十二話 幸せかい?
ほら、咲。一つになろう。夫婦だろう?
ほら、ほらほら、僕達は今一つになっているんだ。咲。どうだ。どんな気分だ?あっはははは!素敵だよ咲。ああ!
俺は目を覚ました。もう昼過ぎだ。咲はもう起きていた。キッチンで料理を作っている。美味しそうな匂いが立ち込める。
「おはよう咲。もうお昼ご飯の時間だね。ははは、ちょっと寝過ぎちゃったよ」
咲はフライパンを目を離さず答える。
「おはようあなた。寝過ぎは良くないわよ。最近疲れが貯まっているんじゃない?気をつけてね」
「ありがとよ。さて、今日の料理はなにかな?」
「これよ」
俺は差し出されたフライパンを覗く。
「肉?なんの肉だい?」
咲から表情が消えた。氷のように冷たい声で言った。
「なんの肉かって?知ってるだろ?これはーー」
不意に、視界が揺らぐ。足が身体を支えられずに、俺は倒れてしまった。
「忠さん!忠さん!起きて!起きて!あなた!」
誰かが俺を呼ぶ声がする。目を開けると咲がいた。
「急に倒れちゃって、一体どうしたの?」
「あ、いや、なんだろうね。思い出せないや」
「そう?どこも異常は無いのね?」
「ああ、大丈夫だ」
「良かった。心配させないでよあなた」
「すまんすまん。最近疲れてるみたいだな。はっはっはっ」
「もう!」
ー幸せかい?ー
頭の中に声が響く。この声はどこかで
ー忘れたのか?お前が殺した男をー
芝田一か!?貴様!生きていたのか!
目の前に芝田が現れた。
ーいつまでこんな事を続けるつもりだ?ー
なんの話だ?
ー分からないとは言わせない。だってお前はーー
ああ!うるさい!!だまれだまれ!!俺の前から消えろ!消えろ!!そうだ、もう一度殺してやる。今度は俺の意志で殺してやる!殺してやる!!!
そう言ってキッチンにある包丁を芝田に向ける。しかし動揺していない。芝田は無表情のままだ。
ーまた、同じことの繰り返しだ。気づかぬ限り抜け出せん。せいぜい同じところをぐるぐる回っていろー
包丁を芝田に突き立てた。もう一度。もう一度殺した。
ははっ!やったぞ!もうお前はおしまいだ!ははは!…え?
包丁を刺した相手は、咲の顔に変わっていた。その身体はところどころーーー




