十四話 さぁ、一つになるんだ。笑えよ。
すまない咲。すまない。俺のしたことは、到底許されることではない。咲、ああどうして、どうして俺はこんな
咲と一つになりたい。織本忠と一つにしてやりたい。それが僕の願いだ。僕の生まれた意味だ。しかし、キスもセックスも、僕らを一つにするには不十分だった。僕はこれじゃ満足できない。きっと織本忠もそうだろう。では、ならば、こうするしかない。僕は決意を固め、ガチャリ。とドアを開いた。
「咲、咲!さぁ、一つになろう。僕ら、永遠に一緒だ。もう誰にも渡したくない。君は僕だけのモノ。織本忠のモノになるんだ」
咲はなんとも恨めしいというような目で僕を見た。
「なんだその目は?織本忠の奥さんがそんな顔してちゃダメだろ?ほら、笑えよ」
僕は無理やり彼女の笑顔を作る。左手の親指と人差し指で口角を上げ、右手で同様に目尻を下げる。
「良い顔だ咲。とても愛らしいよ。では、始めようか」
僕は彼女の身体を隅々まで拭いてやった。
「気持ちいいかい咲?久し振りに綺麗になったろう」
そして僕は、やつれて薄くなった太股の肉にかじり付いた。少し固い。無理やり引きちぎる。咲が声にならない悲鳴を上げる。血が飛び散って、僕の顔が赤く塗れる。クチャクチャと、咀嚼音が口の中から響く。咲の味が口いっぱいに広がった。
「美味しいよ。美味しいよ咲。ああ!なんて美味しいんだ。咲、今僕らは一つになっているんだ!永遠に一緒だ」
「痛い、何なのよ!一体何の恨みがあるって言うの?何でこんなことするのよ!」
次は肩だ。
「あぁああぁあ…痛い!痛いぃ!止めてぇ…もう、止めて…」
「素敵だよ咲、あっはは!」
その後も僕は夢中で咲の身体を貪った。いつの間にか骨ばかりになっていた。
「おや、咲。もう頭しか残っていないね。どんな気分だい?僕と、織本忠と一つになった気分は?」
だが、咲は答えなかった。
「あれ、咲?咲!返事してくれよ!なぁ!!」
咲を失ったのだと気づいた。僕にはそれが信じられなかった。目の前に、咲が転がっている。動かなくなって、転がっている。その事実だけが、僕を苦しめていた。
異常に大きくなった腹を抱え、俺は咲の屍に懺悔した。もう遅いということは知っている。それでも、やらねば俺は自分を保てない。ああ、咲。俺は、僕はなんてことをしてしまったんだ。許してくれ。許しておくれよ、咲。俺の、僕のそんな言葉が、血塗れの部屋にこだまして、消えた。




