初めてなんだろ?」
「冒険者登録証はこの国だけじゃなく、どこに行っても通用する特別な証明書だ。だからこそ登録にはしっかりした身元確認や審査が必要なんだが、発行しちまったからな。それはもういい」
「冒険者には階級みたいなもんがあって、最初は誰でも初級だ。下の掲示板に貼り出される依頼なんかをこなして点数を稼げば昇級することができる。初級から中級、上級、特級と上がっていく事になるが、上級に上がれるヤツは稀だ。」
「点数を稼げばどんどん上がるんじゃないんですか?」
「中級まではな。中級から上級に上がるためには点数の他に信頼度か貢献度が一定数以上ないとあがれねえんだ。これは掲示板の依頼だけやってても中々上がらねえ」
「信頼度っていうのはまあ、成功率だな。ただ簡単な依頼ばっかりやってても信頼度は頭打ちになる。自分に適正な依頼を間違いなく遂行する力が必要だ」
「貢献度は組合や時には国の依頼をどれだけ達成したかで決まってくる。例えば賞金首を捕まえたとか国の危機を救ったとかそんな感じだ」
「ん、ならあたし達は上級」
「そこなんだ。モスキン達を捕まえただけでも十分中級に上がれるし上げるつもりだ。ただスケルトンナイトまで倒したっていうのは悪いんだがまだ信用できねえんだ。組合長として昇級には責任がある」
「ぱっと出のお前らがいきなり上級になったら中級で燻ってる連中も面白くないだろう。中にはローザンヌのお陰だなんて言う奴も出てくるだろう」
「僕は別に上級にならなくても構いませんよ。そもそも冒険者になるつもりもなかったですし」
「んー、私たち相棒」
「お前が勝手にな。それにスケルトンナイト倒したのも、モスキン達を捕まえたのも俺だろ。ピピ何もしてないだろう」
それを聞いてチェダーさんが慌てて声を上げた。
「おいおい待て待て。モスキン一味全員生きたまま捕まえたのも、スケルトンナイト倒したのもお前一人でやったってのか?」
「そうなんですよ。だから無理に昇級してピピが死んじゃっても困るんで。」
「お前一体何者なんだ」
「錬金術師です」
「へんきんしじゆつ?」
「どんな耳してるんですか。錬金術師です」




