十三話 閉め切ったカーテンと仄暗い豆電球
咲!咲!あっはははは!素敵だ!素敵だ!素敵だ!あっはははは!今とてもいい気分だよ!最高だ!あっはははは!君はなんて、なんて素晴らしいんだ!分かるかい?え?僕らは今一つになっている!美味しいよ、咲。
俺は目を覚ました。また、目を覚ました。咲の胸には包丁が…刺さっていない。なんだ、俺は気が触れてしまっているのか?一体全体何が、何が起きているのだ。
「おはようあなた」
咲が口を開く。
「あ、ああ、おはよう」
「どうしたの?なんだか顔色が悪いわ」
「いや、良いんだ。大丈夫だ」
咲は相変わらず笑顔だ。さっきからずっと。目を覚ました時から何も変わらない笑顔。笑顔以外の表情を忘れてしまったように、ただ咲は笑っている。さも面白いことだと言うように。花木のように悠然と、笑っていた。俺はなんだか怖くなって
「お前、何を笑っているんだ?」
と聞いた。すると
「あら、忘れたの?あなたがしたこと全て、今も私の身体に残っているわ」
咲の身体が歪んで、肉が剥がれ落ちていく。首から下はもう骨のみ。ただ白い骨。その上に苦悶の表情の咲が、咲の頭が乗っていた。
「何を怯えているの?あなたがしたことでしょう?」
なんだ?なんだなんだなんだ!!これは一体なんなんだ!何が!何が起きているんだ!どうなっているんだ!
頭が状況を飲み込めていない。水道からコップに水を汲み、一気に飲み干した。コップを乱暴にテーブルに叩きつけた。ひびが入る。改めて咲を見ると、どうしたことか、ここには居ない。
「咲はどこへ?」
疑問が空を漂う。咲の部屋に向かう。しかし身体が思うように動かない。
ーーそっちはダメだ。行っちゃダメだーー
頭の中に声が響く。頭が割れるように痛い。身体が軋むように痛む。それでもなんとかドアを開ける。そこには閉め切ったカーテンがあった。仄暗い豆電球があった。そして椅子。しかし咲は、そこには居ない。床に、顔以外、頭以外骨となった彼女が、転がっていた。
「ああそうだ。全部思い出した。いや、全部知っていた。俺が全部やったのだ」




