挿話 魔王と報酬とカオス
盗賊団が壊滅した。いや、何を言ってるのかわからないと思うが報告を受けた俺自身わかってねぇ。シロガネから報告を受けて開いた口が塞がらないんだ。
周りの魔物もこの光景にびっくりしていた、この魔王も驚くことがあったのかって。
数日前、Fランク3人のパーティが俺が依頼したSSランクのクエストに挑戦した!……という報告を聞いたときは「どこの馬鹿だ」とおもっていたのだが、蓋を開けてみれば見事に壊滅させている。
こんな実力者がまだ人間にいたなんて信じられないな。
周囲に控えていた魔物を下がらせ、シロガネに尋ねた。以下はその時のやり取りである。
「このクエスト受けたやつ……何者だとおもう」
「登録したて アリアのSSランク受けた 常識知らず」
「だが実際に壊滅してる。タイミングとしてはそいつらがやったと思うのが普通だろう。俺達でも梃子摺ってたやつをあっさりと。こいつはとんだ化けものかもしれないな」
「コウ クロガネ 知り合い この二人ならできる」
「ドラゴンか。……じゃあ最後の一人が忌み子かな。今回戦闘があったと思われるところでの死体は?」
「報告書 魔物 盗賊だけ 人間 村の人だけ」
「魔物はタフだから捕獲しても生存者が殺されると考えてとどめを刺したんだな、盗賊団の人間は結構捕まえてそうだが……」
「ギルド金庫 報酬 絶対足りない とりに越させる?」
「そいつらに会ってみたいな。馬車をよこすからギルドで待機とでもいっておけ」
「わかった ギルドで足止め アリア登場 ドッキリ」
「……たまにお前がわからなくなる。だが面白い、それいただきだ」
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そんな魔王の気晴らし兼顔見せが決定した数日後、アリアの元に報酬の追加の通信が届く。
待ってましたとシロガネを呼び出し、世話係に「少し出かけてくる、いつものように頼むな」とだけいって魔王城を出てきた。小遣いもそれなりに持ったしこれから会いに行く4人を誘ってどこかの祭りに行くのもいいかもしれないな、確か西の村が祭を開いてたはずだ。
上機嫌にギルドまでの「転移門」の魔術式をくみ上げる。
「いくぞ、シロガネ。もう一人客人が増えてるらしい」
「誰?」
「会ってのお楽しみだ」
こいつがどんな反応をするのか楽しみだ、行方不明になってた弟が見つかった、なんて言ったら。
首を傾げるシロガネを背に転移門をくぐり、目の前にあるギルドの扉を開く。
「コウ、クロガネ、ツバサはいるか、っていうかどいつだ!」
ギルド内の全員が一斉にこちらを向く。少年二人を囲む筋骨隆々のゴリラみたいな傭兵達、少し離れたところで何か祈ってるような赤い男と呆れているような黒い女、その二人に紛れ込んでるギルドの受付嬢。
……なんだこのカオス。