出会い 怪我と少年と青年
……頬を打つ水滴に目を覚ます。その水滴はやけに暖かかった。
確か自分は谷底に落ちたはず、で……死んだのかな?
いや、全身が痛い。そしてどこか遠くから呼ぶような声が聞こえる。
これは生きてる。というか死んでも痛みが残るなんて僕は認めない。
自分の怪我を確認しようと目を開く。
――目が合った。
眼前にある人の顔、頬の辺りに虹色の光を放つ鱗がある青年。
思考が停止して何秒経っただろうか、ソレが話し掛けてきた。
「ふぅ……生きてたか、怪我は無いから少し休んでから出て行くといい。」
「もしかして……ドラ、ゴン……?」
「あぁ、人間が嫌うドラゴン様だ。なんだ、人間に助けられた方がよかったか?」
「うぅん、相手が人間じゃなくて……よかった。助けてくれてありがとう」
気を失う寸前まで追い回されていたのだ。あいつ等に見つかってたらと思うとぞっとする。
自嘲気味に笑うドラゴンの青年へ、震えながら返す。
青年は怪訝そうに口を歪めて笑った。
「変わった奴だな。ドラゴンより人間の方が恐いなんて」
「だってキミは助けてくれたし、それに……僕の為に泣いてくれたから。目が赤いよ」
「べ、別にいいだろうが!それともドラゴンが泣いたら悪いか!いや、悪くない!
……まぁ借りを作ったまま死なれると気分悪いしな。お前、名前は?」
「え?」
「少しお前に興味が湧いた。少しだけな?
だから、名前。俺は虹の龍って事でコウって呼ばれてる」
「僕は…ツバサ。種族は――」
「種族はいい。俺はお前自身に興味が湧いたんだ。
それにお前が俺を怖がらなかったんだ、俺もお前が何であっても気にしない」
コウがにかっと笑って手を差し出す。つられてツバサも笑い、二人は硬く握手をかわした。