12話 私たちは友達!
わたしたちは魔法書を持って扉を開けた。そこにはジルが待ちかまえていた。
「やあ、待ってたよ。それが魔法書だね」
ジルの目が魔法書に釘付けになる。その隙にリディが杖を取り出した。
「アルシナーナ!」
呪文をとなえると、ジルの後ろに何かが現れた。
「ジル。後ろを見なさい」
そこにいるのは魔物の数々。精霊の森で見た魔物たちだ。
「魔物……っ! 幻覚魔法か!」
幻覚魔法……そこには本当はいないものが見える魔法。つまり、そこには魔物がいない。けれど、ジルの目には見えるし、攻撃もしてくる!
「こんな魔法、僕の魔法で打ち消してやる!」
ジルも杖を手に取って、幻覚の魔物と戦おうとしている。
わたしはおまじないの呪文をとなえた。
「リンリラン、リディが器用になりますように!」
わたしが呪文をとなえたのに気づいたのか、ジルがこちらを向いた。
「なんだ、その呪文は! 聞いたことないぞ!」
ジルは私の腕をつかむ。
「逃がさないぞ。渡せ、その魔法書を渡すんだ!」
その力はとても強かった。その目はとても怖かった。……けれど、わたしは一人じゃない。
すると、ジルの手を何かがはじいた。
「リディ、呪文を!」
リディは杖をかまえる。
「ムーデマーデ!」
呪文をとなえると、リディはこちらに手をのばした。
「真琴!」
わたしはその手を取る。
「くそぉっ!」
ジルのくやしそうな声が聞こえた。……気づけば、わたしたちは寮の部屋にいた。
「できた……」
リディがぽろりと言葉をこぼす。
「瞬間移動魔法! 今までうまくいったことなかったのに!」
「やったね、リディ! 器用になるおまじないが上手く効いたのかも!」
「はじめて、ジルに勝てたわ!」
わたしたちは互いに手を合わせて、きゃっきゃっと飛びはねた。
リディはわたしの腕の中にある魔法書を見て、涙を浮かべた。
「わたし……魔法書を手に入れることができたのね」
リディはじっと魔法書を見ると、わたしの方に渡した。
「これは真琴が持ってて」
「わたし?」
「そう。これを読めるのは真琴だけでしょう? なら、あなたが持っているべきだと思うの」
そういってウインクをする。
「わたしに魔法書の中身を教えてほしいの!」
わたしがリディの役に立てる……。
わたしは大きくうなずいた。
「うん!」
魔法書をぱらりとめくる。
最後までめくっていくと、おまじないのこと以外のことが書かれていた。
「リディ、これ……っ」
「どうしたの?」
「……異世界への行き方が書いてある」
「えっ」
リディが魔法書をのぞきこむ。
「何て書いてあるのか読めない~」
「えっとね……。王としての証をすべて手に入れると、異世界の扉が開かれるって……」
「王としての資格……。これのことね! 後継者の証! これは王様になるために必要な証で、すべて手に入れた人が王様になれるの!」
わたしとリディは顔を見合わせた。
「つまり、リディが王様になれば……」
「真琴はもとの世界に戻れる!」
わたしたちはお互いの手を合わせた。
「これで決まりね! わたしたちは協力者! かんぺきなパートナーよ!」
「これからもよろしくね、リディ!」
リディはわたしの顔を見ながら、にっこりほほえむ。
「これもすべて、真琴のおかげよ。あなたがわたしの願いを叶えてくれたおかげ……。ねえ、真琴。あなたの願いは何?」
「え?」
「真琴はわたしの願いを叶えてくれた。次は私の番。元の世界に戻す願いはもう聞いたわ。それはもちろん、叶える。でも、それ以外に……わたしにできることがあったら、あなたの願いを叶えたいの」
願いごと……。そう言われて、わたしはつばをごくんと飲んだ。
わたしには願いごとがある。けれど、リディがそれを聞いてくれるかわからない。……言ってもいいのかな。
「真琴、遠慮しないで。わたしもあなたの願いを叶えるから」
「……あのね、リディ。リディが嫌だったら、別にいいの。それでも、聞いてくれる?」
「もちろん。真琴の願いが聞きたいわ」
「……わたし、リディの友達になりたい」
その言葉にリディはキョトンとした。
わたしの言ったことが想像してなかったものに違いない。
わたしはリディのパートナー。けれど、それって友達とは違う。
わたしはリディと友達になりたかった。
「真琴、何言ってるの? ……わたしたち、とっくに友達よ!」
「え?」
「真琴が友達だと思ってくれてなくて、さみしいわ。わたしはずっと友達だと思ってたのに……」
「え、でも、リディはずっとわたしのことをパートナーって……」
「パートナーで友達! わたしたちはずっと友達よ!」
リディの言葉に、ポロポロと涙がこぼれでる。
「え、真琴、どうしたの?」
「わたし、ずっと友達がいなくて……ずっとひとりぼっちで……。友達ができたのはじめてだから……」
「真琴はずっと一人でがんばってきたのね。でも大丈夫。パートナーで友達のわたしがずっとそばにいるからね!」
そう言って、リディはわたしをだきしめてくれた。
次の日、わたしは教室の前にいた。となりにはリディがいる。
「真琴、がんばって」
わたしは勇気が出るおまじないのおまもりをにぎりしめた。
「シャンリ、シャンリ、シャンゼ。わたしに勇気をください」
そうつぶやいて、教室の中に入る。そして、入り口の近くにいた子の方を見た。
「お、おはよう!」
声をかけると、その子は驚いたようにわたしの方を見た。けれど、目を細めて返事をしてくれる。
「おはよう、真琴ちゃん」
その言葉がうれしくて仕方がなかった。
クラスメイトにあいさつをする。それだけだった。けれど、わたしはとても成長したと思う。
「あいさつできたね、真琴!」
「うん!」
わたしがもとの世界に戻るまで、ここがわたしの教室だ。それまでに友達を増やしたい。
席に座りながら、わたしはリディに声をかける。
「ねえ、リディ。わたしは今でも、元の世界に帰りたいと思ってる」
「……うん」
「けれど、ここで自分の役割を見つけたから」
わたしはリディの手を繋いで言う。
「私はリディを王様にする助けになりたい! 一緒に頑張ろう、パートナー!」
そう言うと、リディはパァッと顔を輝かせた。
「元に帰る方法は私に任せて! それまでよろしくね、パートナー!」
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